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写研で週末に撮った写真を見ていると、名前を呼ばれる。
「朝倉さん」
その声で、俺は振り向く。
呼んだのは、1つ下の齋藤くん。
「なに?」
「ちょっとアドバイス欲しくて」
「いいよ」
俺はデジカメの電源を切り、齋藤くんの元へ向かう。
「見せて」
齋藤くんに差し出されたデジカメの画面を見て、俺はアドバイスを始める。
「結構上手く撮れてるけど、中心から若干ずらした方が見栄えが良くなるかも」
「なるほど。じゃあ、この写真はどうですか?」
「これはね…」
再びアドバイスを始めようとすると、後ろから名前を呼ばれる。
「快〜」
「はい」
呼んだのは、1つ上の慧人さん。
「快さぁ、週末花の写真撮ってきたんだよね?」
「はい。撮ってきましたよ」
「参考にしたいからさ、ちょっと見せてよ」
「いいですよ。どうぞ」
俺は、デジカメを慧人さんに差し出す。
慧人さんはこっちに来ると、デジカメを受け取る。
「ありがとう」
「いえ」
慧人さんは俺の返事を聞いて、ニコッと笑った後、その場に座りデジカメの画面に目を向ける。
ちなみにこの人は、俺の事を恋愛対象として見ている。
俺に向けての好意のオーラがいつも浮かんでいるから。
でも俺は、知らないフリをして普通に接している。
慧人さんは俺のタイプじゃないし。
俺は、齋藤くんのデジカメの画面に視線を戻すと、アドバイスを続ける。
「これは、もう少しアップで撮った方がいいかも。ちょっと情報が多いからね」
「確かにそうですね。ありがとうございます」
「うん。いいよ」
「これもお願いします」
「おぉ。これ、結構俺好きだな。特にこの…」
「ねぇ、快」
後ろから呼び掛けられ、俺は振り向く。
「なんですか?」
「この人、誰?」
見せてきたのは、コンデジの画面に写った零斗さんの写真。
(しまった…)
案の定、慧人さんには嫉妬のオーラが浮かんでいる。
(面倒臭いな…)
「ただの友達ですよ」
「友達って、恭也くん以外知らないんだけど」
「なんか、最近仲良くなったんですよ。恭也の知り合いの知り合いで」
「へぇ〜。そんなの初めて聞いたよ」
「あ〜…そう言えば言ってなかったですね。すみません」
「別にいいよ。俺はただのサークルの仲間だもんね」
慧人さんは、冷めたような目でそう言う。
こうなるから面倒臭い。恋人でも無いくせにあったことを報告しないと勝手に拗ねる。
俺がゲイの事は大体の人に言っていて、写研の人もみんな知っているから、俺達の会話から勝手に恋人同士だって思われてしまっている。
俺は否定したけど、慧人さんが「どうだろうね」なんて言うから、余計にその説が濃厚になってしまっている。
思い返してウンザリしていると、慧人さんが呟く。
「でもさぁ、相当仲良いんだね。この人と」
「いや、別に普通ですよ」
「普通なんかじゃないよ。だって快、人の写真なんて普段撮らないでしょ?」
慧人さんのその言葉に俺はハッとする。
そう言えばそうだ。俺は別に人の写真を撮りたいなんて思った事がない。
でも、零斗さんの事だけは、いつも気がついたら撮ってしまっている。
もしかしたら俺は、自分が思っている以上に零斗さんの事が好きなのかもしれない。
心臓がドクドクと音を立てる。苦しいくらいに、鼓動が早い。
(零斗さんに、会いたい)
「あ〜…すみません。ちょっとトイレ行ってきます」
俺はそう言って立ち上がり、部屋を出た。
トイレに駆け込むと、手洗い場で鏡を見る。
俺の周りには、たくさんの好意のオーラと、切望のオーラ。
(零斗さん…)
俺はポケットからスマホを取りだし、零斗さんに電話をかける。
数コールなった後、電話が繋がった。
『なんだ。何かあったのか?』
「あの、零斗さん。俺、零斗さんに会いたいです」
『…言ったろ。無理に会わなくていいって』
「無理なんてしてません。俺が零斗さんに会いたいんです」
『本当なのか?』
「はい。あの、今日、夜一緒に食べませんか? 写研終わってからなんでもう少しかかるんですけど」
『俺は別に…いいけど』
「ありがとうございます。じゃあ、また終わったら連絡しますね」
『おう』
