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#ハッピーエンド
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ミランダとレネーナが殴りかかってくれたら反撃して、蹴りを入れたかった。でも、やっぱり女性を殴るのは気が引けるから、全員気絶させるのが手っ取り早いか。
ベルはクルトの背中に足を置いたまま、これからの段取りをさくさくと考える。
ちなみにクルトを踏んづけたままでいることに他意は……ある。
あの日、イマナの町で踏みつけられたことをベルは、未だに根に持っている。
コートを汚されたことも、数日間まともに寝返りを打てなかったことも、銀髪軍人に半裸を見られたことも。全部全部、忘れていないし許せない。
でも口が利けないほど満身創痍にするつもりはない。それを理由に、裁きの場で黙秘なんてされたらたまったもんではないから。
ベルは仕返しはこのあたりで終わりにして、フロリーナ達の身動きを封じようとした。
けれどベルはクルトの背を踏みつけたまま動かない。否、動けなかった。
懲りずに立ち上がりながら拳を振り上げたケンラートを蹴り上げた僅かな間に、ミランダとレネーナが背後に隠していた男を引きずるように、ベルの目の前に転がしたのだ。
「……どうして、ここに」
ベルはかすれ声で、目の前にいる人物に問いかけた。
しかし問われた主は、何も語らない。ただただ心の底から申し訳なさそうに唇を噛み締めるだけ。何度も殴られたのだろう。顔中アザだらけで、とてもとても痛々しい。
拘束された身体では、起き上がることすらできないのかもしれない。だってこの人は、片腕が使えないのだから。
「ベル、わたくしが手ぶらでケルス領を出ると思ったの?思いの外、馬鹿なのね、あなたは」
くすくすとフロリーナの耳障りな笑い声がベルの耳朶を差す。少し遅れて、ミランダとレネーナの嘲笑う声も重なる。
しかし、ベルは3人の声などまったく聞こえていなかった。
ここに居るはずのない人物を食い入るように見つめるだけ。
(……寒そう。痛そう。ねえ、どうして一人でこんなとろにいるの?ねえ、どうして……こんな奴らに拘束されちゃったの?……たとえ片腕が使えなくったって、あなたはこの程度の相手に屈するはずがないのに)
「……どうして」
再びベルは呟いた。たくさんの疑問と不安をつめこんで。
その声は掠れて小さいものだったが、目の前に転がる男にはきちんと届いてくれた。
「……お許しください、お嬢様」
男はわずかに首を捻って、それだけをベルに伝えた。取り返しのつかない罪を犯した人間の顔だった。
彼の名は、パウェルス。
ベルにとって師匠であり、恩人であり、家族のように慕い、これまで自分を支えてくれた──とても大切な人だった。
コメント
1件
おお、ここでパウェルスさんが出てくるのか……! ベルの「どうして」がめっちゃ刺さるわ。踏みつけの仕返しとか、過去の恨みがちゃんと描写されてるのも好き。でも何より、パウェルスの「お許しください、お嬢様」に全てが詰まってる感じがした。この先どうなるんだろう、気になる🔥