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愛しのフェイクディスタンス

50 - 第50話*はじまりと、もういちど*8

2025年06月08日

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***


雅人との同棲……ではない。

雅人宅での居候生活は特に甘い空気などなく、悲しいほど健全に過ぎてしまっていた。


結果的に約一週間の休みが舞い込んだ優奈だったが。

まともに会えたのは何と、あの、出来が良かったとはまさか言えないサンドウィッチを作った夜のみ。

その後は忙しそうで、自宅に戻ることも少なかった。


(週の後半は出張、帰ってきても休日返上で仕事……申し訳ない)


悶々と雅人の忙しさに頭を抱えつつも、たどり着いたビルの前。

今日から株式会社b-sunset――そう、雅人が社長を務める会社で働き出すのだ。


大きく、そして高くそびえ立つオフィスビル。

雅人のマンションからは一駅程度の距離。


ネットで調べてみたら、優奈でもここ最近目にすることの増えた企業名がズラリと並んでいた。

雅人の会社はその五階にあるらしい。


聞いた話によると、社員の増加等に伴い二年前にこの場所へ転居したのだという。

社員数二百名弱程で、まだ規模は然程大きくはないけれどもここ数年の業績は右肩上がりの注目ITベンチャー。

社長である雅人の容姿、加えてモデルや女優とメディアを騒がせる交友関係も……真相は定かではないが、注目を集めるひとつの要因となっている……のだとか。


(目に入れないようにしてたけど、結構報道とかされてるんだよね……つらい)


そんな雅人は、今のところ女っ気を見せず、かわりに過保護っぷりが半端ないのだ。

昨夜から何度言っても一緒に出社すると言って譲らなかったのだが、優奈としては入社早々悪目立ちしたくなかったので丁重にお断りをした。

……の、だけれど、一方の雅人も譲らず。

結局折れたのは珍しく優奈だった。


頼っている身としてはあまりにわがままを通すわけにもいかないと思ったからだ。


しかし急な仕事で早朝会社に行かなければならなくなった雅人。

優奈の願い通りビルの前で落ち合うことになり少しホッとしたのだけれど。


(お、落ち着かない……)


”ビルの前で”と言ったけれども、時刻は八時半。

円形に広がるビル前の広場。木々が美しく風に揺れ、まるで遊具のない公園みたいだ。

様々な方向から続々と出勤してくる人の波に圧倒されてしまう。

こんなにたくさんの人たちが同じビルで働いているのか。そう思うと、先週まで優奈の日常であった村野工務店がそれはそれは小さく思えてきてしまう程だ。



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