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#普通
野々さくら
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ありあ
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オカルト雑誌MWのライター・馬場龍河は、気だるそうにコンビニ前の喫煙スペースで煙草を口に咥えながらスマホを画面を睨みつけていた。
「ふぅ〜・・・」
口から吐き出された濁った煙が、夏の熱気に溶けていく。
「はぁ〜クソ、まったく情報がねぇ」
終電後の深夜に運行する、行き先は選択という無人のバス。
そんな都市伝説『カルネアデスバス』について、ここ数日ひたすら調べ続けていた。
一番最初の目撃情報は2000年7月25日。
そこまでは判明している。
しかし、それ以外の手掛かりはほとんど見つからなかった。
ツミッターでも『選択バス』と『カルネアデスバス』ふたつのワードで検索して虱潰しに調べた。
しかし、スクロールを繰り返しても、出てくるのはオカルト好きによる陰謀論や、実際に見たという信憑性の薄い目撃談ばかり。
実際に乗り込んだという体験談は一切ヒットしない。
そんな状況に龍河は眉をひそめる。
「やっぱデタラメなのか?カルネアデスバス・・・」
煙草を灰皿へ押し付けると、最後の火が小さく消えた。
その時だった。
「あぁ~・・・喉乾いたなんか飲み物買おうよ」
聞き覚えのない女子高生たちの声が耳に入る。
「私も喉乾いたぁ~・・・てか暑すぎでしょ」
「今日35度らしいですよ」
「さんじゅうごど!?」
「まじでか!?」
「どおりで暑いわけだよな・・・」
「てかアイスも食べた〜い」
「まじでそれな!」
「チョコミントアイスが食べたい」
「茜ちゃ〜ん♬」
「はぁ〜い♬」
「何が好──」
「いいから入ろう」
他愛もない高校生の会話に、龍河は思わず顔をしかめた。
(うっせー高校生だな)
視線だけ向ける。
(てか、もう下校の時間かよ)
制服姿の生徒たちが次々とコンビニへ集まってくる。
(そろそろ学生が増えてくる時間だな)
龍河はその場を離れようと一歩踏み出した。
(とりあえず一旦ここは離れて──)
その瞬間。目を見開いた。
コンビニへ入っていく高校生は、見覚えのある顔だった。
タバコをポケットにしまい、立ち去ろうとしていた龍河は、その姿を見て足を止める。
(あの高校生って──)
記憶を辿る。
(もしかして狗頸学園の怪異探求倶楽部か?)
以前、自分が記事にした霊貴冥孤を詐欺師だと見抜き、警察に貢献した高校生。
(そう言えば狗頸学園ってこの近くだったな)
一瞬、興味が胸をよぎる。
(あいつらが霊貴冥孤を・・・)
しかし龍河は首を横に振った。
(いや、ダメだ)
今、自分が追うべきものは一つしかない。
カルネアデスバスが先だ。
龍河はコンビニへ消えていく信愛たちの背中を見送り、小さく息を吐いた。
(高校生は後回しだ)
◇ ◇ ◇
コンビニから出た信愛は、冷たい麦茶一気に喉へ流し込む。
「はぁぁ~・・・生き返るぅ〜・・・」
張りつめていた体から力が抜け、満足そうに息を吐いた。
一方茜は、アイスを一口頬張り、思わず笑みを浮かべるている。
「真夏のアイスサイコー♬芯から冷える感じ♬」
右手にはチョコミントアイス。
左手にはハンディファン。
涼しい風を顔に当てながら、茜は満悦といった表情を浮かべていた。
そんな二人を見ながら、さくらがふと思い出したように口を開く。
「てかさっきの話に戻るけどさ」
少し真面目な表情になる。
「カルネアデスって、本当に実在するのかな?」
その言葉に、コンビニを離れようとしていた龍河の足が止まる。
(ん?今こいつら・・・今
カルネアデスバスって言ったか?)
耳を疑う。
探し続けていた都市伝説の名前が、高校生たちの口から飛び出した。
龍河は気付かれないよう、そっと建物の陰へ身を寄せる。
(なんでこいつらがバスの話を?)
自然と耳がそばだっていた。
信愛は少し考え込むように視線を落とした。
「うー・・・ん、どうなんだろ?
朝陽くんが言ってた話だけだと分からないな」
焔垂が腕を組みながら言う。
「でもツミッターでは『見た!』
って投稿はチラホラあるけどな」
茜はアイスを舐めながら冗談めかして笑う。
「もしかしたら霊が運転してたりして」
信愛は小さく首を振った。
「まぁ、霊が乗り物に取り憑く
って話は珍しくは無いからね」
「え?そうなの?」
茜が目を丸くする。
「安さに惹かれて中古屋で自転車買ったら
それに霊が取り憑いてたみたいな話だってあるし」
焔垂が頷く。
「渋〇怪談であったなそんなエピソード」
信愛は続けた。
「霊は必ずしも人だけに取り憑くとは限らないしね
まぁ付喪神みたいなもんかな」
「なるほど・・・」
すると朝陽が静かに口を開いた。
「仮にカルネアデスバスが
霊に取り憑かれたバスだとしたら
その霊は相当バスに恨みがあるか
思い入れがあるって事になるんですかね?」
信愛は少しだけ微笑みながら答えた。
「そういう事になるかな
まぁ、あくまでも可能性の話だけどね」
そのやり取りを物陰から聞いていた龍河は、表情を変えた。
高校生の何気ない雑談。
しかし、その中には自分が何日も探し続けても得られなかった手掛かり、いや、可能性が確かに含まれていた。
しかし信憑性はあまりに低く眉唾な話だった。
霊だの付喪神だの、そんなのはまるで漫画や映画の中の様な話だ。
しかし龍河は信愛たちが面白半分で話している様には感じれなかった。
本気で霊や付喪神の可能性を視野に入れて、カルネアデスバスの話をしている。
不思議とそう感じた。
しかし、ここで盗み聞きをして自問自答を繰り返しているだけでは、事態は好転しない。
(本人たちに直接聞くしかねーか)
龍河は意を決して信愛に一歩、また一歩と近づいていく。
コメント
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×××さん、第156話読みました! 龍河がまさかの狗頸学園の面々と遭遇するところ、グッと来ましたね。ずっと一人で追ってきた情報が、彼女たちの何気ない雑談から飛び出してくる——その「偶然」の描き方が上手くて、思わず息を止めて読んでしまいました。特に、龍河が物陰で耳をそばだてるシーン、彼の慎重さと焦りが伝わってきて好きです。次が気になります!