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「ヒナ、しっかりしろ、ヒナ!」
アレクサンドロは意識がなくなったヒナを支えながら何度も名前を呼んだ。
ユリウスが駆けつけ護衛を呼ぶ。
馬車をすぐに公園入り口に手配したが、到着までの間にユリウスは公園内を確認した。
生い茂った葉、咲いた花、透き通った水。
影響範囲は半径50m程度。
公園内全てというわけではない。
「アレク様、馬車が着ました」
「俺が運ぶ」
護衛にヒナを運ばせるというユリウスをアレクサンドロは断った。
大切に抱え馬車へ連れていく。
王太子が女性を抱えて歩くという光景に、公園の入り口にいた街の人は驚いた。
「どのあたりまで影響があったか調べてください」
できれば症状も詳しくとユリウスは護衛に頼むと、急いでユリウスも馬車に乗る。
怪我や持病が治った影響範囲はおよそ半径2km。
商店街で有名な唐揚げ屋の店主の火傷まで治ってしまった。
だが、その隣のフレッシュジュース屋では、包丁で少し切った程度の切り傷さえ治っていなかった。
ここが境目だという調査結果を護衛はユリウスに報告する。
最初の影響範囲は半径50m程度。
主に植物に影響。
次の影響範囲はおよそ半径2km。
こちらは人に影響。
少なくてもヒナが使用できる魔力の効果は二種類。
ユリウスは護衛のメモを手にすると宰相室へ説明に向かった。
アレクサンドロは意識のないヒナの頬を優しく撫でた。
自分のベッドに寝かせ、バレッタと眼鏡はサイドボードに置いた。
結婚しようと言ったらムリだと言われた。
どうして?
アレクサンドロのグレーの眼が揺れる。
他に好きな男がいるのか?
ランディか?
それともディーンか?
俺の知らない男か?
魔力が身体を通り抜けたがあれは何だったのだろうか?
わからないことが多い。
聖女とはこういうものなのだろうか?
チェロヴェ国の聖女もこうなのか?
夜になっても目覚めないヒナ。
ランディを呼んだがおそらく魔力切れだと言った。
ディーンは街の人からの問い合わせに追われているそうだ。
「ヒナ」
名前を呼んでも反応はない。
アレクサンドロはヒナの手を握りながら眠りについた。
ヒナが目覚めたのは二日後の朝だった。
#大人ロマンス
煉彩
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#異類婚姻譚
和泉
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白波 灯
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「えぇっ? 二日?」
街は楽しかったが、急に結婚と言われ意味が分からなくて気づいたら二日経っていたとヒナはユリウスに説明した。
魔力を使ったという認識は全くなさそうだ。
「ごめんね、アレク」
「待ってヒナ、それはどっちのゴメン?」
倒れてゴメンなのか、結婚できませんのゴメンなのか。
「ど、どっちって何と何?」
焦ったヒナをアレクサンドロはじっと見つめる。
「えっと、デ、デートの途中で、倒れて、ごめんね」
あぁ、よかった。
結婚できませんではなかった。
ホッとしたアレクサンドロは「また行こう」と微笑んだ。
街には二つのウワサが広まった。
ひとつ目は「王太子に意中の相手が現れた」。
相手は誰だ、どこの令嬢だ、いつ結婚するのかと、街の重鎮ナイトリーに問い合わせがあったが、ナイトリーは知らないと肩をすくめた。
ふたつ目は「中央公園に行くと怪我や病気が治る」というウワサ。
どんな病気も治るとウワサになり、中央公園には人々が殺到した。
あまりきれいではなかった池は綺麗な水になっており、魚がよく見える。
花もたくさん咲き、こんな綺麗な公園だったなら、普段からもっと来ればよかったと人々は思った。
そして、ウワサはすぐに周辺国、鳥族のプチィツァ国、熊族のミドヴェ国、豹族のレパード国にも――。
「ヴォルフ国の王都、中央公園へ行くと怪我も病気も治るそうです」
実際に骨折が治った果物屋で話を聞いたと豹族の男性はレパード国で報告した。
「身体を何かが通ったような気がしたら治ったと」
「何かが通る?」
意味がわからないとレパード国王は首を傾げる。
「もう少し探ってこい」
「わかりました」
豹族の男性は頭を下げると再びヴォルフ国へと向かった。
「ヴォルフ国の王都中央公園……」
プチィツァ国も数人の鳥族を現地へ派遣した。
侵入は簡単だ。
鳥になってしまえば本物のトリか鳥族かわからない。
鳥族たちはヴォルフ国の王都中央公園を目指して飛んで行く。
「チェロヴェ国の聖人がヴォルフ国にいる可能性が高いな」
ミドヴェ国王は熊族の男性の報告を聞き、情報がつながったと口の端を上げた。
チェロヴェ国がある人物を探しているというウワサを聞いてからずっと探らせていた情報。
男なのか女なのか、情報が錯綜している。
先日様子を探りに行ったが運悪く武官と衝突し、ヴォルフ国の王都へ侵入するのは失敗した。
熊族は匂いがきつく、オオカミとは相性が悪いのだ。
「好条件を出し、ミドヴェ国へ誘え」
「はい」
「金でも王族と結婚でも構わない」
「わかりました」
熊族の男性は一礼すると人族チェロヴェ国の協力者の元へ向かった。
「ヴォルフ国?」
チェロヴェ国の第一王子クロードは熊族から情報を得たという貴族の報告に驚いた。
「王都の中央公園付近にいた者は、怪我や病気が治ったそうです」
治癒能力は珍しい。
偶然という可能性は低いだろう。
「ここに連れて来たらお前を大臣にする」
「ありがとうございます」
すぐに良い報告ができるようにしますと、貴族は深々と頭を下げた。
◇
ヒナは豪華なドレスを前に固まった。
「お兄様? あのこれは……」
侍女三人がテキパキと準備する豪華な白いドレスと装飾品。
ものすごくイヤな予感しかしない。
「急なのですが、アレク様のお父上と、私の父がヒナに会いたいと」
本当に急ですみませんというユリウスに、ヒナは苦笑した。
いや、そこにあるのはギュウギュウに締められるコルセットですよね?
