テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「二次会はホスト行くよー!」
幹事が高らかに宣言した。
「取引先の女社長がホスト好きで、接待に使ってるうちにハマってさ」
「わぁ、行ってみたい」「私は行ったことあるよ」「すっごい楽しみ」
みんな盛り上がっている。
美緒は「断ろう」と思ったが、幹事に強引に連れていかれた。
(すごい……)
キラキラした空間。華やかなイケメン達からのお姫様扱い。
まさに別世界だった。
でも……、
美緒の〈好きな場所〉ではない。
美緒は[和風で落ち着いた雰囲気]の方が好きだ。
「ようこそ、姫様」
美緒の隣に桜志郎が座った。
桜志郎は美緒の容姿を褒めたが、美緒の心に届かない。
(これほどの美女に「綺麗」と言っても、あたりまえか)
桜志郎は話題を変えたが、美緒は何も興味を持たない。
店内を見回しながら、カクテルを飲むだけだ。
(普通の話はしたくないのか?)
(こういう人こそ、大きな夢や野望があるのかも?)
「僕は、自分の店を持ちたいんです」
「ふ~ん。こんな店?」
「あ、そうです。こういう店のオーナーになるのが夢です」
「じゃあ、お金が必要でしょ?」
「はい。かなり」
「三千万円、欲しい?」
(スポンサーになってくれるのか?)
「しめた!」と思った桜志郎の耳元に、美緒が小さく囁いた。
「方法を教えてあげる。実行するか、しないかは自由よ」
美緒はホストに貢ぐ気はないが、「利用しよう」と思った。
(この男を使って香帆を苦しめてやる!)
(幸せの絶頂にいる香帆を、地獄に突き落としてやる)
颯真のことは(香帆との子供が産まれるくらいなら死ねばいい!)と思った。
愛と憎しみは紙一重だ。
桜志郎は金も欲しかった。だが、それ以上に……、
(あの薬が本物か? 偽物か? 試せるチャンスだ!)と思った。
美緒と桜志郎の利害が一致した。
桜志郎が「任してくれ」と言ったので、美緒は殺人に関知していない。
1ケ月後……、
梨那が引越しして颯真と出会い、香帆の地獄が始まった。
美緒は心配する振りをして、心の底から楽しんでいた。
「もっと不幸になぁれ」