「すぅ…すぅ…ん、むにゃ…」
中に入っていたのは黒猫だった。
「え…なんですかこの毛玉…」
『毛玉では無いぞ?猫と言うのじゃ』
黒猫は気持ちよさそうに寝ていた。
「猫…なんですか?」
ロノにこやつは猫という事も教えた。
『どうしようかの…?』
あの屋敷は動物飼えるのか…?という疑問があった。
私が住んでいた神社も動物は飼えたとしても…いつか 人に追い出されていた。
「………食べません?」
予想外の答えに私はロノの方を咄嗟に見た。
『な…何故じゃ!こんな可愛いのに…』
猫が丸焼きにされて食べられる図など…
考えただけで気分が悪くなる。
「す…すみません……じゃあ飼うんですか?」
『!?飼えるのか!』
そう言った時。
「にゃ…あれ…ここはどこですか?」
黒猫が起きた。
「猫がしゃべったぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
そう言って腰を抜かすロノと反対に
『ほう…お主神か?』
好奇心旺盛の神がいた。
「僕は神様ではないですけど…」
少し肩を落とした。
この世界にも同じ神がいた方が面白いからの…。
『じゃあ何故話せるのじゃ? 』
「うーん…分かりません」
分からないのか…記憶喪失か?
と、思った。
「普通猫って喋んのか…?」
疑問が絶えないであろうロノ。
「そうですね…普通猫は喋りませんよね…」
と、矛盾した答えを言う黒猫。
『………とりあえずルカスとかに見てもらうか?』
ルカスなら何とかしてくれるだろう。
ロノもそう思ったのか
「そうですね」
と、苦笑いした。
屋敷に着くとベリアンが待っていた。
「お帰りなさいませ…って…ロノ君その猫ちゃんは?というか…主様その耳は?」
『鳩が豆鉄砲食らったような顔して…まぁとりあえず話したい事があるのじゃ』
珍しいベリアンの表情に少し微笑みながらも…
食堂へと足を進めて行った。
「あの…まずは…」
おどおどするロノを見て吹っ切れたルカスが
「まず主様の耳の事から教えてくれるかな?」
と余裕そうな表情で言った。
ロノがこれまでの経緯を説明する。
「なるほど…そんな事が」
と、真剣な表情のベリアン。
『…………ここからは私が詳しく教えた方が良いか?』
「はい、お願いします」
と、言うのはフルーレという執事。
私が口を開き執事達は私をしっかりと見ていた。
教えたのは
私が狐の神の子…まぁ稲荷の娘だという事。
信仰によって力が強くなるということ。
そして…。
母様が亡くなったという事も教えた。
「……なるほど…そんな過去があったのですね」
極めて冷静に聞いていたのはルカスだった。
「それで…天使が一瞬で倒れたのか…」
と、納得するロノ。
「神様って…すごいですね」
同じく納得するフルーレ。
そして…。
「信仰……。」
と、考えるベリアンがいた。
『憶測じゃが…お主ら執事が私の事を主と言い慕うのは信仰のうちだと思う』
実際…今も体が軽い。
……………そんな重い空気になっていたその時。
「ロノさーん!」
と、元気な声が聞こえた。
「うわっ!?もうささみ食ったのかよ!?」
ささみ…?と思いロノに聞くと…。
「さっきの猫にささみをあげてたんですよ」
あぁ…なるほどと思った。
「次は…この猫ちゃんの事ですよね」
と、話題を切り替えるベリアン
「……どうしましょうか…屋敷で猫とか飼えないですし…」
悩んでいるフルーレ。
と、そんな時に
「ぼ…僕を執事として働かせてくれませんか!」
と、黒猫は真剣な表情で言った。
「はぁ…?」
と、納得出来てないような声で言うロノ。
「いや…いいかもしれないよ?」
と言うルカス。
「何より…主様の決定が最優先ですから」
と言うベリアン。
「そうですね!」
すぐに納得するフルーレ。
『す…すぐに決めて良いのか?』
こんなにも話がとんとん拍子で進むので少し驚いた。
「お願いします…!」
と言うベリアン。
『………働かせても良いぞ』
実を言うと…少し動物を飼いたかったという願望もあった。
「いいんですか…!」
と言う黒猫。
「ふふ、よろしくね猫ちゃん…うーん」
と、困ったような表情を見せるルカス。
「どうしましたか?ルカスさん」
と言うベリアン。
「いや…いつまでも猫ちゃんだと…さ?」
あぁ名前か
と、思った。
確かにこの黒猫には名前が無いのう…拾って来たから。
と、今更思った。
「ん?首輪になんか書いてますよ?えっと…」
「M…UU…ムー?」
名前を教えてくれるロノとフルーレ。
『ムーというのか!』
いい名前だ。
「なるほど…僕はムーというのですね!」
「分かってなかったんだ…」
と、ツッコミを入れるフルーレ。
同時に笑いが込み上げてきた。
「それでは…主様もう遅いですし…」
『あぁ分かった。』
と言い…この日は解散した。
その日の夜は久方ぶりに…
よく眠れた。
コメント
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今更だけど神さんどんな見た目してるのかすんごい気になってきた。(唐突)