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八月の青い空を二本の飛行機雲が引き裂いた。


「あれは自衛隊機ですね」

「そのようだな」

「F15ファントム、緊急発進スクランブルです」

「そうか」


日本海から吹き付ける突風に油絵具が付着したベージュの帽子が舞い上がった。


「おおっと」


顔料で染まった指が帽子を押さえようと試みたがそれは叶わず、流木や割れた浮標ふひょうが埋もれた砂浜を転がって行った。


「ああ、帽子が飛んで行ってしまったじゃないか」

「井浦いうら、てめぇに自由はない」

「なら拾って来てくれないか」

「大丈夫だあいつらが追い掛けている」


振り返るとスーツ姿の厳つい男たちが帽子を求めて右往左往している。


「そうか、良かった」


井浦と呼ばれた男性は防波堤を越えた田園の中に建つ金城きんじょう大学短期大学部美術科油画コース教授、井浦 惣一郎いうらそういちろう45歳だ。


井浦の手首には手錠が掛けられていた。


砂浜に張られた黄色い規制線の奥には大きな穴が掘られていた。人ひとり入れる穴、その周囲を青いつなぎを着た捜査員が取り囲んでいた。


「ありましたーーー!」


警察官たちが駆け寄った場所には私の黒いギンガムチェックのサンダルが砂底から顔を出し、海水に浸かった状態で見つかった。


「見つかりましたか」

「見つかったな」

「七瀬ななせちゃん、喜んでいますね」

「んな訳ねぇだろーがよ」

「そうですか」


私の名前は田上 七瀬たがみななせ20歳、井浦教授と熱い夏を過ごした同じ短期大学美術科デザインコース2年生だ。

木陰からいつも奥さまがこちらを見ていました

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