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翌日夕方――
本日も鬼の訓練を終え、自室でブタの死体みたいに寝転がっていると、不意に部屋の扉がノックされる。現れたのは、訓練中に話をしていた騎士たち数名。
「ラウル王子、ドリコ市長が王子にお会いしたいとおっしゃっています」
「市長?」
「はい、エスタの市長をされている方で、バルト将軍の弟に当たられる方です」
「はーバルト将軍の」
王族が近くに来てるし、挨拶しとかなきゃなの精神で声かけてきたんだろうな。行っても行かなくてもいいのだが、まぁパワハラジジイの文句言ってやりたいし行くか。
騎士たちが運転する馬車に乗って、砦から20分ほど走るとエスタへと到着。
エスタはママ上達が泊まっている街で、大きな繁華街がありギルドやカジノ、劇場まで存在する。帝国首都からは離れているのだが、副都心と言って良いぐらい賑わっている街だ。
「ごめん、せっかくだしママ上達も連れて行くよ」
「かしこまりました」
騎士たちに頼んで、ママ上たちが泊まっているホテルに寄ってもらい二人を馬車に乗せてもらう。
「ママ上、ヨハンナ久しぶりって言ってもほんの数日だけど」
「ラウルちゃん、ママ寂しくて辛かったわ」
「ほんとに、ママさんなだめるの大変だったんだからな」
疲れた表情のヨハンナと、泣きそうなママ上に挟まれて座る。
二人と近くにいると心が安らぐ感がある。
「ラウルちゃん痩せた? げっそりやつれてるじゃない……」
「わかる? めちゃくちゃしごかれてるから、多分体脂肪率も0.5%くらい落ちてる」
「そんなに減ったらラウルちゃん消えてなくなっちゃう……」
俺の激ヤセを悲しむママ上と、えっ? どこかかわりました? と言いたげなヨハンナ。
「悪いけど、アタシには全然わからん……」
「ラウルちゃん、もうママのもとに帰ってきていいのよ? ムカム島帰ろ?」
「う~ん、でもまだ将軍に全然認められてないから、もうちょい頑張るよ」
「無理しちゃダメよ? いつでも呼んでいいからね」
俺の手を握って全力で甘やかそうとしてくるママ上。今なら胸くらい触っても許されるかもしれない。
いやそれくらいのスキンシップはあってしかるべきだと思う。
というかムカム島なら、ママ上はいつも添い寝してくれてたので、その時はフリーおっぱいだったのだ。
気づけば胸をガン見していた。
「…………」
視線に気づいたママ上は、俺が何を求めているかに気づいて恥ずかしげに頬を染めながら、横髪を耳に引っ掛ける。
「触っちゃう?」
「ヨハンナも、良い?」
「そんな視線で訴えかけてくんなよ」
ママ上は遠慮なく体を寄せ、ヨハンナも「ったく」と呆れながらも胸を顔に押し付けてくれる。
白く巨大な胸と、褐色の胸に交互に顔をくっつけて深呼吸する。どこまでも沈み込む、マシュマロの胸の谷間で暮らしていきたい。
馬車の中でミニハーレムを10分ほどやっていると、目的の場所へと到着。
俺達は巨大なカジノ店の前で降ろされた。
馬車を運転していた騎士から「お楽しみでしたねグヘヘ。帰りは遠回りします」と言われた。
どうやら中での事は見られていた模様。帰りはちゃんとカーテン閉めよう。
店前ではバルト将軍とよく似た、筋肉質な老紳士に出迎えられる。
バルト将軍との違いはヒゲがなく、頭部がU字型に後退しており側面と後頭部に白髪を残している。
#シクフォニ
らの(腐女子)
249
5,423
#悪役
にこ
8,545
「ようこそ王子。わたくしはドリコ・アイゼンベルグ。元帝国軍将軍の一人で爵位は侯爵。今はこの街の市長をしております」
「どうも、バルト将軍の弟って聞きましたよ。アイゼンベルグ家は皆軍騎士家系なんですね」
「いえいえ、私なんか落ちこぼれで兄のおこぼれで爵位をいただきました。現にこうして騎士団は退役しておりますし」
