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その後、僕らは探索を続けた。


今まで行った和室やリビング、それから2階の部屋も探索した。


しかし、玄関の鍵はどこにも見当たらない。


やがて、蜘蛛の巣が大量に張ってある図書室にやってきた。







「……苦手なんだよね。虫」


「斬りつけましょうか?」


「それはそれで、血が飛び出すから嫌だな……」





虫を無視して図書室を見渡していると、違和感を覚えた。


「ヒューッ」と風が吹き抜ける音が聞こえたからだ。



「どうしました?」


「いや、何か風の音が……?」


「もしかしたら、どこかに隠し通路があるのかもしれませんね」


「そう、なのかな」


「お兄さん」


「?」


「あそこから音が漏れているみたいです」




図書室の一番奥にある本棚。


そこから音が漏れているらしい。


僕らは協力してその棚を横に退けた。


すると、地下に繋がるような階段が現れた。





「!!」


「ありましたね」


「(さっきまでこんな音、漏れてたっけ……?)」




妙な疑心が生まれたが、とにかくこの先に行かなければ先には進めないことは確かだ。


僕らはその階段を降りることにした。


薄暗かったので、ポケットにある懐中電灯を使った。



「準備がいいんですね」


「拾ったんだ。和室で」



階段を降りると、実験室のような所にたどり着いた。


謎の薬品があちこちに置いてあった。


都市伝説スポットの噂では、この館はかつて宗教団体が利用していた場所と一部囁かれていた。


恐らく、ここがそうなのだろう。


……あの化け物と仮面少女に出会わなければ、もう少し驚いたかもしれない。


実験室のような場所を散策していると、光る物を見つけた。


僕はすぐにそこへ走り出した。


拾い上げて確認すると、それは鍵だった。



「どこのでしょうか……」


「多分……玄関の鍵、かな」


「だとしたら、物凄くあっさりでしたね」


「本当にね……」





玄関の鍵らしき物をポケットに入れ、その場から立ち去ろうとした時だった。


あの、不気味な声が聞こえた。










「お兄さん!!」





「え?」




突然、クエリィが僕を突き飛ばした。


いや、庇ったのだ。


化け物の攻撃から、僕を。


僕が床に叩き付けられているのに対し、クエリィは壁に叩き付けられた。










「クエリィ!!?」




僕は急いで彼女の元に走り出した。


仮面の端っこにひび割れができてしまった。


僕なんかを庇ったせいで。



「……うっ」


「な、何で……僕なんか庇ったんだ!」


「……きっと似ているから、です」


「……えっ」


突然何を言いだすのか、僕には分からなかった。


なぜこんな時にそんなことを言ったのか。


「だから、私のことも怖がってた。そうでしょう?」


ドキッと、心臓が跳ね上がる音がした。


「……知って、たのか……?」


「お兄さんの手の震えとか、お兄さんが私から少し距離を取って話していたから、です」



自分自身の心の弱さと、彼女の優しい言葉が重なって、涙が溢れそうになった。


隠していたつもりだったのに、全く隠せていなかった。


情けない。


本当に情けない。


ボロボロになっているというのに、彼女はずっと冷静で優しかった。


僕のことを思って、何も言わないでいてくれた。


「……私も人の視線が怖いから、仮面を付けてます。お互い様、です」


「そ、それは……!」



それは僕らが勝手に作り出した噂のせいだ。


みんな面白がって、彼女を都市伝説として作り上げていたんだ。


死神人形としての顔が有名になったせいで、仮面を付けざるを得なくなったんだ。


本当の彼女は、優しく繊細だった。


大層な使命を抱えていて、現実離れした化け物に立ち向かっていた。


彼女は苦しめられていた。


僕は気づかなかった。


気づいてあげられなかった。



「ごめんクエリィ……ごめんね──」


できることならもっと謝りたかったのに、白い化け物が奇声を上げて、今にもこちらに走り出してきそうだった。


「はし、って……ください」


「だ、駄目だ! クエリィも一緒に……!」


「……」


「クエリィ……?」


僕が呼びかけても、彼女は動かなかった。


動けなくなったのだ。

サイコ・アクター

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