rdside
昼下がりの光が白いカーテンを透かして、やわらかく病室に広がっていた。
時計の針の音すら遠く感じるほど静かだった。
ぺいんとくんはベッドの上に腰をかけ、窓の外を眺めている
その横顔を見ていると、時間が止まってしまったみたいで、俺も思わず黙り込んでしまった。
本当は何か気の利いたことを言えばいいのかもしれない。
でも、こんなふうに黙っていても、不思議と苦ではなかった。
むしろ落ち着く。
この沈黙に、安心さえ覚えている自分がいた。
廊下から足音が近づくのが分かる。
俺はふと声をかけた。
rd「そろそろ先生来るかも」
ぺいんとくんはわずかに肩を揺らし、振り向いて笑う。
pn「…なんか緊張するなぁ、」
その笑みは弱々しくもあり、同時に確かに生きている証のように見えて 俺は胸の奥がじんと温かくなった。
rd「大丈夫だよ」
rd「良くなってきてるし、きっと前に進める話をしてくれるはずだから」
pn「うん、」
気づけば自然と言葉が出ていた。
根拠のない励ましだった。
でも、そう信じてやまない気持ちがあった。
やがて扉が開き、 整形外科の先生が白衣を揺らして入ってきた。
「失礼します」
「それでは問診から始めますね」
淡々とした問診が始まる。
ぺいんとくんは緊張したように答えながらも、時折こちらを見ては安心を確かめるように微笑む。
俺はただ横で見守ることしかできない。
でもその「見守る」時間が、こんなにも尊いものなのだと感じていた。
先生の指先がぺいんとくんの足を軽く押し、状態を確認する。
静かな間が流れた。
少しの沈黙が、不安と緊張が入り混ざってやけに長く思えた。
そしてようやく先生が顔を上げ、穏やかに告げる。
「もうすぐ車椅子に乗れるようになります」
その言葉に、空気が一気に変わった。
ぺいんとくんは目を見開き、驚いたように俺を見る。
視線がぶつかる。
思わず、俺も笑っていた。
pn「…ほんとに?」
rd「よかったな」
小さく漏れたぺいんとくんの声に、俺は頷く。
短い言葉だけど、心からそう思った。
するとぺいんとくんの顔にぱっと笑みが咲いた。
それは作り物じゃない。
心の底からあふれ出した笑顔。
見たことの無い満面の笑みだった。
ただ「嬉しい」という感情だけで満ちているのにも関わらず暖かく包み込んでくれるものだった。
_ !!
胸を撃ち抜かれた。
その瞬間、心臓が跳ねた。
呼吸が浅くなり、視界がにじむほどだった。
それは初めての感覚だった。
こんな気持ちを抱くはずじゃなかったのに。
なのに俺は、彼の笑顔にどうしようもなく惹かれてしまった。
認めざるを得ない。 俺はこの人に心を奪われた。 気づいてしまったら最後、もう後戻りなんかできない。
けれど「それはいけないことだ」と頭では分かっている。
患者と、ただ患者を寄り添い、支える立場の俺。
ここに恋なんて、あるはずがない。
医者と患者の恋などあってはいけない。
心臓の高鳴りを必死で抑え込もうとする。
気づかれないように、ただいつも通りを装う。
でも、内側では大きな波が押し寄せていた。
先生は変わらぬ調子でまとめに入り、静かに診察を終える。
「順調ですよ このまま焦らず進めていきましょう」
そう言って扉を閉め、部屋から出ていった。
病室には静けさが戻る。
俺は取り繕うように言った。
rd「…よかったね」
声が少し震えている気がして、咳払いでごまかした。
彼はそんなことに気づかないまま、目を細めて「うん」と笑った。
その顔がまた、俺を苦しめるほど愛おしかった。
_ このままじゃいけない。
距離を取らなければ、自分を保てなくなる。
そう思って立ち上がり、彼に一言伝えた後病室を出た。
廊下は少しひんやりとしていて、緊張で熱くなった身体を冷やしてくれた。
壁に背を預け、深く息を吐く。
けれど胸の鼓動は収まらない。
叩きつけるように脈打って、落ち着く気配すらなかった。
この気持ちを抱えたままで、本当にいいのか。
寄り添うだけで終わるのなら、それで正しいはずだ。
でも、心はそれを許さない。
気づかないふりをしようとしても、もう遅い。
胸の内に問いが生まれては消えていく。
「このままでいいのか」
答えのない声が、何度も何度も繰り返されていた。
額に手を当てると、じんわり汗がにじんでいた。
俺は患者と医者という線を越えるつもりなんてなかった。
越えてはいけないと何度も言い聞かせてきた。
ここで出会ったのは、偶然の延長にすぎない。
俺はただ見守り、支えて、少しでも生きやすい時間を増やすためにそばにいるだけ。
それだけでいいと思っていたはず。
なのに、あの笑顔を見た瞬間、すべてが崩れた
rd「…なんでだよ」
誰に聞かせるでもなく、声が漏れる。
胸の鼓動がまだ暴れている。
どうしても収まってくれない。
ぺいんとくんは、俺にとって守るべき患者。
頼られて、信じられて、それだけで十分のはずだった。
けれど「一緒に喜び合える」ことが、こんなにも胸を震わせるなんて思いもしなかった。
あの瞬間、俺は心から「生きててよかったな」と思った。
彼の喜びを自分のことのように嬉しいと感じてしまった。
それはただの優しさじゃない。
ただの共感じゃない。
もっと、ずっと深いところにある衝動だった。
分かっている。
これは許されない感情なのだと。
俺がもし、この気持ちを少しでも表に出してしまったら 彼を傷つけてしまう。 信頼を壊してしまう。
そうなればすべて終わり。
だから抑えなきゃいけない。
押し殺して、ただの「先生」でいなきゃいけない。
それが正しいことだから。
でも 彼が笑うと、俺も笑ってしまう。
彼が落ち込むと、胸が痛む。
彼が「そばにいてほしい」と言わなくても、自然とここに足を運んでしまう。
気づかないふりをしてきた。
でも、もう限界かもしれない。
こんな気持ちを抱えたまま、あとどれくらい平然とそばにいられるだろう。
「このままでいいのか」
何度も心に問いかける。
ただの寄り添いで終わらせるのか。
それとも _
怖い。
俺はこの先、どんな選択をしてしまうんだろう。
彼の未来を守るために距離を取るべきなのか、
それとも、彼と同じ景色を見たいと願ってしまうのか。
足が重い。
病室に戻ろうとするのに、なぜか歩みが鈍る
戻ればまた、彼の顔を見てしまう。
その笑みを見ればまた、心臓が跳ねてしまう。
それでも戻らなきゃいけない。
俺の役目は変わらない。
彼にとっての安心であり続けなければならない。
深呼吸をして、胸に手を置いた。
脈はまだ早い。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせても、波は小さくならない。
― 恋だ
認めたくなくても、もう分かってしまった。
俺はぺいんとくんに恋をしている。
患者と医者の境界を越えた、どうしようもない気持ちを抱いてしまった。
それを口にすることは絶対に許されない。
でも消すこともできない。
廊下に差し込む昼の光は、やけにまぶしくて、
俺の迷いと葛藤を、すべて浮かび上がらせているようだった。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡1000 💬1
コメント
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先生〜꒰ᐢ⸝⸝´ඉᯅඉ⸝⸝ᐢ꒱まっじで主様天才、、、、、誰か墓くれ、、、( ´ཫ` )(吐血)