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#執着
さぶれ
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あおい
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ruruha
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“そんなん貰われへん!”と、拒む桜子に強引に帰りの足代を押し付けて、そのまま桜子を見送った竜一はご機嫌で塁が待つ事務所へ帰ってきた。
「兄貴!只今戻りましたぁー!」
「おう、えらい遅かったのう。回収にでもまわってたんか?」
一人、事務所のPCで回収リストの整理をしていた塁。
ご機嫌で帰ってきた竜一の様子をチラッと横目で確認してまたPCに目線を戻した。
「え?いやぁ…その色々ありまして…。」
「なんや色々て。 またどこぞの女に現抜かしとったんか。」
「いやぁ…そないな事やなくてぇ…。わしは桜子ちゃんとその…。」
「桜子?やっぱり女やないか。そんな事してる暇あったら未回収の銭、一件でも多く回収してこんかい。」
「いや!桜子ちゃんはさっき事務所に来てた後輩の借金肩代わりしたクラブの女の子ですやんか!あの後、外でばったり会うたんですよ。」
「さっきの女か。ほんであの女の残りの借金、ちょっとでも回収できたんか?」
この 言葉尻だけを捉えればただ桜子を追い詰めたいだけのように聞こえる物言いの塁。だが、その真意は自分がいるこの世界、闇の業界に桜子を長く関わらせたくないという無意識の拒絶心。 そしてあの時、何故、桜子が後輩ホステスの借金の肩代わりをするという無謀な行為を許可してしまったのか… 甘い判断を下してしまった自分への悔いから出た言葉だった…。
「兄貴…それはなんぼなんでも無茶ですて…。」
「何が無茶や。ほんだら女に現抜かしてたのと同じやないか。」
「あ、確かにぃ……。」
「しっかりせんかい。そんなんで金貸しが勤まると思っとるんか。しばらくあの女から目離さんとけよ…。」
普段の塁ならここまで執着しないはずの回収案件にもかかわらず竜一を見張らせる徹底ぶり。 これも塁の桜子への無意識の執着心…。
突き放したい…
でも気になる…
まさに思春期の青年が陥るあの不安定な精神状態そのものだった。
「あ、兄貴………。」
「なんや?」
「それ本気で言うてるんですか…?」
「どういう意味や?」
「桜子ちゃんは兄貴の同級なんでっしゃろ?兄貴もあの子がどんな子か分かっとるはずやないですか!人の借金わざわざ肩代わりするような子が逃げるとでも思ってはるんですか!?」
「ドアホ!2人で何話したか知らんけどなぁ、同級生やろうが身内やろうが親友やろうが、裏切る時は裏切るんが人間や!お前もその事、 今までの取り立てでよう分かっとるはずやろが。裏切られた時の事まで考えて動くんが金融屋や。 何遍言うたら分かるんじゃ!」
「で、でも…!」
「竜一!お前しばらく事務所に顔見せんでええぞ。」
「えぇ!?…そんな!」
「ワシが教えてきた事何も分かっとらんやないか。いっぺん頭冷やせ。」
「そんな!これからはちゃんと…!」
「こんな事で情に絆されて、借金の回収もできひん人間に金融屋の才覚なんぞあらへん。わしらお遊びで銭貸してるんと違うんや。一回でも舐められて顔に泥塗られたら終いの生業なんや!その事もういっぺんよう考えろ。今日はもう帰れ。」
塁のいつもの注意とは違う怒り方、口調に本気で怒らせてしまった事を覚った竜一。
「 ……。頭冷やして出直してきます…ほんまにすんまへん兄貴。」 そう言って竜一は塁 に頭を下げ、肩を落としながらトボトボと事務所をあとにした。
ガチャ…
バッタン………。
「はぁ…。」
塁はどうしたものかと深くため息をついた。
一方、こっぴどく怒られた竜一はミナミの街を肩を落として歩きながら自省していた。
“確かに借金返してもらわなあかん相手にうなぎ奢るのはさすがにおかしいかぁ。 今までも同じようなことやらかしてきたもんなぁ…。 逆に鬼と呼ばれてる人がワシの事をこれまで大目に見てくれてたんが奇跡なんか…? そうや!ワシは兄貴に見初められた男なんや。ここでへこたれてたあかん!ちょっとでも良い客見つけて 兄貴に認めてもらわんと! よっしゃー!”
自分の都合の良い様に勝手に話をすり替え解釈するスーパーポジティブマインドの竜一。 この持ち前の切り替えの早さで生き抜いてきたと言っても過言ではない。 塁も竜一のそういう良さを見抜いていたから、多少の失敗も大目に見ていたのだ。
だが、今回は違った。
“でもさっきの兄貴、妙にムキになってるように見えたなぁ…。 桜子ちゃんも全額では無いにしても約束通り銭持ってきてたし、利息分も不足してる訳やあらへんし…。 そない信頼失うような事してるようには思えへんのやけどなぁ。 兄貴があんなにムキになるという事はもしかして… 桜子ちゃんとわしが2人きりで会ってた事に… 妬いてんのかぁ………!?”
遂におかしな妄想を始めた竜一。 妄想を広げニヤつきながらミナミの街を歩く竜一。それは不審者以外の何者でもなく、その様子に周りを歩く人々は怪訝な顔をして少し距離を空けて通り過ぎていった…。
当の本人はそんな事は露知らず。
“おー?兄貴にも遂にロマンスかぁ? アカンアカン…ワシがこういうくだらん妄想ばっかりしとるからいつまで経っても成長せんのや。 そやけど、兄貴も兄貴で銭のことばっかり考えすぎなんや。 口を開けば”銭やぁ、借金やぁ、銭回収や”て…。 もっとこう女の繊細な乙女心いうの分からんと兄貴も漢としての甲斐性ってもんが…。 ん?なんか今寒気したな…。もしかして兄貴に勘付かれとるか? おーこわ!やめよやめよ!とりあえず、帰って寝るか。”
結局あんまり反省していない竜一であった。
一方、塁は事務所でひとしきりの仕事を終え一服していた。
カチッ
シュボッ…
「ふぅー…。米原 桜子…。」
その名前を呟きながら、塁は小学生の時の桜子との記憶を思い出していた。
頑固で負けん気が強いその性格は小学生の頃から全く変わっていない。
むしろ小学生の頃よりその性格が強くなっているような気さえする。
「ふっ…、ややこしい相手と再会してしもたもんや…。」
塁は桜子の小学生の時の姿と今の姿を重ね、あまりにも変わっていない桜子の姿に呆れたように一つ微笑を浮かべ煙草をふかした…。
桜子との2人だけの思い出… そして、何もかもを失い絶望の底に叩き落とされた記憶…。 2つが綯い交ぜになって、塁の心の奥底にしまい込んだ傷跡をチクリと疼かせたのであった。
コメント
1件
え〜!!今回もアツかった😭💕 塁さんの「突き放したいのに気になる」ってツンデレすぎん?!竜一がおかしな方向に妄想してるの笑ったwww「妬いてんのか〜」ってニヤつくの絶対違うけど、でもでも…小学生の頃の桜子ちゃんと重ねて微笑む塁さんにエモすぎて胸がギュッてなったよ…!2人の過去が気になりすぎる〜!!次回も楽しみにしてるね🌸