テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
体育大会2日目。起床したとき、不思議と昨日より気分は良かった。お昼過ぎに登校すれば午後からのサッカーには間に合う気がする。
あーしが登校すると、丁度お昼休みの時間らしくてグラウンドには誰もいなかった。……ちょっと練習しようかな。
グラウンドの隅で転がっていたサッカーボールを蹴ってみる。でも、今までちゃんとサッカーをしたことがないせいか明後日の方向に飛んでいってしまう。そもそも、あーしは運動が得意なほうでは無いのだ。
「あ」
ボールが転がっていった先には見覚えのある体育教師がいた。
「歌代…!?」
「ったく、歌代先生だろ。サッカー初心者ギャル君?」
そう言うと、歌代は器用にボールをつま先で浮かしてピタリと足の甲に収めた。そのまま軽く蹴られたボールがあーしの方に転がってくる。
「ん。ギャルも蹴り返してみ。足の側面で真っ直ぐな」
言われるがまま、できるだけ真っ直ぐ転がるように意識して蹴ってみると、さっきよりもほんの少し上手く蹴れた気がした。
「お、いいね。その調子」
歌代がもう一度蹴り返す。
「…サッカーの個人練習とか意外と健気だな、ギャル」
「は?上から目線すぎ」
「まーな。で、なんで練習しようと思ったんだ?」
「それは、……みんなに迷惑かけないためでしょ。あーしにはそれくらいしか出来ないし」
「自己肯定感ひっく」
「うるさ。…しょーがないじゃん。ホントのことなんだしさ」
「陰気になんなって。オレみたいなポジティブ人間になるためには、まず自分を愛すべし!だぞ」
「……あーしには無理かもね。だって、自分のことが分かんない。今まで出来てた筈の取り扱い方もね。心のひび割れた部分から自分の弱さが次々溢れ出してるみたいでさ。本当のあーしは、怖がりで寂しがりでネガティブで天邪鬼で……あーあ、悪いことしか浮かばないわ。だから、……全部怖くなってくる。みんなの足を引っ張ることも、成瀬に愛想尽かされることも、居場所を失くすことも……………………
ってなんかごめん。流石に暗いわ。聞き流していいから」
「そっか。…ギャルも色々あんだな」
「……しんみりすんなし」
「は?人が黙って聞いてりゃさぁ……」
「恥ずいんだけど」
「っ…………素直に、スゲーなって思ったわけ。そこまで自分をキャッカンシ?してんのすごくね、って。ちゃんと自分と向き合ってるってことだしさ」
「……励ますの下手すぎかよ」
「う。…………やっぱ似合わねーか。ま、でもホントの気持ちだしな。結局さ、……変わっていくのも、弱ぇのも、全部自分なんじゃねーの?ちょっとずつ成功を積み重ねて自信付けてくしかねーじゃん。そしたら段々そんな自分も悪くねーなって、そう思えるようになる。そういうもんだろ。………………どうよ?」
「……ふっ。なーんかカッコつかないな。…歌代らしいけど」
「ったく、元気出たのかよ?」
「ーーちょっとはね」
お昼休みが終わるチャイムが鳴った。暫くしたらこのサッカーグラウンドは生徒たちで満ち賑わうことだろう。……今日はもうちょっとだけポジティブでもいいかもしれない。不覚にも、歌代の言葉に笑ってしまったから。