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「それで、エンジンは核融合炉と魔法回路を組み合わせたもので、我々の不得手な魔法にも対応したエネルギーを生み出しておるのですよ!」


……何を言っているのかチンプンカンプン。


模擬戦が、本物の戦争みたいになったせいで、疲れてしまったから早く帰りたいのに。

人間の嫌な部分をまざまざと見てしまったから、今はウレインを見るのもちょっとはばかられるくらい。



「……なるほど、本当に面白い玩具だ。俺も欲しい」

ほら、やっぱりこういうの、男の人って好きなんだ。


「――って、えぇっ?」

魔王さま?


「い、いや、それは……あれ一隻で、かなりの、その……」

ウレインも困惑して、しどろもどろになっている。


「魔王さま。あんなの欲しがっちゃダメです。それに、魔族には不要でしょう?」

魔王さまが子供みたいに目をキラキラさせているから、つい、子供に言う感じになってしまった。

「む、駄目か……」



「あ、それではその、我々が試験運航する際に同乗していただいて、様子を見学していただく分には差し障りございません」

「おお、本当か。それで構わない、嬉しいぞ」

食い気味に返事してしまって……もう、ほんとに魔王さまってば。


「それでその、商工会との和平、もとい、人間との和平協定は、維持して頂けるのでしょうか」

あぁ、そういえば。


このタイミングで切り出してくるウレインは、やっぱり商談の腕は凄いのねと感心してしまった。

私は、和平とかもう、反故にしてもいいのかな。なんて思ってしまっていたから。



「無論、そちらにその気があるのなら……だがな」

魔王さまはチラと、国王を見た。同時にウレインも。


「……あぁ。もちろんだ。和平なくして、そもそも人間に生き延びる道はあるまい」

少々恨みがましい感じが気になったけど……その気はあるらしい。


「ならば、しかるべき決別があるまでは、我等が戦う道理はないな」

「おぉ……寛大なお心に感謝申し上げます。それでは魔王さま、運航の際はご連絡いたします」


ウレインは、深々とお辞儀をした。

と、ふと何を思い出したのか、彼はもうひとつよろしいですかと、小さな声で魔王さまに質問をした。



「もしかして魔王様は……日本から転生された、という事ではございませんか? 聖女様のように。あぁいえ、ご無礼でなければでございますので、お答えいただかなくても……」


……それは、なぜそんな風に思ったのだろう?


そんなこと、思いもよらなかったし、私は一生そんな疑問を持たなかっただろう。

魔王さまのルーツは、そもそもからして、魔族領の小さな村でお生まれになったのだから。



「……ふん。隠す意味もないから、教えても構わんだろう。だが、お前だけにとどめておけよ? 確かに俺は、日本の荒れた時代の生まれだ。学も何も無いから、いつの頃かは知らんがな。そもそも子どものうちに死んだから、ほとんど何も分からんが」


「そ……そうだったんですか」


私は驚き過ぎて、それにその過程が不思議過ぎて、今この会話が、何を話しているのかさえ遠くで聞こえているような錯覚を起こしている。



「そもそも、今の質問から小声の日本語で話しておりますからね。国王にも、何を話しているか分からないでしょうから、この秘密は私だけの心にしまっておきます」

ウレインは得心したように、大きくゆっくりと頷いている。


だけどそれさえ、私は言われて初めて気が付いた。

確かに、日本語で話している……。


「なぜ気付いた?」

「それは先程、ミサイルを落とすのに魔王様が唱えた言葉が、日本語だったからです」

「チッ。聞こえていたか。まぁいいが……よく聞きとれたな」


唱えた……?

そうか、聞き取りにくいと思った「帳落ちる夜の沈黙」って、日本語で言っていたんだ。

私には転生したことによる弊害が何も無かったのは、この世界の言葉と日本語を、頭の中で無意識に翻訳しているからかもしれない……。


聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~

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