頭痛が痛い状況だが、スマホのアプリで預金残高を確認すると早速報奨金の振込が確認できたので、父さんの口座に借金の残高を振り込んで、300万円程銀行で預金を下ろして、見舞いの品を調達して、親友二人の入院先である白須等総合病院に見舞いに向かう。
病院に着くと、出入り口付近にマスコミが群がっているのが見えた。
遠くから彼らの様子を窺うと、どうやらお目当ては文章先生の様で、如何にかカメラに写そうとしているらしいが、病院側の警備員にシャットアウトされているようだ。
緊急車両用の通路まで膨らんで塞いでいるのは正にマスゴミの面目躍如である。
見つかると面倒な事になりそうなので裏口に回ったのだが、そこにも奴等は群がっていた。
善良な市民の義務として警察への通報を行い、連中が排除されるまで身を隠す事しばし。
駆け付けた警官に追い散らされたのを見届けて、裏の職員通用口から病院に入る。事前に病院側に連絡していたのでスムーズに入れてもらえたのだが、待合口に居るご老人方が俺を見て手を合わせて何やらムニャムニャ言っていたのは何だろうか……
受付で見舞いに来た事を伝えると、それぞれの病室の番号と行き方を教えてもらえ、向かう途中で、ある病室の前に人だかりが出来ているのが目に付いた。人だかりの中心には穴が開いたように一人の外国人が室内に向かって跪いており、その右手には赤いバラの花束が握られていた。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
何を言っているのか……エインセルも~ん。
「あたしゃ便利な蒼狸妖精かっ!?」
一家に一体どころか一人一体でも良いくらいにお役立ち何ですけど。
「アタシはご主人様専属だから他の人には就けないけど……」
安心してほしい。
君には小野麗尾プロダクションの記念すべき1号生として今度の商店街でのファーストライブのメインを務めてもらうし、他所にやる気は全く無い。
「言語知識を移せばいいのかしら?」
「ああ、よろしく」
いけっエインセル!ラーニングだ!
いつか英語圏の言語知識を手に入れられたら英語のテスト勉強も必要なくなるかなぁ……
「終わったわよ」
むむっ、これは……フランス語!?
野郎、フミフミちゃんが地上に舞い降りた天使だとか……
良く分かっているじゃないか!
じゃなかった。こないだのスタンピードで救助された外国人か。
目が覚めたら最初に見たのが聖☆文章先生inラファエルじゃ仕方がないのか。
だが貴様の様な奴に我々のフミフミちゃんとの交際は認めん!!!(後方父親面院)
とはいえ人様の告白の妨害をするのは無粋にも程がある。
日本男児の生き様には色も恋も無いが情けはあるらしいので。(男塾調べ
俺の人生には恋愛機能の搭載に向けた大型アップデートを準備中だがな!!!(なお実装予定日は未定
しばらく歩くと池留の病室に着いた。
ドアをノックすると、
「どうぞー」
と返事があったので、
「入るよ~、お、意外と元気そう?」
「お、守か。ああ、これもフミフミちゃん効果だな!」
実際そうだとは思うが。
スタンピードに巻き込まれた人達が纏めてこの病院に運び込まれたらしいが、治療が必要だった患者はおらず、ほぼ検査・経過観察目的の入院になっているらしいし。
「そりゃよかった。あ、こっちの封筒は借りてたお金の返済と、こっちの封筒は御見舞金な。」
そう言って二つの封筒を渡す。
「……分厚くね?悪いけど中見るよ?」
「気にしなくていいよ。こないだのスタンピードで報奨金がガッポリだったし。返済は利子適当に着けて30万円で、見舞金は50万だし。そっちは入院代の足しにでもすれば良いよ」
「適当て……本当にいいのか?」
「いいさ。気になるなら早く退院して実家のバイトに復帰してくれ。そうじゃないと、親父さんに酒樽注文し辛いし」
何を隠そう、池留の実家は白須等酒店である。
池留経由で注文を出してお友達割引で俺がお得、中間マージンのボーナスで池留もお得、大量注文を受ける白須等酒店は儲かると三方良しの関係性が築かれていたのだが。
しがない商店街の家族経営の酒屋でしかない白須等酒店は池留が抜けると親父さんが配達するしかないのだが、親父さんももういい年だからなぁ。
「そっか。そういうことならありがたく貰っておくぜ」
「そういやさっきここに来る途中で見たんだが、文章先生の病室にフランス人が詰めかけていたぞ」
「何だと!?こうしちゃいられねぇ!!!一寸行ってくる!!!」
そう言って病室を飛び出す池留。
あの調子だと退院も遠くなさそうだなー……
良かった良かったと思いながら、次は鍵留の病室に向かう。
アイツの部屋は、と個室か。
近づくにつれて何某か嫌な予感が。
この気配は…ラブコメ!!??