あっちの白いのはくすぐったい靴下ですよね?
なんだか手袋っぽい物もあるし!
「そんな豪華なドレスは似合わないので……、このいつもの姿で……」
顔を引きつらせながらダメ元でヒナが頼むと、ユリウスはニッコリと微笑んだ。
あ、その笑顔はダメですよーっていう笑顔ですね?
アレクサンドロが無茶振りした時によくしている笑顔だ。
ヒナはガックリとうなだれると、自分の部屋へと隠れに行った。
「お美しいです」
「よくお似合いです」
お世辞もありがとうございます!
毎回そんなに頑張って励まして頂かなくても大丈夫です!
色気も何もないぺったんこです!
「手袋をどうぞ」
レースの肘まで長い手袋なんて付けたことがない。
少しチクチクする手袋をヒナははめた。
「お嬢様のお支度整いました」
侍女の一人が声をかけると、こちらも大丈夫ですと、ユリウスの声がした。
豪華な王子っぽいキラキラな服のアレクサンドロ。
銀のタキシードを着たNo.1ホストと、黒のタキシードの優等生の姿は犯罪だった。
ユリウスまで紺の正装をしている。
なぜみなさんお揃いですか?
そのパーティのような恰好はなぜですか?
今からどこへ連れていかれるのですか?
「ヒナ、今日も綺麗だよ」
ヒナの右手を取り、手の甲に口づけるアレクサンドロ。
どこからどう見てもキラキラ王子だろう。
「ヒナは白も似合うね」
アレクサンドロがヒナの右手を離さないので、左手に口づけをするランディ。
いやいや、白が似合うのは銀も着こなすランディの方です。
「キレイです、ヒナ」
ランディと交代し、ディーンも左手の甲に口づけをすると、最後にグッと手を握られた。
眼鏡優等生の黒タキシードも似合いすぎです。
「魂が抜けそうです」
ヒナの変な呟きに、全員が首を傾げた。
ランディとディーンの後に続いて、アレクサンドロにエスコートをされながら廊下を進む。
後ろはユリウスだ。
困った。
逃げられない。
このステンドグラスは庭園の日とは違う。
豪華なステンドグラスがそこら中にあるのだろうか。
大きな扉を通ると赤い絨毯の廊下に。
豪華すぎる装飾、壁の絵も高そう、その花瓶もきっと高級品、廊下で姿勢良く待つ騎士。
なんだか絶対に行ってはいけない所に進んでいる気がする。
「あ、あの、アレク」
不安になったヒナがアレクサンドロを見つめると、大丈夫と優しく微笑んでくれた。
全然大丈夫じゃありません~。
絶対おかしい。
明らかにこのキラキラの廊下に自分がいるのはおかしい。
目の前にはものすごく大きな扉がある。
あれは絶対に入ってはいけない扉だと思う。
段々ガクガクしてくる足。
不安になったヒナはもう一度アレクサンドロを見上げた。
コメント
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やばやばやば!!!!!第19話、最高にエモかった😭💕 ヒナが二日も気絶しちゃったとこから始まって、街中にウワサ広がって各国が動き出す展開、世界観どんどん広がってくのたまらん…!!最後のドレスアップ→キラキラ王子3人の手の甲キスもはや神回では??「魂が抜けそうです」ってヒナの呟きに全員が首かしげるシーン、めっちゃツボったw 次、王様たちとの対面どうなるんだろ…!早く続き読みたいよおおお🌸