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#異世界転移
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#執着
さぶれ
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都築七美
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あれから勤め先に出社し、淡々と自分の仕事をこなして家に戻った。
涼二はいないし、食欲もないから自分のために料理をするなんてこともせず、コーヒーだけ用意した。胃によくない上に、ますます生理不順になっている。でもやめられない。
義母からの『子供はまだか攻撃』にも疲れ果て、なにをするにも辛い。
辛うじてブラックで飲むのは避け、ミルクを少し多めに入れたコーヒーを持ってゆっくりとソファーに腰を下ろす。膝の上にはノートPC。
画面に表示されたのは――「@risausa_321」。通称“りさうさ”。
これは理咲の裏垢だ。アイコンはあざとく加工された自撮りを使用している。
ハッシュタグには #銀座OL #今夜もひとり寝 #淋しがり屋 と並び、ブランド品とカフェの写真が目立っている。
投稿はどれも見せるための女の典型で、承認欲求の塊のような投稿ばかりだった。その女性のコメント欄に“R”の名前で投稿に対して反応がある。アイコンが涼二だ。
顔を隠していても口元の特徴的なほくろは彼のもの。
メンヘラチックでポエマーな文体も、彼である証拠。
女性にモテる自分に陶酔しているのが手に取るようにわかる。しかもイニシャルRとか、私に見つけられたいの? って思う。
『今日の服、すごく素敵でりさうさに似合ってるよ』
『最近会えてないの淋しい……』
そんな涼二からのコメントが溢れていた。
りさうさは、匂わせ投稿も多かった。こんなの監視しても傷つくだけなのに、どうしてもやめられない。
もしかしたら私は、知らずのうちに探していたのかもしれない。涼二と離婚をする理由や材料を。
そして、このとんでもない投稿を見るまでは涼二のことを愛していた。
でも、それは見事に裏切られることになる。
彼を愛していたことが間違いだったと、心底思い知らされたのだ。
ダーとのメッセだよん♡ というひとこと投稿と、スクリーンショット画像が私の心を完全に打ち砕いた。
その問題の画像は、彼らの一連のやり取りを抜粋したもので――
『奥さんといつ別れるの?』
『あいつより僕より稼ぎ上なんだ』 『ATM 兼 家政婦介護要員は手放せない』『りさうさに貢げなくなるよ』
『え~でもやだ早く別れてよぉ~』『ほかの女はみんな別れたのに~』
『そうだよ今はりさうさ一筋♡』
『奥さんと別れてくれなきゃもう会わない!』
『わかった。じゃ、ATMに不倫させよう』
『え? どうやって?』
『別れさせ屋使うんだ』『男に抱かせて不倫の証拠作る』
『鬼畜だけど天才! さすがRたん♡』
『僕も最近知ったんだけど 天魔って聞いたことない?』
『知ってるー! 別れさせ屋のプロでしょ?』
『天魔に依頼してATMを堕とさせて 慰謝料取って別れよう』
『楽しみ! じゃ 今日は記念に生でさせたげる♡』
『それはまずいよ』
『だってRたん無精子症でしょ?』
『なんで知ってるの?』
『病院の友達に聞いた♡』『奥さんに内緒で検査したって』
『それまずいって……』『絶対秘密にしてよ?』
『当然♡』『私子供いらないから そういう人の方がいいの♡』
『じゃあ生でしよっか!』
『きゃ~♡』
切り取りで悲惨な内容が投稿されていた。そこに無数のコメントが付いている。画面を見つめながら、知らないうちに私の手は震えていた。コーヒーカップを持つ手に力が入らない。
私は涼二にとって、愛すべき妻ではなく、ただの金づる。ATM呼ばわりがなによりの証拠。
あなたは私のこと、そんな風に思っていたのね。
すべてが私のせいだと思い込んでいた。愛してもらえないのは、私が悪かったから、と。
体が震えているのがわかった。
怒りが頂点に達すると、人間体が震えるのだと理解した。怒り、悲しみ、そしてなにより彼らの卑劣さを許せないと脳が認識した次の瞬間――
