コメント
1件
あべなべ優勝(?)
💚
「阿部ちゃんさ、いつ翔太に告るの?まさかこのまま一生言わないつもり?」
佐久間との地方ロケで、撮影が無事終わった後、二人きりになって帰り支度をしていると、まるで何でもないことみたいに佐久間が言った。
その口調はまるで、コンビニで『なんか、買い忘れないよね?』と聞くかのような調子で。俺はしばらく意味がわからず、一瞬、息を止めた。
「……え?」
絶句する俺の手先が止まったのを見て、佐久間が確信に満ちた笑顔を浮かべる。
そう、みんなを佐久間の虜にさせる、あの悪戯っぽい、可愛らしい笑顔。スマイルマークかよ、と突っ込みたくなるような満面の笑顔だった。
二の句を告げずにいると、佐久間はさらに絡んでくる。
「俺は、阿部ちゃんと翔太がそうなったら嬉しいけどなぁ」
「なに…言ってんの…」
そう返すのが、やっと。これじゃ認めたも同然だ。
無責任にも聞こえる佐久間のあまりにも楽観的な展望は、臆病な俺をより慎重にさせる。
そもそも、俺たちはそんなに接点がないし、翔太が何を考えているかなんてちっともわからないし。素直でわかりやすい男だけど、俺とはカラーが違うし…
ダメな理由は次々と俺の頭を去来して、みるみる勇気を萎ませていく。
「阿部ちゃんはさ、ビビりすぎんだよ」
にゃはは、と、佐久間は笑う。
「思いっきり飛び込んでみたら、思ってもみない景色が見えてくるかもよ?」
両手を頭の後ろで組んで、佐久間はそう、言いたいことだけを言ってしまうと、俺の返事を待たずに、今度は大きな声で部屋の外にいるマネージャーに向かって、新幹線って何時だったっけ?とこちらが拍子抜けするくらい、あっさり話題を変えた。
揺さぶられっぱなしの感情が追い付かない俺は、佐久間に肩を叩かれて、やっと現実に引き戻されるかと思ったが、すれ違いざまに逆に止めを刺された。
「がんばんなよ」
そう、俺は翔太に恋をしている。