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仮にこっちの希望がはっきりしていて、店の準備も整っていて、必要なものが今みたくすぐに出てきたとしよう。それで希望と結果ばかりになったら、かえって世の中味気なくなると思うなと口ごもると、ケマルは「そうかな」とつぶやいた。建前なんかよしてくれ、所詮ここに店を出す人達は本当はただ儲けたいだけなんだろ、そうはっきり言ってくれ、「企業の目的は利潤追求」だって向こうの学校で習った、と俺は言った。彼を横目で見ると、薄笑いを浮かべているように見えた。ケマルは城壁のある方角を横目で見ながら「それは、壁の中の囚人が考えることだ、」といい「他人を蹴落として自分だけ這い上がろうとする」と付け加えた。
そう言い切られてみると、胸の奥には約分できない気持ちが残った。確かに俺はまだこっちの世界に来て日が浅い。しかし、果たしてこっち側の世界がすべて正しいのだろうか? そこで俺は言った。城壁の向こうでそういう風に教わってきた。なにも学校だけで習ったわけじゃない、毎日大人がそう教えてる、人間は生きていかなきゃならない、そのために他人を蹴落とすのはやむを得ない、それが自由競争で、但し蹴落とす機会、のし上がる機会だけは平等でなきゃいけない、それには公正って名前まで付いてる、と。彼は「壁の中の囚人は、どうして他人を落としめることばかり考えるんだ? どうして生かそうとしないんだ」と言い、再び歩き出した。