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スタートヽ(*^ω^*)ノ
夕暮れが近づき、街の喧騒が少し落ち着いた頃だった。
雑貨屋を抜けた先の路地裏に、小さな公園がぽつんと現れる。
遊具も少なく、ベンチがふたつあるだけの、誰もいない静かな場所。
キヨが何気なく立ち止まり、
『ここ……座ります?』
と小さく問いかけた。
レトルトは「うん」と頷いて、2人で並んで腰を下ろす。
風がゆるく吹いて、木の葉がさわさわと揺れる。
遠くで子供たちの笑い声が聞こえる以外は、時間がゆっくりと流れていた。
ふたりとも、なにも言わなかった。
けれど、無理に言葉を探す必要はなかった。
自然と、キヨの手がレトルトの手に触れた。
レトルトは一瞬びくっとしたが、すぐにその手を握り返した。
キヨの手は、想像していたよりもずっと温かくて、大きかった。
『……あの、、さ』
しばらくして、キヨがぽつりと口を開く。
『……なんで、声かけてくれたの?』
レトルトは、少し驚いたように顔を上げる。
キヨはレトルトの手を握ったまま、小さく息をはいた。
『……俺、あのまま終わると思ってた。
レトさん怖がってたし、ずっと返事も来なかったし……だから……』
一瞬、手に少しだけ力が入る。
『今、俺、、、夢の中にいるみたいで……でも、信じたいから、聞きたくて……』
レトルトはその言葉に、視線を落とす。
「……怖かったんよ……ほんまに。画面越しやからこそ、話せてたんやって思ってて……」
言いながら、レトルトの声が震える。
「でも、さっきキヨくんがカニのぬいぐるみ見て、にこーって笑ってて……」
「……それ見たら、胸がぎゅってなって、止まらんかった。……もう、怖いとか言うてる場合ちゃうなって思った」
レトルトは小さく笑った。
泣きそうな笑顔だった。
「……会いたかった。ほんまは。ずっと」
キヨの目が、ゆっくりと潤む。
『…俺もです。ずっと、ずっと。』
ぎゅっと、繋いだ手に強く力がこもる。
ふたりの影が、だんだんと伸びていく中で――
その手は、もう二度と離れそうになかった
つづく