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帰り道――
愛空「……こっち……っす……」(ふらつきな
がら指をさす)
知枝「……随分奥ですね」
愛空「……まぁ……」
(やべ……この道……普通の家じゃねぇってバレるか……?)
歩いていくにつれて、周りの景色が変わる
静かで、整った街並み
大きめのマンションが並ぶ区域
知枝「……」(少し周りを見る)
(この辺りは……家賃が高いはずだが……)
愛空「……っは……もうちょい……」
やがて、一際綺麗なマンションの前で止まる
愛空「……ここ……っす……」
知枝「……ここ、ですか」(わずかに驚く)
愛空「……あー……まぁ……たまたまっすよ……」(目を逸らす)
(“たまたま”は無理あるだろ俺……)
知枝「……」(何か言いかけてやめる)
知枝「中まで送りましょう」
愛空「……いや、大丈夫……っすよ……」
フラッ――
愛空「……っ、」
知枝「……説得力がありません」
愛空「……すんません……」
エントランス――
自動ドアが開く
知枝「……」(静かに見渡す)
(やはり、かなり良いマンションだな……)
愛空「……エレベーター……こっち……」
二人で乗り込む
密室
静かな空気
愛空「……」(壁にもたれる)
知枝「……立てますか」
愛空「……なんとか……」
(やば……距離近……)
エレベーターが止まる
部屋の前――
愛空「……ここっす……」(ポケットから鍵を出す)
少し手が震える
カチャ
ドアが開く
知枝「……失礼します」
部屋に入る
広くて、綺麗で、整った空間
知枝「……」(一瞬だけ目を細める)
(これは……“普通”ではないな)
愛空「……あー……その……」(焦ったように視線を泳がせる)
愛空「……親が……うるさくて……一人暮らししてるだけっす……」
知枝「……そうですか」(深くは聞かない)
愛空「……」
(助かった……)
知枝「ベッドはどちらですか」
愛空「……こっち……っす……」
寝室――
愛空「……っ、」(ベッドに倒れ込む)
知枝「無理をしすぎです」
愛空「……すんません……」
知枝は額に手を当てる
知枝「……やはり熱が高い」
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愛空「……ちとせさんの手……冷たくて……気持ちいいっす……」
知枝「……そうですか」(少しだけ視線を逸らす)
一瞬の沈黙
知枝「……水、ありますか」
愛空「……キッチン……に……」
知枝「わかりました」
少しして
知枝「はい、水です」
愛空「……あざっす……」(ゆっくり起き上がろうとする)
グラッ
知枝「無理に起きなくていい」(支える)
愛空「……すんません……」
(近……顔……)
愛空「……」(ぼーっと見てしまう)
知枝「……どうしました」
愛空「……いや……」
愛空「……やっぱ……かっこいいなって……」(ぼそっと)
知枝「……」(一瞬止まる)
知枝「……熱のせいですね」
愛空「……かもっす……」(少し笑う)
水を飲ませてもらう
愛空「……っは……」
再びベッドに横になる
知枝「……少し休んでください」
愛空「……はい……」
(帰る……よな……普通……)
愛空「……ちとせさん……」
知枝「はい」
愛空「……帰るんすか……?」(少し弱い声)
知枝「……」
一瞬、迷う
知枝「……落ち着くまでは、ここにいます」
愛空「……ほんと……っすか……」
知枝「ええ」
愛空「……よかった……」(安心したように目を閉じる)
(……なんだろ……)
(この人いると……安心する……)
静かな部屋
規則的な寝息
知枝「……」(ベッドの横に座る)
知枝「……無防備だな……」(小さく呟く)
(……離れるべきなんだが)
それでも
知枝は、その場を離れなかった