零斗さんの返事を聞いて、俺は電話を切る。
(早く会いたいな…)
俺は微笑んだ後、写研の部屋に戻った。
写研が終わると、すぐに零斗さんに連絡をする。
待ち合わせ場所に着くと、零斗さんが待っていた。
俺は零斗さんの元へ駆け寄る。
「お待たせしました」
「別にそんなに待ってねぇから」
少し照れくさそうに、そう言う零斗さんを、俺は見つめる。
「…なんだよ」
「いえ。別に。じゃあ、行きましょうか」
お店に着くと、席に座る。
個人経営の定食屋さんだ。
メニューを頼むと、一息つく。
「誘ってくれてありがとな」
「いえ。こちらこそ急に誘っちゃってすみません」
「全然。嬉しかったから」
零斗さんは照れくさそうにそう言う。
「俺も今日、零斗さんに会えて嬉しいです」
「そ、そうか?」
零斗さんの頬がほんのり赤く染まる。
「あのさ、快」
「はい」
「俺、快が好き」
「えっ」
いきなりの告白に俺は驚き、心臓もドクンと鳴る。
「あ…いや…今じゃねぇよな…悪ぃ」
「いえ。嬉しいです。ありがとうございます」
俺の言葉に、零斗さんは安堵したような表情を浮かべる。
なんで今、俺も好きだって言わなかったんだ。
だって俺は今までも告白される側だったけど、好きだけ伝えられた事なんてない。
みんないつも、”付き合ってください”まで言うのに。
いっその事、それも言って欲しかった。
そしたら俺は”はい”って返事できたし、こんなに悩むことも無かったのに。
(って、何人のせいにしてんだよ…)
「あの、零斗さん」
「なんだ?」
「俺…その…」
まただ。言葉が出ない。零斗さんは気持ちを伝えてくれたのに。
俺が黙り込んでいると、零斗さんが口を開く。
「俺の事、嫌いか?」
「えっ。いやっ、嫌いじゃないです」
「俺にまた、会ってくれるか?」
「はい。もちろんです」
「そう。ならそれだけで嬉しいわ」
零斗さんはそう言って微笑む。
俺に微塵も期待なんてしてないんだろうな。
結局その後、なんだかお互い気まずくなってしまい、あまり話さずに店を出た。
東雲駅に着くと、零斗さんが言う。
「今日はホントありがとな」
「いえ。また食事とか行きましょう」
「おう。じゃあ、またな」
「はい。また」
零斗さんは振り向き、歩き出す。
そんな零斗さんには空腹のオーラが出ている。
そう言えば零斗さんは熱をエネルギーにしているから、普通の食事をしたところで空腹は満たされないんだ。
それなのに、嫌な顔一つせずに食事に付き合ってくれて。
お腹空いてるのに、我慢して。
(零斗さん…)
気づいたら俺は零斗さんの元へ駆け出していた。
零斗さんの腕をギュッと掴む。
零斗さんは驚いたように振り向いた。
「快。どうしたんだよ。そんな慌てて」
「あの…お腹、空いてますよね」
「あ? まぁ、そうだけど…」
「俺の熱、吸ってください」
零斗さんは驚いた顔をした後、少し間を空けて言う。
「…別に平気。明日客来るし、昨日も来たし。一日くらい平気だぜ?」
胸がギュッと苦しくなる。
零斗さんに誰にも触れて欲しくない。
俺以外の人の熱を吸うのも、もう嫌だ。
「俺は平気じゃないです。もう俺以外の熱吸わないでください」
「あ? お前何言って…」
「好きなんです。零斗さんが」
零斗さんは俺の言葉を聞いて、ただ黙り込む。
「だから、俺以外の熱吸わないでください」
「ホントに俺の事が好きなのか?」
「はい。好きです。なのでその…俺の家近いんで、熱吸いに来ませんか?」
これは俺の勇気を出した、少し下心も混ざっている精一杯の誘いだ。
コメント
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うわぁ〜〜〜〜!!😭💕💕 第27話、めっちゃエモかった…!!快くん、零斗さんのこと無意識に撮っちゃうとか、もうそれ完全に好きじゃん!!って思わずツッコんだよ笑 ラストの「俺の熱、吸ってください」からの告白シーン、胸がギュッてなった…。零斗さんが遠慮するところも、快くんが「俺以外の熱吸わないで」って独占欲見せるところも、尊すぎて死ぬかと思った〜〜!!✨ ふたりの距離、これからどう縮まっていくのかマジで気になる…!続き楽しみにしてるよ、灯依さん!!🌸