影山 視点。
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生まれつき、俺は耳が聞こえない。
だから、からかわれる事もある、気味悪がられる事もある。
でも、別に、どうでもよかった。
バレーがあれば。
物心ついた時から音がきこえなかった。
親はホワイトボードで文字を書きながら色々なことを教えてくれた。
手話を習いに行ったり、補聴器を買ってくれたり、俺に尽くしてくれていた。
でも、近所では、あることないことが噂になっていた。
噂は尾ひれをくっつけながら、どんどん広がっていった。
スーパーに買い物に出かける時も、冷たい目で見てくる。俺たちを見ながらコソコソ何かを言っていた。
母さんは必死に耐えていた。
俺は、夜中に一人で泣く母さんを見たことがある。
とても苦しそうで、俺も苦しかった。
母さんと父さんは耐えられなくなったらしい。
俺を祖父の所へ置いて行った。
胸が痛かった。心に穴が空いたような感覚がずっと治らなかった。
それからあまり笑わなくなった。
何をしても楽しくなくて、悲しくなかった。
ただ、心に穴が空いた感覚だけしかなかった。
そんな俺を心配してか、祖父(一与さん)は、バレー教室に連れて行ってくれた。
身長が皆デカくて正直ビビった。
でも、皆とても優しかった。
俺が耳が聞こえないからといって、
嫌な顔ひとつせず丁寧に動きだけで教えてくれた。
とても楽しかったと思った。
こんな感覚は久しぶりで、もっとバレーがやりたいと思った。
バレーをしている時は、穴が空いたような感覚は不思議と感じなかった。
小学校では、
耳が聞こえないことがきっかけとなり、虐められるようになった。
目に見える嫌がらせをされた。
ハブられたり、物を壊されたり、上履きを隠されたり、教科書いっぱいに悪口を書かれたり。
でも不思議と何も思わなかった。
もう、この頃から俺の心は死んでいた。
コメント
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つ…続きを………続きをくれぇーーー!
続き楽しみです