この物語は、太宰さんがポートマフィアに戻るというお話です!
なんで戻ったの?という理由は私も如何創ったらいいか、分からなかったので、取り敢えず森さんが言ってた「探偵社員の一人をポートマフィアに移籍」というのが太宰さんになった。というので、話を進めたいと思います!
見る人によっては、腐気味かもしれないし、語彙力ないのでご注意を!
それでも大丈夫な方は↓↓↓
____太宰さんがポートマフィアに移籍してから、二年が経った。
あれ以来、僕達探偵社員は誰一人として太宰さんに会っていない。
____太宰さんがポートマフィアに移籍してから、二年が経った。
その二年間。僕の隣の席には誰も座らなかった。
何時もだらけて座っている、あの人の姿がなかった。
みんな何時も通りだった。
____太宰さんがポートマフィアに移籍してから、二年が経った。
本来なら聞こえてくる国木田さんの怒声も、
入水に行くあの人を止める必要も無くなる。
何かが変わったのは本当だった。
____太宰さんがポートマフィアに移籍してから、二年が経った。
寂しさだ。
あの人が居なくなってしまった事に、僕は哀しいんだ。寂しいんだ。
もう一度会いたい。何時ものように会話がしたい。
そう思ってしまうのは、悪い事だろうか。
____太宰さんがポートマフィアに移籍してから、二年が経った。
***
成人式当日、国木田さん達が僕と谷崎さんに袴を送ってくれた。
式典の時少し不安だったけど、谷崎さんと一緒に居たおかげか、不安が和らいだ。
探偵社に戻ると、『成人おめでとう会』が開かれていた。
元々聞かされていなかったし、想像以上の準備がされていた為、僕と谷崎さんは吃驚した。
みんなに成長したな…とか、身長伸びたな…とか。色々褒められた。
与謝野さんに至っては日本酒、麦酒、ワインをそれぞれ買ったらしく、どれが好きか飲み比べを強いられた。
そこまでではないが、谷崎さんは意外とお酒に弱かった。
僕はというと、日本酒と麦酒は飲めたけれど、ワインは凄く高そうに見えて、とてもだが流石に飲めなかった。
日本酒は太宰さんが好きだと云っていた記憶もあり、飲んでみたが、喉辺りがカァっと熱くなって、飲みやすさで云うと麦酒が勝った。
とは云え矢張り自分には酒が合わなかったらしく、普通に緑茶が一番と思ってしまった。
次の日、僕はあの人に会いに行った。
実際行くまでの道中が、不安でいっぱいだったが、いざ来てみると自然と落ち着いた。
『僕は大人になりました。院長先生』
其の言葉が云えた瞬間、自分は本当に成長したのだと身に沁みて判った。
嬉しかった。
この事を太宰さんに伝えたいと思った。
けれど、そんな事は不可能に近かった。
***
今日は国木田さんに頼まれて、探偵事務所で使う日用品を鏡花ちゃんと買いに来た。
「この前行ったお店の方がトイレットペーパーが安かった」
買い物袋を持った鏡花ちゃんが、僕の襯衣の裾を引っ張りながら云った。
右手に買い物袋と左手にメモを持った僕は、鏡花ちゃんにそう云われ、「判った、じゃあ其処のトイレットペーパー買いに行こうか」と答えると、彼女は小さく頷いた。
鏡花ちゃんが云ったお店に向かって、横断歩道が少ない小道を歩いていた。
所謂『近道』だ。
とは云っても路地程の狭さではなく、軽自動車がギリギリ入れるくらいのスペースではあったが、人通りが少なかった。
僕と鏡花ちゃんは明日の朝食は何がいいとか、そんな話をしながら歩いていた。
刹那、忘れる筈がない声と足音が聞こえた。
思わず足を止める。
「如何かした?敦」鏡花ちゃんが首を傾げて聞いてきた。
「いや…えっと……」何故か僕は顔を俯けた。
[声が聞こえなくなる。]
――何であの人が……。
[パタンっと何かを閉じる音が聞こえた。]
――本当にあの人なのか?
