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立川へ向かう車中でも、二人は無言のままだった。
何かを話さなければ、と優子は思うけど、こういう時に限って何も言葉が出てこない。
廉の運転する車は、八王子方面へと繋がる国道を走り、思いの外、スムーズに進んでいる。
闇夜に染まった景色が、車窓を流れていき、優子は、ぼんやりと眺めていた。
車は、いつしか東京に入り、多摩モノレールの線路の下を走行している。
高幡不動駅のアンダーパスを超え、このまま線路沿いに車を走らせていけば、立川へ辿り着くだろう。
廉の愛車が立日橋を渡り、直進していくと、モノレールの立川南駅に近付いてきた。
「あの……ここで大丈夫です」
「ここでいいのか? 駅まで、少し距離があるが」
廉がハザードランプを点灯させながら、緩やかにブレーキを踏むと、優子は、コクリと頷き、シートベルトを外す。
「昨日と今日…………とても……楽しかったです。ありがとうございました」
運転席の廉に向かい合い、会釈をする優子。
「いや……」
廉は、後部座席に放ってあったバッグを手にすると、いつもよりも厚みのある、白い封筒を取り出す。
「これ。今回の報酬」
なぜなのか分からないけど、優子は、差し出された封筒を目にして、顔を背けてしまった。
偽りでも構わない愛を欲した優子と、真実の愛を与えてくれた廉の関係から、『客と売女』という現実へ一気に引き戻される。
カチッ……カチッ……と、淡々と刻み続けるハザードランプの音が、『廉の女』という魔法が解けるまでのカウントダウンに聞こえるのは、思い過ごしなのだろうか?
優子は、指先を微かに震わせながら、両手で辿々しく受け取った。
「ありがとう……ござい……ま……す」
後ろを振り返り、後部座席に置いてあった荷物を引き寄せた優子は、トートバッグに封筒をしまった後、廉の眼差しと交えた。
「じゃあ……そろそろ行きますね。廉さんも……気を付けてお帰り下さいね。それでは……失礼します」
小さく頭を下げ、優子が助手席のドアに手を掛けた時だった。