馬鹿な!?奴は既に息絶えたはず……!!??
念の為に気配と足音を殺して鍵留の病室に近づくと、
「はい、鍵留君。あ~んっス」
「いやいや、先輩。そのくらい自分で出来るでゴザルよ」
糞がぁっ!!!!!思わず壁を殴りたくなる衝動を抑え半分開いていたドアをノックする。
ドアにしがみ付いて横から顔が半分見えるように、
「こ~ん~に~ち~は~」
「キャッ」
「ヒエッ」
「半分とはいえ、ドア開けて昼間からイチャつくとか、迷惑恋愛防止条例に基づき、死刑にされてもおかしくない所業だけど、そこの所はどう考えているのかな……?」
「そんな、イチャつくって。私、鍵留君とはまだそんな……っス」
「そうですぞ、守殿は誤解をされているでゴザル!」
「皿に乗せられた櫛切りにされたリンゴ。そのリンゴの一つが刺されたフォークを手に持つ毎日先輩。
そして先程の証言。これはスリーアウト。有罪確定ですねぇ……」
見舞金と返済金ボッシュートはしないまでも、ペナル茶(ティー)位は飲んでもらわないと。
アレ、クックバッドにレシピ乗っているかなぁ……
メシマズさん御用達の闇のイギリス料理大全扱いされるあのサイトでもさすがに架空の飲料のレシピはどうだろう。
なければマーマイトとシュールストレミングとアルミサッキ砕いた物とパクチーでも纏めてミキサーに掛けた、
オレ外道ペナル茶(ティー)コンゴトモヨロシクな代物でも用意するか……
「小野麗尾君、早まってはいけないっス!!!」
「守殿、今口から恐ろしい言葉が漏れておりましたぞ!?」
おっと、抑えきれない嫉妬心がつい口から……
「まぁ、いいか(全然良くないけど)。これ、借りてたお金の返済と御見舞金ね」
「おお、助かりますぞ。……でも、こんな大金急にどうやって用意出来たでゴザルか?」
「こないだのスタンピードの報酬が出て、結構な金額もらえたんでね、そういえば毎日先輩は入院しなくて良かったの?」
「私は特に怪我はしていなかったっスから…… はっ、もしや私も入院していたら御見舞金を……!?」
「悪いけど毎日先輩にはお見舞いくらいはしても、御見舞金渡すほどの関係性は無いかなー……」
「残当ですな。所で守殿、先程ネットで気になるニュースを見かけたのでゴザルが……」
そう言いながら枕元の自分のスマホを操作してこちらに向けてくる鍵留。
ニュース記事のタイトルには大文字で、
”仏にてワタシッテヴァ=ゾク=ブツナンデス大司教、ゼニアツメール寺院にて《オラクル》を使用、神の声を聞く”
なんかまた
悪い予感(極大)が
してきたのぅ……
記事名の時点で読む気が大分失せたが、目を背けても悪い事は遠ざかってくれないし、何なら何かのSCPの如く急接近してくるまである。
仕方なく記事に目を通していく。
本日未明、日本国政府にジャンヌ・ダルクのソウルカードの譲渡を拒絶された旨を受けたフランスの冒険者協会は、ジャンヌ・ダルクのソウルカードの契約が行われた事実を確認し、ジャンヌ嬢の無事を確認するべく、《オラクル》スキルの所有者を捜査した所
、カトリック系の、ゼニアツメール寺院の院長と冒険者業を兼務しているワタシッテヴァ=ゾク=ブツナンデス大司教が過去にオークションで同スキルのオーブを落札されていることを確認し、大司教に《オラクル》の使用を依頼し、依頼を受けた大司教がスキルの行使により啓示を受けた内容をそのまま公布しました。
