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#コメディ時々暗闇
奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
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#妖怪
百はな🍑
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地下組織のアジトでは、王国を揺るがす事件の真相を巡って、作戦会議が始まった。部屋の中央に設置された大型モニターには、王都の地図とともに、リヴァン首相による緊急事態宣言の報道映像が録画で映し出されていた。ハルベルトが口を開いた。
「まず、我々が最優先で確かめねばならぬことがある。イーサム陛下が魔物に襲撃されたとされる事件の真相、そして陛下の安否だ」
ラッセルが険しい表情で頷いた。
「はい。政府は陛下が襲撃を受けたと発表しています。だが、王研では何かが起きています。今の発表だけで、すべてを判断するわけにはいけません」
簡易ベッドに横たわるスメラが、静かに口を開いた。
「私も、陛下のことが気がかりです。そして、ジン博士のことも。王研で何が起きたのか……。何としても、確かめなければなりません」
ハルベルトが険しい表情で口を開いた。
「だが、王研へ向かうには、王都の警備網を突破せねばならん。我々は武装している。警備ロボットに発見されれば、たちまち拘束されるだろう」
ハルベルトは大型モニターの画面を切り替えた。王都リュカ街全域の地図が広がり、主要道路に配置された警備ロボットの巡回区域が赤く浮かび上がる。
「緊急事態宣言以降、監視体制は一段と強化されておる。見てのとおり、王研へ通じる主要道路も厳重な警備下にある」
ラッセルは画面を見据えた。
「それに、リヴァンは我々の存在を把握している可能性が高い。下手に動けば、王研へ近づく前に捕らえられるかもしれない」
「だったら、邪魔する奴らを片っ端から倒せばいいんじゃないか?」
入口に立っていた片目の戦士ヴァルドが口を挟んだ。
「いや、無用な戦闘は避けたい。陛下を救出するまでは、できるだけ体力を温存しておくべきだ」
ラッセルは静かに首を振った。
「だからこそ、監視網を何とかする必要があるんだよね」
ノエルが端末を操作しながら言った。
「実は、スメラさんが襲われる前から、警備ロボットの統括システムへのアクセスを試しているんだ。でも、軍の防御が厳しくて、中枢には入り込めないんだよ」
ノエルは画面に表示された通信記録を指し示した。
「さっきは一機だけ停止させられたけど、あれは個別の通信系統に割り込めたからなんだ。王都全域の警備ロボットを制御するとなると、話は別なんだよね」
「つまり、軍の統合作戦サーバーにアクセスする必要があるということか?」
ラッセルが尋ねた。
「うん。そこにアクセスできれば、警備ロボットの動きを制御できる可能性がある。そうすれば、地上から王研へ近づくこともできるかもしれない」
ノエルは続けた。
「それに、王研と軍の警備システムが連携していれば、研究所内部の情報も手に入るかもしれないんだ」
ハルベルトは腕を組み、しばらく考え込んだ。やがて、大型モニターの前へゆっくりと歩み出た。
「ノエル。再度、軍の統合作戦サーバーへアクセスできるか」
ノエルは頷き、端末へ向き直った。
「わかりました。もう一度、試してみます」
幾重にも重なった光学ウィンドウに、暗号化されたコマンドが滝のように流れ込んでいく。
「侵入経路を確保……認証サーバーを迂回……ダミーコマンドを挿入すれば……」
画面上の進行状況バーが、ゆっくりと伸びていく。
【同期中】
90%……95%……96%……97%……98%……。
その瞬間――。
画面の色調がわずかに揺らぎ、ノイズが走った。
【警告:不正アクセスを検出。防御システムを起動します】
耳障りな警告音が地下室に鳴り響き、大型モニターが赤く染まった。
「まずい……侵入を検知された!」
ノエルの表情が険しくなった。
「くそっ……!」
舌打ちとともに、新たなコマンドを打ち込む。
しかし、画面には次々と警告が表示されていった。
【要求されたアクセスは拒否されました】
【侵入対抗プロトコル起動――防壁、展開開始】
「ファイアウォールが予想以上に強固だ……! このままじゃ、こっちの接続元まで割り出される!」
その直後、新たな警告が画面中央に浮かび上がった。
【接続元の追跡を開始――解析中】
「軍のAI防衛システムが逆探知を始めた! まずいな、このまま接続を続けるのは危険だ!」
ノエルの指がキーボードの上を走る。追跡の進行を示す赤い表示が、刻一刻と伸びていく。地下室に緊張が走った。そのとき、ハルベルトが静かに口を開いた。
「慌てるな、ノエル。正面突破に固執する必要はない。別の経路を探すのだ」
ラッセルがノエルの肩を軽く叩いた。
「ハルベルトの言うとおりだ。ノエル、主回線から切り離せ。狙うのは保守回線だ」
「保守回線?」
「軍の主回線は幾重もの防壁で守られている。だが、設備の点検や障害対応に使う保守回線は、非常時にも必要になる。そこに接続経路が残されているかもしれん」
