テラーノベル
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龍河は、暗闇に沈んだ運転席を凝視するが、
からでは中に誰かいるのかすら確認できない。
「外からじゃ運転手は確認できねーな」
窓ガラスの向こうには、ただ底のない闇だけが広がっている。
龍河の脳裏に、一つの疑問が浮かんだ。
「仮に運転手が乗ってないとしたら
このバスはどうやってここまで来たってんだ?」
その言葉に、一同の表情が凍りつく。
誰も答えられない。
そのときだった。
──プシュー。
静寂を切り裂くような空気音とともに、バスのドアがひとりでに開いた。
開かれた扉の先には、薄暗い車内が続いている。
まるで一同を車内に誘っているかのように。
「乗れって事かな?」
茜が恐る恐る呟く。
「え!?乗るんですか!?」
朝陽が驚いて声を上げた。
「ダメよ?みんなは帰るのよ!」
美月が即座に制止する。
しかし、龍河は開かれた扉を見つめたまま動かなかった。
「確かに先生の言う通りだ」
そして、信愛たちへ向き直る。
「君らは──」
龍河がそう口にした瞬間、眼前の景色が一変した。
「は?なんだ?これ・・・」
龍河が呆然と周囲を見回す。
「え!?なんで!?」
信愛も目を見開いた。
「さっきまで私たち・・・外に居たよね?」
茜の声が震える。
誰もバスに乗った覚えなどない。
誰も一歩すら踏み出してすらいない。
それなのに、一同は全員カルネアデスバスの車内に立っていた。
「まずい!出るぞ!」
龍河が真っ先に我に返り、開いていた扉へ駆け寄る。
だが、その瞬間。
──プシュー。
「あ!待っ──」
さくらの声と同時に、目の前で扉が閉まった。
さくらが慌ててドアに手をかけ、力任せにこじ開けようとするが、扉はびくともしない。
「ダメ!開かないんだけど!」
「こっちもダメだ!」
龍河もドアシリンダーを掴み、全力で引っ張るが動かない。
まるで扉そのものが、皆を外へ出すことを拒んでいるかのようだった。
「嘘でしょ!?」
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
美月の顔から血の気が引く。
「まずい・・・」
信愛が呟いた。
「信愛先輩!お経か何かでドア開けれませんか?」
朝陽が縋るように尋ねる。
「お、お経?」
焔垂が目を瞬かせる。
「何でこんな時にお経なんだ?」
「先輩の予想では、このバスは
霊が憑依してるんでしょ?」
朝陽は必死だった。
「だったら霊的な力が働いてる
かもしれないじゃないですか」
「あ!確かに!それならお経で何とかなるかも!」
さくらが希望を見いだしたように信愛を見る。
全員の視線が、一斉に彼女へ集まった。
「やった事ないけど・・・やってみる」
信愛は覚悟を決めると、数珠を取り出した。
それを両手で握りしめ、静かに目を閉じる。
「霊堂霊冥霊界──」
低く、澄んだ声が車内に響く。
しかし「きゃあ!」
突然、バスが大きく揺れた。
エンジン音が唸りを上げ、停車していたはずの車体が勢いよく走り出す。
足元をすくわれた信愛は、その場に倒れ込んだ。
「まずい!動き出した!」
龍河が叫ぶ。
「まぢで?まぢで?まぢで?まぢで?まぢで?」
茜は完全に取り乱していた。
「やばいな・・・」
焔垂の顔がみるみる青ざめていく。
信愛は床に手をつきながら、恐る恐る顔を上げた。
「どうしよ・・・」
朝陽は車内を見回すがそこには誰もいない。
「乗客は僕ら以外誰一人いないし」
声を震わせながら、さらにその先の運転席を見る。
「運転手だって居ませんよ」
「どうなっちゃうの・・私たち」
さくらは恐れ慄いた顔で震えた声で呟く。
無人のカルネアデスバスは、一行を乗せたまま、深夜の闇の中を走り出した。
コメント
1件
わあ、163話まで読んできた長編のここでこの展開…! 無人のバスが勝手にドアを開けて閉じ込める不気味さ、そしてまさに全員が乗ったわけでもないのに車内にいる恐怖がすごく伝わってきました。信愛がお経を唱えようとした瞬間にバスが暴走し始めるタイミングの悪さも、もう絶望しかなくて息が詰まりました。龍河たちがどうなっちゃうのか、続きが気になって仕方ないです…!