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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「そーれっ! そーれっ!」


「やったナ! お返しダっ!」


シンヤとミレアは水を掛け合う。

そのたびにミレアの胸が揺れる。


「くぅ~、楽しいナ」


「だな。こういう遊びも悪くない」


二人は無邪気に遊んでいた。

全裸のままで。


「……ったく。なんなんだよあの二人は」


レオナードは二人を遠目に見てため息をつく。

彼は一人、湖畔に立っていた。

シンヤとミレアは見ての通り二人で水遊びをしているし、彼の本来のパーティメンバー達は少しでも働くために周囲の警戒をしている。


「オレだけ暇じゃねぇかよぉ……」


そんなことをぼやきながら、レオナードは周囲に目を向ける。


「……はあ。オレも水浴びをしておくか。レッドボアとの戦いで、服が汚れちまったからな」


レオナードは服を脱ぎ始める。

引き締まった上半身があらわになる。

シンヤからも一定の評価を得られた、なかなかの体だ。

だが、彼が脱ぎ始めている間に、シンヤとミレアの姿は見えなくなっていた。


「……あれ? もっと奥に行ったのか? ……まあいい。好都合だ」


レオナードは下半身の服も脱ぐ。

こちらはシンヤにも見せていない、大切な体だ。

彼は服を丁寧に畳み、湖へと入って行く。


「……冷たくて気持ち良いぜ」


彼はしばらく湖の中に静かに浸かっていたが、そのうち飽きてきたのだろう。

ゆっくりと泳ぎ始めた。


「……」


レオナードの目が泳ぐ魚達を追う。

透明な湖を自由に泳ぐ姿は、彼には眩しく思えた。

夢中になって魚を追いかけていたレオナードだったが、急に動きを止める。


「おっと。ここが端っこだったのか。これ以上は泳げねぇな……」


残念そうな顔をしたレオナード。


「お前たちも、オレと同じなのかもしれねえな。自由に見えても、どこかで誰かに制限されて……。でも、それでも、この世界では生きていかなくちゃいけないんだろうな……」


彼はそう呟いて、浅瀬に上がる。

そして、ボーッと水面を眺めた。

彼はしばらくの間、そうしていた。

不意に、その水面に影が映った。


「……ッ!?」


レオナードは慌てて視線を上げる。

そこには、赤いイノシシが佇んでいた。


「レッドボアだとっ!? こんな時にっ!」


レオナードは急いで戦闘態勢を整える。

今の彼は全裸だ。

万全の状態でレッドボアを何とか倒した彼にとって、この状況はかなり厳しいものである。

とはいえ、魔力を使えば多少は戦えるし、異変に気づいたシンヤやミレア達が駆けつけてくるはずだ。


そう考えて、レオナードは落ち着いて魔物と対峙する。

だが、レオナードはすぐに思い知ることになる。

こいつの強さがどれほどのものかを……。


「ブモオオオォォ!!」


レッドボアが雄叫びを上げた。

そして、レオナードに向けて突進してくる。


「なにっ!?」


速い!

そう思った時には、すでにレオナードは空高く弾き飛ばされていた。

レッドボアの突き上げをモロに受けてしまったのだ。


「うわぁぁぁ!」


悲鳴を上げながら、必死に手を伸ばす。

掴むものなど何もない。

ただ、空を掴むだけだ。

そのまま、彼は頭から水面に落下する。


「ガハッ!」


衝撃がレオナードを襲う。

全身を強く打ち付けてしまい、意識が飛びそうになるほどの痛みを感じる。

しかし、気絶している場合ではない。

レオナードの目の前には、巨大な牙が迫ってきていたのだから。


「う、動けぇ!」


レオナードは無理やり体を動かし、横に飛ぶ。

ギリギリのところで回避に成功したものの、彼の体はもう限界を迎えようとしていた。


「くそぉ……。もう体が動かねぇ……」


全身を強打してしまったのだ。

立ち上がるどころか、指一本動かすことさえ難しい状況である。


「……オレの人生って、ここで終わりなのかよ。せっかくシンヤ兄貴と出会って強くなったっていうのに。こんなのあんまりじゃねえか」


そうして、レオナードは目を瞑った。

死を受け入れるかのように。


その時であった。

バシャァン!!

大きな水飛沫が上がった。


「大丈夫かっ! レオナード!」


「シンヤ兄貴……」


レオナードを助けたのは、シンヤだった。

彼は異変に気づき、魔力で身体能力を強化して急行してきたのである。


「レオナード、立てるか?」


「無理だ……」


「分かった。俺が背負っていく。しっかり捕まっていろ」


シンヤはレオナードを背負って動き出す。


「すまない……。こんなオレのために……。オレは駄目な人間だ……。一度倒したはずのレッドボアに圧倒されて……」


「それは違うさ」


「え……?」


「よく見てみろ。こいつはレッドボアなんかじゃない」


「何だって……? ……こ、こいつは……」


レオナードは改めて魔物を見る。

その魔物は、確かにレッドボアではなかった。

なぜなら、その魔物はより禍々しい魔力を放っていたからだ。


「どうやら、レッドボアの上位種みたいだな。確か、クリムゾンボアとか言ったか」


シンヤがこの世界に転移してきた日に戦った魔物である。


「上位種……クリムゾンボアだと? そんなバカなことがあってたまるか!」


「いや、これは事実だ。なあ? ミレア」


「そうだネ。あたしもこいつには見覚えがあるヨ」


いつの間にか駆けつけてきていたミレアがそう答える。


「俺はレオナードを背負っている。ミレア、時間を稼げるか?」


「時間を稼ぐ? それは無理ダ」


「そうか……」


かつてのミレアは、クリムゾンボアに手も足も出ずに蹂躙された。

その時の恐怖感が残っているのかもしれない。

シンヤの見立てでは、今のミレアならば問題なく勝てる相手だと思う。

だが、彼女にとってトラウマになっているのなら、仕方がないとも思う。


「なぜなら、あたしが倒してしまうからダ。シンヤは安心してレオナードを守ればいいサ」


そう言うと、ミレアは大きく息を吸い込む。

そして、大声で叫んだ。


「グルオオオォォ!!」


ビリビリとした空気が肌を刺激する。

獣人特有の技、【ハウリング】だ。

魔力を込めて大声を出すことにより、敵を威圧することができる。

さしものクリムゾンボアも、若干の怯みを見せた。


「行くゾ!」


ミレアは走り出した。

彼女とクリムゾンボアの戦いが始まろうとしていた。

魔法の探求者、異世界で無双する ~美少女奴隷と迷宮を探索して、何やかんやで成り上がっちゃうぜ~

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