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古流斬
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87
チタコロ
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第4話「最後の命令」
夜のビルの屋上。
街の明かりが静かに輝く中、古流斬とマフィア幹部・ザッドは向かい合っていた。
風だけが二人の間を吹き抜ける。
⸻
ザッドは静かに口を開く。
「古流斬。」
「……いや、黒のランと呼ぶべきか。」
その言葉に、古流斬の表情がわずかに曇る。
「その名前で呼ぶな。」
ザッドは小さく笑った。
「そうか。」
「やっぱり、お前はまだ捨てきれていないんだな。」
⸻
ザッドは剣を抜かず、古流斬を見つめる。
「俺は最初から気付いていた。」
「お前は誰も殺していない。」
古流斬の目が少し見開く。
「……何だって?」
「報告書、現場、血の量……全部不自然だった。」
「お前は殺したように見せていただけだ。」
しばらく沈黙が流れる。
「……それでも俺は黙っていた。」
「どうしてだ。」
古流斬が問い掛ける。
ザッドは夜空を見上げた。
「昔の俺を見ているようだった。」
「家族を守りたくて、必死だった頃の俺をな。」
⸻
やがてザッドは剣を抜く。
「だが、ボスの命令は絶対だ。」
「俺は幹部として、お前を倒さなければならない。」
古流斬もナイフを握る。
「……分かった。」
二人は同時に地面を蹴った。
⸻
剣とナイフが激しくぶつかる。
火花が夜空へ散る。
ザッドは圧倒的な力で押し込む。
古流斬は速度と技術で受け流し、屋上を縦横無尽に駆け回る。
互いに一歩も譲らない。
長年積み重ねた師弟の技が、真正面からぶつかり合う。
ザッドは笑う。
「強くなったな。」
古流斬も静かに笑みを浮かべた。
「あなたが鍛えたからだ。」
その一瞬だけ、二人は敵ではなく、師弟だった。
⸻
その隙を古流斬は逃さない。
ワイヤーが夜空を切り裂く。
ザッドの剣が弾き飛ばされる。
次の瞬間、ナイフが首元へ突きつけられていた。
勝負あり。
⸻
ザッドは静かに目を閉じる。
「やれ。」
しかし古流斬はナイフを下ろした。
「殺さない。」
「俺は……もう誰も殺したくない。」
ザッドは苦笑する。
「最後まで甘い奴だ。」
「……その甘さを、失うな。」
古流斬は振り返らず、その場を去っていった。
⸻
その直後。
ザッドはボスの前へ連れて来られる。
ゴッド、デッド、グッドもその場に集まっていた。
ボスは静かに命じる。
「古流斬を連れてこい。」
ザッドは黙ったまま立っている。
「聞こえなかったか?」
「……できません。」
その一言で空気が凍りつく。
ゴッドとグッドは息をのむ。
ボスの目が細くなる。
「理由を言え。」
ザッドは迷うことなく答えた。
「俺は……あいつを殺したくありません。」
「もう、家族のような存在を失いたくない。」
沈黙。
そしてボスは静かに笑う。
「そうか。」
「なら、お前も不要だ。」
ボスは右手をゆっくりと掲げる。
能力――破壊。
空間そのものがひび割れ、ザッドの身体を飲み込んでいく。
「ボス……。」
崩れ落ちながらも、ザッドは抵抗しなかった。
最後に思い浮かべたのは、幼かった古流斬の姿。
料理を「ありがとう」と笑って食べてくれた日のこと。
剣を初めて握った日のこと。
そして今、立派に成長した姿。
ザッドは静かに微笑んだ。
「古流斬……。」
「生きろ。」
その言葉を最後に、ザッドの身体は光となって消えていった。
師としての願いだけを、この世界に残して
コメント
1件
第103話、読み終わりました……いや、もう涙腺がゆるみました。 ザッドが、ずっと古流斬を守るために黙ってたんだなって思うと胸が苦しいです。「生きろ」って言葉が、師としての最後の愛情そのものじゃないですか。甘いままでいろって言ったザッド自身が、一番甘くて優しかったんだなあ……。いい話でした、ありがとうございます。