「あああああああああああああああっ!!!」
私の口から信じられない咆哮が飛び出した。まるで獣のような叫び声。コーヒーカップが手から滑り落ち、床に当たって砕け散る。陶器の破片が四方八方に飛び散った。
「嘘よ 嘘よ 嘘よ!!」
ぐしゃぐしゃと頭を掻きむしった。しかしあまりの衝撃で心が壊れてしまったのか、痛みすら感じることはない。痛覚さえも麻痺してしまった。
「冗談じゃないっ!!」
ソファーに置いてあるお気に入りのクッションを壁に向かって思い切り投げつけた。はずみで飛んだそれがリビングに飾ってあったフォトフレームを直撃した。
それは床に落ちてガラスが割れて飛び散る。笑顔の涼二の顔に、蜘蛛の巣のようなひびが走った。
「子供ができないのは私のせいだって、私の体が悪いって、お義母さんからずっと責められたのに!!」
涼二の両親に何度も頭を下げた日々を思い出す。不妊治療のために仕事を休んで病院に通った日々。検査で痛い思いをして、薬の副作用で体調を崩した日々。
「ATM兼家政婦介護要員!?」
涼二の母親の愚痴を聞き、洗濯、掃除、料理作り、そのうえ仕事――すべて私がやってきた。
「別れさせ屋に私を堕とさせる!?」
声がひっくり返る。もう人間の声とは思えない。ぐちゃぐちゃのひどい顔には涙があふれ、笑いすらこみ上げる。
「無精子症だったなんて!」
不妊治療で私だけが検査を受け、私だけが薬を飲み、私だけが責められた。私が知る限り、涼二は一度も検査を受けていなかった。
「男のプライドが、とか言って。結局検査受けて、結果知っているんじゃない!! それなのに私を悪者にしてッ!!」
リビングテーブルをひっくり返した。雑誌や小物が床に散乱する。それでもかまわず奇声を上げてめちゃくちゃにした。怒りや悲しみが収まらず、自分でも止められない。
「私の時間を返して!! 私の愛情を返してよぉぉっ!!」
ドスドスと家中を歩き回り、気が付けば鏡の前で叫んでいた。鏡に映る自分の顔は、髪は乱れ、目は血走り、まるで狂人のようだった。
そばにあったものを引っ掴んで片っ端から壁に投げつける。時々ガラスの砕ける音がした。
「うわあぁぁぁぁぁぁ――――っ!!!!」
夢中で暴れまわったかと思うと、突然糸が切れたようにその場へ崩れ落ちた。一通り声を上げて泣くと、心が空っぽになっていく。
気が付くと荒れ果てたリビングの中で伏せていて、床に散らばった破片の上で悲嘆に暮れていた。
涙が止まらない。今まで長い間我慢してきた涙が、堰を切ったように溢れ出た。
「これから、どうしたらいいの……」
怒りが燃え尽きて、今度は底なしの絶望が襲ってきた。
再び乾いた涙が滲みわこうとしていたその時――
蜘蛛の巣の亀裂が入った状態の涼二と目が合った。割れたフォトフレームの彼の笑顔を見つめていると、胸の奥で何かが燃え上がるのを感じた。
ゆっくりと顔を上げる。
どうして私がこんなに取り乱して泣いて、絶望を感じなきゃいけないの?
悪いのは涼二なのに。
ただこの人を一途に愛していただけなのに、こんな仕打ちを受けるなんて。
「ぜったい 許さない」
涙を拭って立ち上がった。
荒れ果てた部屋を見回す。これが私の怒りの証拠。これが私の絶望の痕跡。
この怒りを忘れないように、私は部屋の無残な姿を写真に撮った。ひび割れた涼二と一緒に。
いいわ。
あなたがそのつもりなら、私はその先で待ち伏せして、私が味わった以上の絶望を与えてやる。
確か、天魔って言ってたよね。
涼二が依頼する前に、私が依頼してやる。
プロの別れさせ屋っていうくらいなんだから、私が先に依頼して、夫と愛人を別れさせることくらいできるでしょ。
彼を私の味方にしてやる――!!
コメント
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えっ、まってまってまって…!!😭💔 4話一気に読んじゃった感覚だけど、この回マジで凄まじかった…! ATM呼ばわりされてるの知った瞬間、震えが止まらなくなったのわかるよ…しかも不妊治療の真相が無♡♡♡症って!!!そりゃ狂うよ…。でも最後「ぜったい許さない」からの「先に天魔に依頼する」って逆転の発想🔥これからの復讐劇、マジで楽しみすぎるんだけど!!次も即読みます📖✨