[足音が耳に響く。]
――でも、どんどん近付いて……。
「………」
ゆっくりと顔を上げる。僕は目を見張った。
[硬い靴音が響いた。]
「えっ……」声を漏らす。何処か震えていた。
眼の前には、僕に居場所と生きる意味を与えてくれた____太宰さんが立っていた。
太宰さんも同じように目を見開いていた。
「貴方…何故……」鏡花ちゃんが小さく呟く。彼女も目を丸くしていた。
久しぶりに、僕達は太宰さんの顔を見た。
当たり前だ。太宰さんがポートマフィアに移籍してから、僕達探偵社員は誰一人として彼に会っていないのだから。
太宰さんが目を細める。
黒い外套を羽織っていて、相変わらず手足に包帯、そして右目にも包帯を巻いていた。
本当に太宰さんなのか判らなくなる程、あの時の太宰さんとは雰囲気が一転していた。
「あ…えっと……」喉で言葉が詰まり、躓くように何かを発した。
そう。あれから二年も経った。
太宰さんは僕の事を憶えてくれているのだろうか。
そんな心境に陥った。
太宰さんが歩き出した。
【若しかしたらもう、太宰さんは僕の事を忘れているのかもしれない。】
――そんな訳無い。例えそうでも太宰さんは……
【若しかしたらもう、太宰さんには会えないのかもしれない。】
――そんなの嫌だ…!話したい事が沢山あるんだ!
【若しかしたらもう、太宰さんは僕の知っている太宰さんではないのかもしれない。】
――違う!そんな訳無い!
――太宰さんは…!!
――太宰さんは……!!!!
「っ………あの!」僕は声を絞り出した。
『だっ…太宰さんですよね?』
太宰さんは僕に視線を向けた。目を見開いて、口を開けていた。
「そ、その…僕……」
何故か上手く言葉が出てこなかった。先程のように言葉が喉に詰まるわけでもない。
顔を俯けた。
「あのっ、僕…太宰さんに………」どんどん声が小さくなっていく。終いにはもう言葉を発することがなくなった。
嗚呼……僕は何も成長していなかった。
恩師を前に、云いたい事が何一つ云えないのだから。
こんな自分が____
僕はとても不甲斐ない。
僕は顔を俯けた儘、ズボンの裾を握りしめた。
「………敦」
鏡花ちゃんは落ち着いた静かな声で、僕の名を呼んだ。彼女の声が、木霊するように耳に響いた。
目を見開きながら鏡花ちゃんに視線を移す。
「大丈夫」
真剣な顔と優しい眼差しで云う彼女の言葉は、重々しく感じられた。
優しく僕の背中に触れる。
背中を押されたような感覚。けれど違ったのだ。
添えるとでも云って佳い程、彼女は優しく僕の背中に触れた。
「…………」
僕は顔を上げ、太宰さんに視線を合わせる。
「僕っ…中島敦です!」
小道に僕の声が響き渡った。
過去の記憶が、光を帯びてフラッシュバックする。
×××人生万事塞翁が虎×××
――君かい?私の入水を邪魔したのは…。
『入水…!!?』
――私の名は太宰。太宰治だ。
風が木々を鳴かせ、木の葉が浮かび上がる。
其の言葉ははっきりと聞こえ、まるで魂に刻まれたように心に残った。
×××ウィル・オブ・タイクーン×××
頬にじんわりとした痛みを感じ、叩かれた音は静かな駅内に木霊した。
その音が酷く耳の中で響き続ける。
――自分を憐れむな。自分を憐れめば、人生は終わりなき悪夢だよ。
太宰さんの其の言葉は、今まで聞いたどんな音より僕の耳奥に響いた。
×××フィッツジェラルド・ライジング×××
――私に云えるのは、一般論だけだ。
――人は、父親が死んだら泣くものだよ。
そう云い残して立ち去る太宰さんの姿が、ぼやけていって見えなくなる。
溢れ出た涙が頬に伝った。
×××回向(ECHO)×××
――君も芥川君も“あがく者”だね。
――私達と同じだ。
そう云って太宰さんは自分の手の平を見た。何を見たのかは僕には判らない。
でも“何かが在った”事には、僕は判った。
『何に乾杯するんですか?』
太宰さんは小さく笑みをこぼす。
―― ________ 。
その言葉を聞いて、口元が緩む。グラスを当て、綺麗な音を響かせた。
「僕の事……憶えてますか?」
其の言葉に、太宰さんは返事をしなかった。
けれど、返事の代わりに相応しい事をしてくれた。
太宰さんは優しく幸せそうに微笑んだ。
然しその瞳の奥には、何処か哀しみが潜んでいた。
***
『何に乾杯するんですか?』
僕の言葉に太宰さんはグラスを向けて微笑みながら云った。
――ストレイドッグに
その言葉に僕も微笑んだ。そして同じようにグラスを上げる。
『ストレイドッグに』
グラスは綺麗な音を響かせた。
その音は儚く消えた。
コメント
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あの、本当に好きすぎます! 最高です! 続きが楽しみです!