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■06■
だが、残りの捕囚二人は、魔法円の中央で苦しそうに身を大きく曲げる。
のたうちつつ四つん這いになると、地面へと爪を立てた。
ザワザワとした気配が、2人へ収束し、
|魔力《オーゴン》が彼らへ集中し、その姿が変化してゆく。
体中の体毛がザワザワと伸び。
指は武骨に、爪は太く大きな鉤爪へと変わった。
肌の下で筋肉が波打ち、太く硬い筋肉質に体全体が変化する。
真紅に輝く眼と、剣の様に鋭く長い牙。
クマのごとき巨躯。
その両手は異常に長く、伸ばした長さは膝の位置よりも長い。
体に纏う雰囲気が、彼等が超常の存在である事を示していた。
ヴァイラと呼ばれた魔獣は、猿の姿をした神性の魔物。
3mを優に超える巨体、全身を覆う剛毛は天然の鎧であり
そして、牙と爪は、鋼鉄を貫く。
長く射程が広い腕、それは丸太の様な筋肉の塊で、
両足の太さも人間の胴体並みに太く。
脚の指は、手の様に長い指をしていた。
ゴリラと手長猿を合わせた巨大な異形。
そんな強靭な魔物がルドラの両脇へと付き従い、召喚主の彼から指示を待っている。
明らかに超常な雰囲気と威圧に、駆けつけた兵士は数歩後ずさった。
未だトランス状態のルドラは、片手をあげて兵士を指さす。
「行けっ!盟約に従い…」
「我らの敵を屠れ…っ!!」
ルドラは、ヴァイラ達へ下知を飛ばした。
2頭のヴァイラは、大きく咆哮を上げると、兵士に向かって突進した。
一頭は大きく飛び上がると、そのまま兵士へ向かって飛びかかる。
ジャンプは、方向転換や停止が出来ない。
これを迎え撃つ兵士は、自然落下するヴァイラに向かって剣を一閃すれば良い。
そう兵士も楽観視して、剣を大きく横へ振るった。
だが、予想した空中にヴァイラは居らず、兵士の必中の一閃は宙を切る。
「…!?」
大きくジャンプしたヴァイラの長い腕は、頭上に生い茂る木々の枝を掴んでいた。
ヴァイラの巨体に引っ張られ、太い木の幹は大きくしなだれる。
その反力で、奴はジャンプの自然落下を相殺し、兵士の攻撃を回避していた。
グンッとヴァイラは、枝を掴んだまま、空中で身を丸めグルンッと一回転すると、
岩の様な巨体で兵士へと降りかかり、相手を圧し潰す。
全体重をかけて地面へ兵士を押し倒し、手の様に巧みに脚の指でその頭を鷲掴む。
反対の脚は、がっしりと兵士の胴体を踏みつけ、
ガンッガンッと、ヤシの実でも割るかの様に、脚で掴んだ兵士の頭を複数回地面へと叩き付けた。