早朝。私は日課の妖術の練習をしていた。
私とて流石にちーと?級に強い訳では無い。
ふと、屋敷の方を見る。
『…………屋敷を壊すと流石に色々面倒になりそう…じゃな』
と呟きその場を後にした。
練習場に選んだのは屋敷近くにあった森だ。
基礎の妖術を少し使った後。
気分が良かったので…。
…………………………威力が強過ぎる妖術を数回使ってしまった。
……………私の悪い癖である。
『はぁ……後は元通りにするだけか』
と言った瞬間。
何か人の気配を感じた。
だが…不思議と警戒はしなかった。
木の影から出てきたのは…。
優しそうな男だった。
「あれ…?もしかして主様?」
と笑顔で問う。
『………そうじゃが…お主は誰じゃ?』
そう私からも問うと
その男はしゃがんで
「ベレン・クライアンだよ」
と少し低い声で言った。
クライアン。
どこがで聞いたような………。
『…!お主ベリアンと面識はあるか?』
咄嗟にベレンの瞳を見て言う。
「ああ、ベリアンとは…血は繋がってないけど兄弟なんだ。」
兄弟…。
私は何故かベレンの瞳をまだ見つめていた。
「主様…そんなに見つめたら…ベレン兄さん照れちゃうかも」
そんな余裕のある笑顔で見つめ返され
私は逆に照れてしまい
『き…今日はこれで切り上げるとしよう…!』
と言い
その場を走り去った。
屋敷に帰った時にはもう外は明るかった。
「主様…お外に行っていたのですね」
これまた優しい表情で言うベリアン。
そういえば執事に外に行っていた事を言っていなかったなと思い
『…………心配させてしまったのなら…すまなかった…』
耳が垂れる。
私がこれ程気にかけた人間は
記憶の中にもあまりいない。
「!……大丈夫ですよ、ね?」
と言って私を優しく抱きしめる。
そして同時に私の頭を優しく撫でる。
「謝らないでください主様」
まるで泣いた子供を慰めるように
ベリアンは優しく撫でていた。
………もう少しこの優しい空気に浸っていたい…。
そう思った時。
「主様!少し話したい事が………」
……………フルーレがやってきた。
「ふ…フルーレ君!?」
ベリアンも動揺している。
「………あの…これってどういう状況ですか?」
困惑しているフルーレに
『………すまぬが…先に私の部屋に行っておいてくれ…後で訪ねる』
と言った。
「す…すみません主様…急に抱きしめてしまって…」
と謝るベリアン。
『大丈夫じゃ』
正直とても癒された。
『……ふふ、実を言うとなもっとこの空気に浸っていたかったのじゃ』
私が思っていた事をベリアンに言うと
「……え?……ふふ、そうですか」
一瞬動揺した表情を見せたが
またいつもの優しいベリアンに変わった。
『では…またあとでの』
と言って手を振った。
部屋に行くと
フルーレが待っていた
『すまぬ、遅くなってしもうたか?』
そう聞くと
「そんな事ないですよ」
と綺麗に笑った。
『それで…何か用件があるのか?』
と問うと
「あの………採寸をしてもよろしいでしょうか?」
と言うフルーレ。
ああ…採寸か。と納得すると
『良いぞ好きなだけやれ』
と了承した。
「ありがとうございます!」
そう言い採寸が始まった。
『採寸…ということは服を作るのか?」
ふと、思い採寸中のフルーレに言った。
「それもありますけど…データを取っておきたくて」
と言いながら手早く採寸を終わらせる。
「次は…ムーもやっておかないと…」
と言うフルーレの表情はとても輝いて見えた。
『あ、そうじゃフルーレ少し頼みがあるんじゃが…』
そう言い私はフルーレに耳打ちをして情報を伝えた。
「!なるほど……分かりました!」
と言ってムーを探しに行った。
『………上手く伝わってると良いのじゃが…』
そう呟き
今日を終えた。
次の日。
「主様出来上がりました!」
と言って渡してくれたのは
私の毛の色より少し濃い
灰色のワンピースだった。
『上出来じゃフルーレありがとう』
そう言うと
「俺の方こそ主様の期待に添えて良かったです!」
と笑顔で言った。
「では…お着替えのお手伝いをしますね」
と平然のように言った。
私が住んでいた現代では
即お縄だろう。
だが私はそんなぷらいばしーとやらにはあまり気にしないタイプなので…。
『ああ、よろしく頼むな』
普通に了承した。
最後にリボンやらカチューシャやらチョーカーを付け…
着替えを終えた。
「わぁ…主様!よく似合ってますよ!」
とキラキラした顔で言うフルーレ。
『そうか…褒め上手じゃのフルーレ』
率直な感想を言うと
「ふふ…ありがとうございます」
と嬉しそうに笑った。
『そういえば…ムーの採寸は終わったのか?』
と聞くと
「終わってもう着替えてるんですけど…ムーって太り過ぎてるなって思って…」
そんなストレートに言うフルーレを見て
少し笑ってしまった。
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即お縄で不覚にも吹いてしまった