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第2話琉生のクラス
[えー、では教科書20ページを開いてください]
[この問題を……__]
桜がもう散る
窓際席の俺はぼーっと校門前の桜を見つめる
毎朝あそこを通ると、入学式のときを思い出して少しどきっとしてしまう
琉生は今何してるかな…?
なんの授業なんだろう…
今度クラス覗きに行ってみようかな…?
なんて、授業中とは思えないほど彼のことを考えてしまう
これを世間一体では恋と呼ぶのだろうか
余りにも自分には無縁で、関係のないことだと思っていたが、こんなふうに実感することもあるのだと思った
俗に言う少女漫画ではもっとときめき溢れる恋の瞬間があるのだろうけれど、俺にはない
ただただ、普通の俺が普通の彼に恋をしただけだ
これが、男女ではないということだけを除いて
これは普通ではないとわかってる
俺はゲイではないけれど、琉生は別だ
中学のときは普通に彼女もいた
でも、それも相手からの一方通行で高校に上がるときに別れた
なんかしっくりこなかったのだ
あれは恋ではなかったと断言できる
今この瞬間を恋と呼ぶならば、俺は全力で琉生に恋をしていると断言できる
今すぐにでも言いたい『好き』
今すぐにでも伝えたい『愛してる』
これからも言い続けたい『大好き』
全て全て、言えるわけないのに…
こんなにも恋が苦しいものだとは知らなかった
でも、いつかいつかって期待してる俺がいる
我ながら本当に馬鹿だ
__ず…さ、
し……さん
[清水さん!]
先生の声がぼーっとした頭に響く
『え、!?なんですか…?』
はぁ…、と先生がため息をつく
[ここの問題を答えてください]
[それと、授業中くらい集中してください]
うざってー…、って思ってしまうのは次の昼休みが待ち遠しいからか
わからない
俺はごにょごにょ言うばかりで、問題の答えを言えず、昼休みに職員室に呼ばれた
『ちぇ〜…、琉生と昼飯の約束してたのになー』
『遅れちまったじゃねぇか…』
俺はそう小言で言う
琉生はまだ居るかな
待っていてくれてるかな…
色々な心配事が頭をよぎる
俺はいつも昼食を食べている西階段までの最短ルートを通る
ここはあまり使われていない旧校舎の渡りだ
星嵐学園は、新校舎と普段は使わない旧校舎が渡り廊下で繋がれている
使うときと言ったら、理科の少し危険な実験や、こうやって抜け道で使う時
他学年のフロアには立ち入り禁止だから、階段上り下りするのがだるい人などが使う
俺もその一人だ
一人静かな廊下を歩く
カツンカツンと、廊下を歩く音だけが一つ聞こえる
…の、はずなのに
何故か人の声がする
近くからだ
声のする場所は、旧2年A組のクラス
右の廊下を曲がれば、目指している西階段へと続く道だ
そもそも、ここで留まる人はそうそういない
なんだなんだと、聞き耳を立ててみる
すると、思いがけない声の主がいることに気づいた
「や…、やめてください…、!」
琉生だ
何故、こんなところに…?
