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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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一の姫猫は、ニャーー!と、鳴き声を上げ、タマは、紗奈《さな》の足下で、フゥーー!と、毛を逆立てている。


「え?!タマ!それ、猫でしょ!」


紗奈の言い分に、


「タマは、怒ってるいるのですっ!姫猫様と一緒になるために、猫の仕草も練習しているのです!」


などと、つぶらな瞳を吊り上げて、荒ぶれた。


「姫猫様を、簡単に使わないでくださいっ!!」


さらに毛を逆立て、タマは叫ぶと、紗奈へ噛みつく素振りを見せる。


きゃあ!と、叫んで、紗奈は、後ずさった。


「タマが、怒るのも、当たり前だ。紗奈、いい加減にしないか!」


常春《つねはる》が、妹を叱咤する。


確かに、一の姫猫は、空を飛んだ。しかし、あれは、ああでもしなければ、皆が、窮地に陥るから取った、苦肉の策。


「……だけど、兄様……日が暮れてしまって……」


髭モジャが、言ったように、都を出ると夜になってしまうだろう。松明《たいまつ》の灯りがある、髭モジャ達の護衛がある、と、いう問題でもない。


かといって、一の姫猫に頼るというのも、これほどの人数、荷物を、どうするか。あの時は、紗奈一人を背中に乗せただけだった。ついでに、タマを咥えて……。


「えっ!!姫猫様!」


常春が、紗奈に、こんこんと説教している横で、タマが、驚いていた。


「あ、あの!上野様、じゃなかった、徳……じゃなかった、やっぱり上野様!」


「タマ!何、言ってるの!!」


紗奈に、呆れられながら、タマは、モジモジしつつ、一の姫猫の言葉を代弁した。


「えーとー、姫猫様も、一緒に行きたいそうです。都は、懲り懲りなんだって。だから、タマも、ご一緒します!」


でも……、と、タマは、言い渋る。


「眠いので、今は、空を飛べないそうです」


「だそうだ、紗奈。ここは、素直に、牛車《くるま》に、乗りなさい」


常春は、荷物を、牛車へ運び込んだ。


「髭モジャ殿、そして……」


「おお!胸モジャでよいぞ!」


言いよどむ、常春へ、崇高《むねたか》が、胸を張って胸元を見せる。


「うわっ、ほんと、胸モジャだなあーそれだけあれば、鬼も逃げるよ!」


晴康《はるやす》が、けたけた笑った。


「で、上野様は、空を飛びたいの?」


笑いを堪えながら、晴康が、紗奈へ尋ねる。


「飛びたいって、訳じゃないけど、飛んだ方が早く着くかなあと思って。何しろ、遠国だから、何日かかることやら。なるべく早く着かなければ、あちらで、厄介な事が起きてるかもしれないし」


それには、一同、うーんと唸った。


「じゃあ、やっぱり、飛んだ方が良いのかなあ……」


晴康の言葉に、常春が、ピクリと肩を揺らす。


「あー、やっぱり、だめだ。兄様は、高い所が、苦手だから……」


い、いや、そ、それは、空であって、もしも、落ちたりしたら云々と、常春は、必死に言い訳し始める。


「まあ、落ちない事を祈りつつ、常春も、大丈夫で、皆を、一度に運ぶには……若、しかいないかー」


タマ、若に、聞いて来て、と、晴康は言うが、一同、何のことやらと、話が見えぬとばかりに、ぽかんとしている。


「晴康様!かまわないそうです!」


タマの言葉に、じゃあ、そうゆうことで、と、言いつつ、晴康は、車に繋がれる、牛の若の側へ行った。


「タマ、力を分けておやり」


はい!と、勢い良く答えたタマは、ピョンと、若の背中へ飛び乗り、額を擦り付けながら、むむむむ、と、唸った。


とたんに、若が、モウーーー!!!と、嘶く馬のように、大きく鳴いた。


その瞬間、若の体は、メキメキと音を立て、肉が盛上がる。


「こんなところかな?」


タマが、隆々と盛り上がった、筋肉質の体へ変化した若から、飛び降りた。


「若様!足で、地面を掻いてみてください!」


タマに言われて、若は、蹄で、土を蹴るように掻いた。


すると、ふわりと、浮き上がる。勿論、繋がれている、車ごと……。


「これで、空を飛べますよ!」


嬉しげに、タマは言うが、一同は、ただ、ただ、固まった。


目の前で、起こった事が、まるっきり理解できなかったのだ。


「さあ、皆様、車へお乗りくだされ」


呆然としている、皆へ向かって、若が、言う。


かなりの間の後、


えええーーーー!!!!喋ったぁぁーーーー!!!!


牛車を寄せている、車宿《くるまやどり》に、驚愕の声が響き渡った。

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