テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
りょん.
186
10
涼ちゃんはスマホを握ったまま、ベッドに倒れていた。
送ったメッセージ。
「ごめん、熱出た」
画面を見る。
……既読がつかない。
数分経っても、つかない。
元貴も、若井も、誰も。
(……まだ寝てるのかな)
それとも、もうスタジオに向かってるのかもしれない。
でも。
もしこのまま既読がつかなかったら。
(休むって…伝わらないよな)
涼ちゃんは少しだけ眉を寄せる。
(……てか)
ふと、思う。
(このくらいなら行けるんじゃないか)
熱はある。
体もだるい。
でも、動けないほどじゃない。
昨日もスタジオで色々話していたし、
レコーディングの予定もある。
(ここで休んだら…)
頭の中で、いろんなことがぐるぐる回る。
しばらく画面を見つめたあと、
涼ちゃんは小さく息を吐いた。
そして。
送信を取り消した。
「……はぁ」
ゆっくり体を起こす。
体が重い。
頭もぼんやりする。
それでも、ベッドから降りた。
クローゼットを開けて、
普段より少し厚めのパーカーを取り出す。
長袖を重ねて、首元も隠す。
鏡を見る。
顔は少し赤い。
「……まぁ、いけるでしょ」
小さく呟く。
バッグを持って、家を出た。
スタジオへ向かう道。
歩くだけで、少し息が上がる。
体もだるい。
でも涼ちゃんは歩き続けた。
(大丈夫大丈夫)
自分に言い聞かせる。
(レコーディング終われば帰れるし)
スタジオの前に着く。
ドアを開ける。
中から元貴の声が聞こえた。
「お、涼ちゃん」
みんなが振り向く。
涼ちゃんは少し笑う。
「おはよ」
そう言いながら、静かに中へ入った。
誰もまだ気づいていない。
涼ちゃんが熱を出していることに。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!