確かバルト将軍は、公爵騎士の称号を持っており帝国最高位の騎士の一人である。
そんな兄と比べられてドリコ将軍も苦労しただろう。兄の方と比べ、優しそうな顔をしていて笑顔を絶やさない。
「エスタ近くまで来てくださったのでしたら、挨拶をせぬわけにはいきませんので。ささ、こちらへどうぞ。奥様方も」
ドリコ市長に連れられ、俺達はカジノの3階にあるVIPルームへと案内された。
そこは今現在遊技が行われている、カジノホールが見渡せる席だった。
ルーレットやポーカー、スロットなど、おなじみのゲームをプレイする客たち。
パピヨンマスクをつけた富裕層から、負けたら借金取りに殺されますって顔をしている、後のなさそうな逆境無頼な客まで様々。
「悪徳会長が、下々のギャンブルを眺めて悦にひたる席みたいだ」
「王子はワインでよろしかったですかな?」
「余はアルコールを好かん。病気になりそうなくらい甘いジュースを持ってたもれ」
「わかりました。奥様たちは?」
「我々もノンアルで」
ママ上達とフカフカの椅子に座って待っていると、バニーガールの格好をした女性が、骨付きの肉と体に悪そうなドロドロのフルーツシロップジュースを持ってきた。
「うーむセクシー」
「ママもあれ着よっか? ウサちゃん」
ママ上は両手を頭の上でピコピコさせて兎の真似をする。
自分でやって、ちょっと恥ずかしそうにしているのが愛おしい。
後であのスーツがどこで売ってるのか聞いておこう。
そう思っていると、肉の匂いで腹の音がなる。
「食っていい?」
「勿論、王子のものですからな」
俺はむしゃむしゃと骨付き肉にかじりつく。やっぱ肉だよ肉、人間肉食わないと。今日失ったカロリーを吸収し、痩せた体が元に戻っていくのを感じる。
ドリコ市長は俺の対面のソファーに腰掛けると、人の良さそうな笑みを浮かべる。
「よい食いっぷりですな。しかし王子は、なぜこのようなところに?」
「文官から、お前は帝国内に味方が少ないから将軍を派閥に入れろと。王子どさ参り編だよ」
「確かイヤミル様も似たような理由で、来ていらっしゃいましたな。しかし兄は堅物ですので、説得は難しいですぞ」
「身を持って実感してるよ。ドリコ市長は軍をやめて、なんで市長に?」
「いやはや、私はあまり争いごとは苦手でして。それでも国の為にできることを考えたら、政治かなと思いまして」
「なるほど、エスタはすごく賑わってるしね」
「できれば王子にも、エスタ発展にご協力願いたいのですが。王子のお名前さえ貸していただければ、すぐに通る案件をいくつも持っていまして」
「案件とな?」
「勿論変なものではございませんよ。交通の為に木を切り倒すのも、いちいち帝国の許可がいりますし」
「大変だよね、許可とるの」
俺は手についた油とコショウをなめながら、わかる~と頷く。
「申請するのは簡単なのですが、いかんせん許可が下りるのが3ヶ月後になったりと時間がかかります。しかし王子の名前とともに申請を出せば、一週間以内には認可がおりますので」
「ふむふむ」
俺がバルト将軍を味方にしたいように、ドリコ市長も俺を仲間にしたいって感じか。
どうしよっかな、肉くれたし名前くらい貸しても良さそうだけど……。
しかし、俺はドリコ市長の視線がママ上の胸の谷間に注がれていることに気づいた。
やっぱ名前貸すのやめよう。
コメント
1件
ああ、もうめちゃくちゃ良かったです……! ママ上とヨハンナとの馬車の中のスキンシップシーン、思わずニヤけちゃいました。ラウル王子の「ミニハーレム」発言とか、ママ上がウサギの真似するところとか、可愛くて和みました。でも後半、ドリコ市長の視線がママ上の胸に行ってるのを見抜いて「名前貸すのやめよう」ってなるラウルの判断、鋭いなと。ゆるい雰囲気の中に緊張感がチラ見えするバランスが絶妙でした。ありんすさんの書くキャラクターの視線の描写、すごく好きです。