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「おまえの彼氏は強いのか」 「強かったらどうするんだよ」
「世継ぎを成すために夜伽を命じる」
魔王として世界のすべてを手に入れた余であったが、一つだけ手に入らないものがあった。強い男がいると聞けば拉致して夜伽の相手をさせたが、結局死ぬまで余が身ごもることはなかった。
「何言ってるか分からねえ。弱い男はダメなのかよ?」
「当たり前だ。強くなければ余の後継者は務まらぬ。男なら魔族でも人間でもかまわないが、最強魔王の余に匹敵する強い遺伝子が必要なのだ」
「イカれてやがる……」
なぜか冷え冷えとなった空気の中へ、見知らぬ一人の男が飛び込んできた。顔は並み。わが校の制服を着ているから、同じ高校の生徒のようだ。
「ミク! あの女シメると言ってたからまさかと思ったら、本当にシメてたのか」
「当たり前だろ。彼氏に別の女をかわいいと言われて黙ってられるかよ!」
どうやら余がこの女の彼氏に手を出したというのは濡れ衣だったようだ。
余の前で痴話ゲンカを始めた二人の方に近づいて、男の顔を殴ったら三メートルほど吹っ飛んだ。意識を失ったのかそのまま起き上がりもしない。
「あたしの彼氏に何しやがる!」
「強いかどうか試したのだ。弱すぎて話にならない。あんな男ならいらない。余に取られなくてよかったな」
「ふざけるな! おまえ、もう許さねえ。先輩たちを呼び出して地獄を見てもらうぜ!」
先輩たちが来るまでのあいだに自分たちが余にボコボコにされるという危機感はないのだろうか? でもどうせ暴れるつもりだったし、どうせ暴れるなら相手は歯応えがある方が楽しいから黙っていた。