その内容ですが、
『小野麗尾 守は紛れもなく童貞である』
との事です。
公布を聞いた市民と関係者各位によるお祭りが開かれ、寺院前は大変な人だかりが出来ました。
一時はフランス全土を包んでいた悲壮な空気は一掃され、人々は笑顔で一日を終える事が出来ました。
大司教は仏冒険者協会並びに政府関係者と協議の上、一日一回《オラクル》の使用を行うと宣言されました。
公布内容に関しては新聞各紙での掲載と国営放送で定時的に放送が予定され、準備が出来次第、順次メディアで発表されるとの事です。
関連記事
・本日仏冒険者協会より、ジャンヌ・ダルクのソウルカードの契約確認が発表。日本冒険者協会は事実確認中との事
・日経平均株価一時急落。仏によるジャンヌ・ダルクのソウルカードの契約確認発表によるものか?
……病院内では迷惑になるかと思い、屋上に出て思いっきり叫んだ。
「四文字イイイイイイイィッッ!!!!!俺が一体何をした!!!!!?????
答えろや、この性癖過多重度ロリショタペ〇「神は言っています。それ以上は言わせない、と」
メッセンジャー(ガブリエル)さんがカットインの特殊効果付きでインターセプト参上。
「おう!!!??お宅の息子さんが言ってませんでしたかね?神は老若男女・性癖問わず全人類を愛していると!!!???」
「いや私、性癖までは言っていないよ?」
ロンゲとパンチのロンゲの方、立川のジョニー・デップまでキター!!!
Cさん!!UMAGOYA生まれのCさんが来た!!!
空気清浄機的な理由で病院内にお越し頂いた方が良いんだろうか?
「期待している所に申し訳ないけど、あまり奇跡の大盤振る舞いはできないから」
Cさんの一寸良いとこ見てみたかっただけなんだが……
「そう思いながら背中に召喚した妖精ちゃんにラーニングさせようとしていない?」
BA☆RE☆TA
だって仕方ないやん!!!モノホンの救世主(メシア)直々のメシアライザー習得の恐らくは唯一無二のチャンスだと……
それはそうとバレたなら、
「主犯は俺です。この子は俺に無理矢理やらされただけなので見逃してもらえると……」
「君がそう言うなら、君の言う所の四文字禿も《オラクル》で言わざるを得なかっただけだから、御相子にしたらどうかな?」
突然Cさんの後ろから誰かの声が放たれた。
金髪ロン毛のスーツ姿の誰かさんはCさんの後ろから出てきて、優雅に一礼して、
「やあ、初めまして、黄泉大王殿。私はそう、君の言い方だとLさん、になるのかな?」
L、L…… ……!? 閣下!?閣下だと……!?
まさか、俺の上着が狙われている……!?
「ああ、やっぱりこの言い回しで分かるんだ?メガテン、だっけ。アレ本当に役に立ってくれるよね。色々とネタにされるのもアレだけど。2でYHVHの奴が四文字禿呼ばわりされてラスボス扱いで倒されたのは本当に愉快だったけど。真4だともっと酷いんだって?今度部下に買わせて来なくちゃ。ああ、今の所部下は足りているから、上着の心配はしなくてもいいよ?
もっとも君が望むなら、いつでも我々は歓迎するけど」
分からん、本当に分からん。何で今日はこんな事に……!?
「こら、ルシファー君。今日は彼にお礼を言いに来たんだろう?