琉生は面倒だが階段を上り下りするようなタイプの奴だ
ここにいる理由がない
すると、続けて聞き覚えのない声がする
〔お前、前々からうぜぇって思ってたんだよなぁ〜〕
〔だから躾けてやろうと思ってよぉ、w〕
〔嬉しいだろ?w〕
ギャアギャア騒がしい声がする
ゲラゲラ笑いやがって
琉生は怖がってるに決まってんだろ
何が嬉しいだ
馬鹿にも程があるだろ
なんて、怒りを顕にしたいがぶつけることもできず、耐える
「躾けって…、何をするんですか…、!?」
驚いたような、怖がるような、恐ろしさを含んだ声の震えが教室の外まで聞こえる
今すぐに突っ込んでいきたいが、証拠を取らなければいけない
少しだけ我慢してくれ…
〔なぁに、ちょーっと耐えてくれるだけでいいんだよ〕
〔俺達のストレス発散に付き合ってもらうぜ?w〕
壁の向こうでドンっという音が聞こえた
廊下壁のヒビから教室の中をスマホで撮っていた
その映像には、琉生が殴られた様子が容易にとらえられた
映像からは、つけている名札から同じ学年で琉生のクラスの生徒だと分かることもできた
その瞬間ぶちっと何かが切れた音がした
ケラケラと、意地悪く笑う奴らの後ろから声をかける
『おい』
ドス黒く、ド低音で
今までに出したことない声だったと思う
怒りを含んだその声に奴らが怯えながら振り返る
『琉生はおめぇらの道具じゃねぇんだよ』
睨見つけて、上から物を言う
今は冷静な俺はいらない
怒りを顕にした俺は強烈に怖かったようで、奴らは逃げていく
その背中に、
『証拠はある』
『明日をお楽しみに』
と、軽く微笑んでやる
後ろでぶるぶると震える琉生に自分の学ランをかけてやる
『もう大丈夫だ』
『あいつらはもういないよ』
先程とは打って変わる声色に自分自身でも驚く
顔を上げた琉生の顔は、涙ぐんでいて酷い顔だった
それほどに怖かったのだろう
仕方あるまい
そのまま、腕のなかに抱き寄せる
ゆっくりとゆっくりと、琉生の頭を撫でる
どうやら安心したようで、泣きながら眠りについてしまった
どうやって運ぼうか悩ましいところだったが、人目につかない所までは、抱き抱えて運んだ
保健室まではおんぶをしたが、どちらも密着が激しく、心臓に悪すぎた
今は保健室のベッドで寝ているが、まだ心臓がバクバク言っている
早く収まれと、心の中で願う
幸い、殴られた箇所はそこまで酷いものではないと先生が教えてくれた
先程の証拠も先生方に提出済みなので、明日が楽しみだ
何気に、琉生の寝顔を見るのは初めてだな…
なんて考えたいたら、顔が熱くなった
でも、ただ今なら何をしても大丈夫なんじゃないかって魔が差す
琉生の頬に触れる
思春期の男子高校生とは思えないほど綺麗な肌をしていた
その肌に触れながら、指を滑らせる
黒く長い綺麗な前髪を分け、愛おしそうに見つめる
保健室の窓から赤い光が差し込み、俺等を照らす
身を少し屈め、琉生の顎をくいっと上げる
ここからは本当に無意識だった
紅の唇が触れ合い、軽く音を立てる
気づいた時には遅かった
『あ…、』
一瞬でゆだったタコのようになってしまう
『あ〜…ぁ…』
琉生の顔が見られない、まだ起きていないようで安心したが、流石に踏み込みすぎた
(理性を保て…)
心の中で唱える
理性より欲望が勝ってしまった時、俺等は対等な友達でいられなくなるかもしれない
それだけは嫌だ
だから今は、
『このままで、居ていいんだよな…?』
ぽつりと言う
「ん…、」
琉生が寝返りを打つ
『あ、起きたか?』
「ん…清水…?」
寝ぼけ眼の眼鏡をしていない琉生の姿は無防備すぎて、理性の天秤が揺らぐ
本当に、俺は恋をしているのだと実感させられる
『そうだよ、腹大丈夫か…?』
「ちょっとまだ痛むけど…、そこまでじゃないから大丈夫…」
まだ眠そうに目を擦る
「清水…」
琉生が俺の顔近くに寄ってくる
寝ぼけているのか、もしくは眼鏡がなくて見えないのか…
『ど、どうした…?』
不用意に近づかれると理性を保てる自信がないため、目を逸らす
「ありがとぅ……」
そう一言だけ言って、琉生は俺の膝の上で二度寝した
『はぁぁぁあ……』
本当に前のような警戒心の無さが逆に俺にとってはキツくなる
嬉しいのか嬉しくないのか、わからない
そして今回で分かったこと
俺は最後まで理性を保てる自信はない
いつか本当に押し倒してしまいそうで怖い
琉生は見た目通り力も弱い
対して、俺は運動部だから力も強い
手加減が大事だ
だから、これからは一線を引いた距離で
理性を保てる距離感で行こう
…と思いつつ、膝の上で寝ている琉生を見て、また深いため息が出たのだった
次回第3話⇒無意識
コメント
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おほほほほほほ いいぞ〜もっとやれぇ!笑