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『嫌いなアノコ』
小野野乃花こと、私は生まれつきの天然パーマだ。いわゆる天パってやつ。何をしてもすぐにクルンッ!て、毛先が跳ねる。おまけに顔が大きい!ブスにしか見えないよ…。
そんな私には親友がいる。桃井百花ちゃん。サラサラのストレートヘアで、腰まで綺麗に伸びている。おまけにいい匂いもする。金木犀の匂い。本人によれば、ヘアオイルの匂いだそう。小顔で、スタイルが良くて面白いし優しい。正直、勝てるのは頭だけだ。まぁ、頭もほとんど変わらないんだけど……。
その子は、よく皆に髪の毛を褒められる。私は、よくバカにされる。ネタだって分かっていても、傷つきはする。百花ちゃんは、モテたい…なんてよく泣き叫んでいるが実は裏でモテているよ〜なんて教えるのは癪に障る。自分でもフレネミーっこういうことかって、よくわかってる。
私は誕生日に縮毛矯正を受ける。そのことを百花ちゃんに伝えると、『私もしたいな』なんて言っていた。する必要なんてないくせに。百花ちゃんが走ったり、スキップをするたびに激しく、きれいに揺れるその髪の毛がうらやましい。『髪の毛…綺麗だね』と伝えたら、百花ちゃんは生まれつきだと答えた。勝てるわけがなかった。百花ちゃんはよく、天パになりたいなんて言うけど、私をバカにしてるのか?と心のなかで皮肉る。『どうして?』と聞くと、『だって、天パの方が顔が小さく見えるし、可愛いじゃん。ほら、こういう感じに外側にクルンってしたいの。だけど私はならないからさ。いいなって。可愛い』だってさ。本から小顔のくせに。もっと小さくなりたいなんて言う。私からしたら、ストレートで、綺麗に伸びていた方がダントツ可愛い。私の髪の毛を羨ましそうに見つめるその目が大嫌いだった。どうせ、私を馬鹿にしてるんだ。
百花ちゃんは、髪の毛を縛っているときも、綺麗で、歩くだけでも綺麗になびく。生まれつき綺麗なストレートヘアを持っているなんて。ずるい。百花ちゃんはよくいろんな人に髪の毛をイジられている。百花ちゃんは何も言わない。大人しく、完成を待っている。それがとてつもなく羨ましい。私の髪の毛と百花ちゃんの髪の毛の違いなんて、くねっているか、ストレートかだけなのに。その差はそんなにも大きいのか。
夏休みが始まる少し前頃からだろうか。百花ちゃんは、徐々に学校に来なくなった。理由は分からなかった。LINEで、【大丈夫?】と送ると、次の日に先生から、『百花さんは肺がんになりました。暫くは学校をお休みするそうです。早期発見だったため、治る見込みはあるそうです。早く良くなるように願いましょう。』と告げられた。肺がん。その言葉がズン、と私の肩に重りを乗せた。
夏休みに、私は百花の入院している病院にお見舞いに行ってやった。百花の嫌いなリンゴを持って。扉を開けると百花のは頭にニット帽を被って外を眺めていた。百花は私に気づいたら『あ、来てくれた。いらっしゃい』と手を振ってくれた。『帽子。暑くないの?』とぶっきらぼうに伝えたら、百花はぐっと何かに打たれたような顔をしてから、ぱっと笑顔に戻った。『あー。これはね、なんか、薬?のせいで髪の毛抜けちゃったから、帽子被ってんの。すぐ生えるって。先生は言ってから。ハゲになっちゃった!コレじゃあモテないよぉ』百花は冗談めかしに私に伝えた。『…そう。大変だね』私はそう伝えたが、ここの中では、ざまあみろなんて思っていた。あんなに自慢だった髪の毛がなくなって、私は心底スッキリした。リンゴを置いて私は少し話してから病室をあとにした。それっきり、病室には行かなかった。
夏休みが終わっても、百花は来なかった。1週間たったころに先生が、『少し悪化してしまったみたいなので、もう少しお休みするそうです。』と伝えた。私はニヤケがでそうになり、慌てて口を戻した。コレまで私をバカにした罪だ。なんて心のなかで嘲笑った。
手術の前日に私は百花の病室に行ってやった。相変わらずハゲだったが、明らかに雰囲気が変わっていた。あのつくり元気もなかった。『あ、野乃花ちゃん。…いらっしゃい。ごめん、こんなで』へらっと笑うが上手に笑えていない。『…悪化したの。』『うん。ちょっと、大きくなっちゃったみたいで。でも、明日の手術で取れるらしいから。』なんて言っていた。『ふぅん。そう。』私がどすっと椅子に座ると百花は私のなびいた髪をみて、俯いた。『いいなぁ。綺麗。あのね、私自分の髪の毛が何より大切だったの。大切に育てて、整えてたの。お風呂で毎回トリートメントして、くしでとかして、乾拭きして、ドライヤーに20分もかけて、ヘアオイル塗って、起きたらまず髪の毛をとかしたの。でもね、今は洗う髪も、朝とかす髪の毛もないんだ。』自分のニット帽のかぶった頭を撫でて、手がぽすんとベットに落ちた。私はここで、ざまあみろなんて思わなかった。私は、自分の愚かさに恥ずかしくなった。百花ちゃんの髪の毛は生まれつきだが、生まれつきだからって何もしないで保てるわけがない。影の努力があって、光るんだ。
私は何も言えず、その話を聞いて帰った。洗面所の鏡の前で自分の天パの髪の毛をくしでとかしながら、下までとかしてもくるんと戻る髪の毛を見つめながら、百花のことを思い出した。大嫌いだ。可愛いアノコも、鏡に映る醜いアノコも。…今からでも、遅くないよね。大好きになるの
コメント
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このお話、すごく心に残りました。主人公の「ざまあみろ」という気持ちに、正直ドキッとしました。でも、百花ちゃんが髪を毎日20分かけて大切に手入れしてたって知った時の、主人公の気づきが切なくて…。最後の「大嫌い。でも今から大好きになる」という言葉、すごく響きました。続きが気になります!