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19時だいだからギリセーフよな、?
「ねえ、それマジ?」
朝、教室に入った瞬間、なんか空気が違った。
ざわついてる。
でも、いつもの雑談じゃない。
「昨日さ、他のクラスのやつから聞いたんだけど」
誰かがスマホを見せながら話してる。
「前の学校で問題起こしたってやつ、あれ本当らしいよ」
(……は?)
足が止まる。
嫌な予感が、当たる音がした。
「しかもさ」
別のやつが続ける。
「結構デカい話だったっぽい。停学とか」
“停学”
その単語だけで、空気が一気に固まる。
「やっぱヤバいやつじゃん」
「だから言ったじゃん」
笑い混じりの声。
でも、もう完全に“確定”のトーンだった。
視線が、なんとなく一箇所に集まる。
教室の後ろ。
いるまは、いつも通り席に座っていた。
何も聞こえてないみたいに、
何も変わってないみたいに、
ただ前を見てる。
(……違うだろ)
そう思うのに、
昨日聞いた話と、
今の空気が、
頭の中でぶつかる。
「おはよ」
とりあえず、声をかける。
いつも通りに。
「……ああ」
短い返事。
それだけ。
でも――
なんか、少しだけ距離がある気がした。
「なあ」
小さく声を落とす。
「今日、なんかあった?」
いるまは、一瞬だけこっちを見て、
すぐに目を逸らした。
「……別に」
それだけ言う。
(嘘だろ)
でも、それ以上は何も言わない。
チャイムが鳴って、
授業が始まる。
先生の声は、ほとんど頭に入ってこなかった。
視線が、勝手に後ろを気にする。
周りの空気も、
妙に静かで、
でも、重い。
休み時間。
「なあ」
また声をかけられる。
今度は、昨日と同じやつら。
「聞いた?」
「……何を」
わかってるけど、聞く。
「あいつ、停学くらってたって」
はっきり言われる。
「理由もさ、結構やばいらしいよ」
「だから関わるなって言ったじゃん」
「お前もさ、ちょっと距離置いた方がいいって」
その言葉に、
一瞬だけ、迷いがよぎる。
(もし、本当だったら?)
昨日の言葉が、頭に浮かぶ。
“結果だけ見れば、そうなる”
(……いや)
「……だから?」
気づいたら、口に出てた。
「は?」
「それ、本人から聞いたのかよ」
沈黙。
「いや、でも他のクラスのやつが――」
「それ、また噂じゃねぇの?」
少しだけ、空気が揺れる。
でも、すぐに戻る。
「でも実際、停学は事実なんだろ?」
誰かが言う。
……それは、否定できない。
言葉が詰まる。
そのとき。
「……本当だよ」
後ろから、声がした。
振り向く。
いるまだった。
教室の空気が、一瞬で凍る。
「停学になったのは事実」
淡々とした声。
感情は、ほとんど乗ってない。
「理由も、だいたい合ってる」
誰も、何も言えない。
「だから」
少しだけ、間が空く。
「関わらない方がいい」
それだけ言って、席に座る。
……何それ。
それで終わり?
「……ほらな」
小さな声が、どこかで聞こえる。
空気が、完全に決まる。
“やっぱりそういうやつだ”って。
(……違うだろ)
そう思うのに、
何て言えばいいか、わからなかった。
何が正しいのか、わからなかった。
――そのまま、チャイムが鳴る。
何も変わらないまま。
でも、確実に何かが壊れたまま。