テラーノベル
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雑誌撮影の合間。スタジオの隅で、岩本照がパイプ椅子に座り、ペットボトルの水を飲んでいた。
そこに、ピンク色の髪を揺らして忍び寄る影があった。
「ひーかーるっ!!」
助走をつけて、佐久間大介が岩本の背中めがけてダイブした。
普通の人間なら椅子ごと転倒しかねない衝撃だ。
しかし、岩本照は違った。
「……おっと」
岩本は水を持ったまま、体幹だけでその衝撃を受け止める。
そして、背中に張り付いた佐久間を振り落とすどころか、自然と後ろに手を回して、佐久間の太ももを支えてやった。
「危ねーな、佐久間。水こぼれたらどうすんだよ」
「えへへ、大丈夫っしょ! 照なら絶対受け止めてくれるもん!」
佐久間は岩本の背中にのしかかり、首元に腕を回して顎を乗せる。
完全なる「おんぶ」の体勢だ。
「……重い」
「嘘つけ! 『佐久間、軽くなった?』とか思ってるくせに!」
「思ってねーよ。……で? 何?」
岩本は口では文句を言いながらも、佐久間を背負ったまま立ち上がった。
そして、まるで亀の甲羅のように佐久間を背負った状態で、スクワットを始める。
「うわっ、揺れる! アトラクションだ!」
「トレーニングの重り代わり」
「扱いひどくない!? 俺、先輩だよ!?」
ギャーギャー騒ぐ佐久間だが、その顔は満面の笑みだ。
岩本の広くて厚い背中は、佐久間にとって世界一安心できる場所。
そして岩本にとっても、背中で騒ぐこの小さな体温は、不思議と心を落ち着かせるものだった。
数回スクワットをした後、岩本はふぅと息を吐いて動きを止めた。
「……満足か?」
「んー、もうちょっと」
「なんだそれ」
佐久間は岩本の首筋に顔を埋め、クンクンと匂いを嗅いだ。
「照、いい匂いする。なんか落ち着くわ〜」
「お前は犬か」
「照の犬ならなってもいいよ〜! ワンワン!」
「うるせぇよ(笑)」
岩本の顔がクシャッと崩れる。
背中に張り付く佐久間の鼓動が、トクトクと伝わってくる。
言葉にしなくても「信頼してる」と伝えてくるこの距離感が、心地いい。
「……ずっと乗ってていいけどさ」
「おっ、マジ?」
「次の撮影、佐久間からだぞ」
「えっ!? 嘘! やばい、メイク直さなきゃ!」
佐久間が慌てて背中から飛び降りる。
岩本はその軽くなった背中に少しだけ寂しさを感じつつ、バタバタと走り去る佐久間の背中を見送った。
「……元気すぎだろ」
そう呟く岩本の口角は、自分でも気づかないほど柔らかく上がっていた。
騒がしくて温かい、ニコイチの通常運転。
岩本照の背中は、いつだって佐久間大介のための特等席として空けてあるのだ。
コメント
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元気いっぱいのさっくんにこっちまで元気もらうわ そんなさっくんが好きなひーくんも健気で可愛い!