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「ところで寮に持ち込む荷物はそれだけか?」
「ええ、何か問題が、ファレル先生?」
「荷物の量が明らかに少ないと思ってな。」
「魔法である程度この鞄に入る荷物の量を増やしてはいます。もっとも、ものを入れすぎると使い勝手が下がるのも事実です。少ない荷物であれこれやりくりするのには慣れているので、これだけで済みました。」
「随分典型的な上位貴族とは違うんだな。」
「だからアカデミーに途中で入学して、ファレル先生と今ここで、話しているのだと思いますよ。ところで寮はどこでしたか?」
「上位貴族向けの寮は目の前の建物だ。寮の管理人は合計4人。最近そのうち1人が個人的な理由で辞めて新しい人員が採用されたらしいな。」
上位貴族の別邸と比べたら小規模な建物、それでも平均的な王都やアルヴィアンの住居よりはかなり大きな建物、その全てが侯爵家以上の家の出身者に対して割当られている。
「そうですか。ところで思ったより壮大な建物ですね。」
「上位貴族の人間の大半は逆の反応を示す。やっぱりジョー・アルヴィアン、変わっているな。」
「ええ、ファレル先生。お互い仲良くできそうですね。歴史的に質素倹約に重きをおくアルヴィアンは別邸も本邸もそこまで贅をこらしてはいません。歴史的に王都での社交に重きを置く家でもありませんでした。だから派手なものが好まれなかったのかもしれませんね。」
実際にアルヴィアンの私邸は小規模であると言える。アルヴィアンの王都にある邸宅は平均的な規模であると言え、伯爵家の中にはもっと壮大な別邸を持つ家もある。
もっともアルヴィアンは私邸として使われていない建物を多く保有していることでも知られていて、それらは騎士団や商会の拠点として使われていたり、市民向けの住居や酒場であったりと様々だ。
アルヴィアンは私邸ではない建物を多く保有している家であるという事実は確かに多くの上位貴族には理解できないだろう。アルヴィアンは色々な顔を持つ。つまり最も経済的に繁栄した地域を支配する貴族としての顔が光なら、その光にふさわしい影も存在するということだ。そしてアルヴィアンの経済的繁栄の結果として所有される、多くの住居や建物はアルヴィアンの影を維持し、隠蔽するためには都合がいいのも事実である。