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その街は、どこへ向かっているのか誰も知らないまま、ただ広がり続けていた。
私はこの街で暮らすことを楽しみにしていた。ここに住むこと自体が、働く理由であり、目標だったからだ。高い場所から朝日と夕日を眺め、洗練された通りを歩き、評判の店で食事をする。何不自由のない、心地よい生活だった。
「新しい人が引っ越してきます」
この街では、定期的に外から人が流れ込んでくる。
引っ越してくる人たちは、私たちのような住民とは少し違う。高い家賃を払えるわけでもなく、街の仕組みをよく知っているわけでもない人たちだ。
それでも街は、彼らを拒まない。
なぜそんなことをするのかといえば、理由は単純だった。
安定した暮らしというものは、どうしても退屈になる。そこでこの街は、少しだけ事情の違う人たちを迎え入れることで、住民に安心と優越感、そして「自分はまだ大丈夫だ」という感覚を提供していた。それが、この街の売りだった。
ただし、引っ越してきた人には一つだけ決まりがある。
「住めるのは、1日だけ」
その理由が、私にはどうしても理解できなかった。
せっかくなら、もっと長く一緒に暮らせばいい。違いがはっきりすればするほど、こちらの立場はより確かなものになるはずなのに。
気になって仕方がなくなった私は、顔見知りになった資産家に尋ねてみた。
「どうして、1日なんですか?」
彼は少しだけ考える素振りをしてから、肩をすくめた。
「理由なんて単純ですよ」
そう言って、こちらを見て微笑む。
「1日を超えると飽きるのよ。みんなね」
私は言葉に詰まった。
彼は念を押すように、ゆっくり続けた。
「わかるでしょ?誰かの愛人さんなら」
街は今日も、何事もなかったように、静かに人を迎え入れている。