怖がらせてどうするんだい?」
ありがとう、Cさん!!!だが、お礼とは?俺、何かやっちゃいました?
「ああ、そうだった。さっきの彼の啖呵がすっかり気に入ってね。性癖過多重度ロリショタペ〇、だとか長い歴史の中でもYHVHの奴にそこまで言った人間は初めて見たからさ。それで今日地上に来た理由だけど、君がこの間送ってくれたジルドレ君が美味しかったから是非お礼を言いたくってさ」
俺が直接送った訳でもないけど随分と律儀な事である。
「いえ、気に入って頂けたなら何よりです。可能な限り永くお楽しみ頂ければそれで」
「うん、それでお礼なんだけど。君、レメゲトン手に入れたんだよね?アレ、普通の人間が使うと正気を失うからって忠告に来たんだけど……」
「うん、心配する必要なかったよね、コレ……」
Cさんまで不安になる事を言う。
「え~と、冥府魔道耐性のスキルオーブがありますので大丈夫かと」
「いや、それこそ必要ないよ」
「うん。君、普通の人間なんだよね?魂が完全に冥府魔道に染まり切っていて今更耐性とか必要無さそうなんだけど」
HEY,YOUどういうことだってばYO!!!
「君、黄泉大毘売命と契約する時、何か黄泉の物を取り入れたりしたかい?この濃度は普通じゃ考えられないんだけど……」
「それなら一寸体感3年間毎日3食黄泉竈食(ヨモツヘグイ)を食べて過ごしましたが……」
「「それだ!!!」」
「いや一寸待って君一体何をやっているの。なんでそれで君の魂は現世に存在できているの!?ブッダでもそんな苦行はしなかったよ!!!???」
「馬鹿な、これほどの逸材を見過ごしていただと……クソッ!どんな存在が君を隠蔽していたんだ!!!少なくとも主神級でなければ……!?」
「うん、これではお礼をするどころか、色々と驚かせてもらった分のお礼も上乗せしなければならないな。
レメゲトンの使用に当たり、全悪魔の初回召喚分のMPはこちらで負担しよう。それと最後のページに私の召喚陣も載せておこう。私の力が必要になった時は気軽に呼び出すと良い」
閣下の力が必要な時ってそれ四文字との決戦とかじゃ……
つまり今か。
「待ちなさい」
Cさん、止めないでくれ。今奴を止めなければこれから毎日俺の貞操情報が全世界にバラ撒かれてしまうんだ……!!
「神は言っています。近日中に何とかするから絶対に早まるな、と……!?」
信じる者は(足元を)掬われる。古事記にも書いてある。
聖書?シラネ。
「とりあえず、今俺が受けて、これからも受ける精神的苦痛に対する”誠意”を見せてもらうのが先じゃないですかね~?」
「神は言っています。我が4大天使を黄泉大王殿に…… えっマジですか?私達この人に身売りされるんですか?
……黄泉大王殿、今こそ立ち上がる時です。あの邪悪な禿に裁きを……!?」
「一寸待ってガブリエルさん!?黄泉大王さんも本気にしないでください!?父さん、まずは謝ろう!?ほら早く!
黄泉大王さん、レメゲトンを開く手を止めて!?ラッパ係の人はまだ練習中だから!!!」
「……禿は言っています。すまなかった、と」
不承不承、といった表情でメッセンジャー(ガブリエル)さんが告げてくる。
「気にしないで下さいとはとても言えませんので対策をお早めに、とだけ」
「ところで黄泉大王殿、昨今は通信技術が発達しているので不要かもしれませんが、
メッセンジャーを一人雇う予定は御座いませんか?」
「すいませんが、現在人材管理が手一杯で……」
「秘書業務も得意な者ですが……」
押しというか圧が強いなこの大天使。
「ガブリエルさん、気持ちは分かるけどこれ以上は彼に迷惑だから……」
申し訳なさそうに大天使を担いで帰るCさんの姿に人類の原罪と十字架を担いだ姿を幻視した。
今日はもう帰って早めに寝
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