ラッセルの声音には、かつて大佐として部隊を率いた軍人らしい鋭さが宿っていた。
「以前、カザンと官邸へ潜入したときも、保守回線を足掛かりに監視システムへアクセスしたことがある」
ラッセルは大型モニターを見据えたまま続けた。
その隣へ、カザンが歩み寄る。
「ああ、覚えているぜ。あのときも、官邸の監視カメラを確認できたからこそ、スメラの居場所を突き止められたんだ」
カザンは画面に目を向けた。
「今度も同じ手が使えるかもしれねえな」
ノエルは一瞬考え込み、すぐに頷いた。
「なるほど! その手がありましたね。保守回線なら、主回線とは認証の仕組みが違う可能性があります」
ノエルは素早く操作を切り替えた。
「まず、今の接続を切るよ。これ以上、追跡されるわけにはいかないからね」
画面上の警告表示が消え、逆探知の進行状況も途絶えた。
「よし……。次は保守ネットワークを探す」
再び、キーボードを叩く音が地下室に響き渡る。
「保守ネットワークを検索……接続先を確認……」
幾つもの通信経路が、大型モニター上に浮かび上がった。
「あった! 軍の設備管理用ネットワークだ!」
ノエルは身を乗り出した。
「認証方式を確認……保守用の接続口を発見。ここからなら、限定的に情報を取得できるかもしれない!」
画面に新たな進行状況バーが表示された。
【保守ネットワーク接続中】
90%……95%……98%……。
室内の誰もが、固唾をのんで画面を見つめていた。
そして――。
【100% ―― CONNECTION ESTABLISHED 接続確立】
「よしっ! 入れた!」
ノエルが思わず声を上げた。
大型モニターに、軍の設備管理情報と監視システムの一覧が次々と表示される。
「軍の内部情報の一部と、連携している監視カメラの映像を確認できるようになりました!」
「警備ロボットの制御はどうだ?」
ハルベルトが尋ねた。
ノエルは別のウィンドウを開き、素早く確認した。
「……駄目です。統括制御には、さらに上位の権限が必要みたいです。でも、巡回区域や警備配置の情報なら、ある程度は追えると思います」
ハルベルトが静かに頷いた。
「それだけでも十分な成果だ。よくやった、ノエル。では、当初の目的どおり、イーサム陛下の安否を確かめよう」
ハルベルトは大型モニターへ視線を向けた。
「軍の警備連携ネットワークを経由して、王立科学アカデミー研究所のシステムへアクセスできるか?」
「ちょっと待ってください……。軍と王研を結ぶ通信経路があるか調べてみます」
ノエルは再びキーボードを叩き始めた。
「……ありました! 王研の警備設備と連携するネットワークです!」
画面上に、王研の施設構造図と監視カメラの一覧が表示された。
「ただし、アクセスできるのは警備関連の情報だけみたい。研究データや施設の制御装置には入れません」
「構わん。まずは陛下の居場所につながる手がかりを探してくれ」
「承知しました!」
ノエルが監視カメラの一覧を確認していると、簡易ベッドに横たわるスメラが、ふと口を開いた。
「そういえば、マラー首相補佐官の執務室から持ち出した極秘ファイルの中に、『仮王宮』に関する資料がありました」
「仮王宮だと……?」
ハルベルトが眉をひそめた。
そのとき、カザンが静かに前へ出た。
「俺も、その名には覚えがあります」
室内の視線が、一斉にカザンへ集まった。
「リヴァンは科学技術長官ラマズドに命じ、王研の特別研究区に極秘施設を建設させていました。クローン王子と王女を育成するための施設です」
カザンは大型モニターを見据えながら続けた。
「スメラが持ち出した極秘ファイルは、俺が預かって解析しました。その中に、この施設に関する記述が残されていました」
カザンは声を低めて告げた。
「コードネームは”FR6”だ」
スメラは静かに頷いた。
ハルベルトは腕を組み、大型モニターへ鋭い視線を向けた。
「なるほど……。王研の特別研究区に、そのような施設が存在していたとはな」
「FR6……」 ラッセルが険しい表情でつぶやいた。
ハルベルトはノエルへ向き直った。
「ノエル。検索対象を変更する。王研内コード『FR6』を最優先で調べてくれ。監視カメラの映像が残っていないかも確認するんだ」
「承知しました!」
ノエルはすぐさま端末を操作し、検索を開始した。
ノエルは検索条件を書き換えた。大型モニターに、王研の施設構造図が浮かび上がる。一般研究区から特別研究区へ。画面上の検索範囲が、地下深くへと移動していく。
「FR6……FR6……。あった!」
ノエルの指が止まった。施設構造図の最深部に、一つの区画が浮かび上がる。
【FR6 ―― 特別研究区 機密指定区域】
「監視映像への接続を試してみるよ……」
ノエルが最後のキーを押した。一瞬、画面が暗転した後、大型モニターの中央に、一つの映像が浮かび上がった。部屋にいた全員が、固唾をのんでその映像を見つめた。大型モニターの映像が切り替わった。そこに映し出されたのは、王研の最深部――FR6《仮王宮》の内部だった。
「これは……」
簡易ベッドに横たわるスメラが、思わず息をのんだ。画面の向こうには、セイラン城の王宮を忠実に再現した豪奢な空間が広がっていた。床一面に敷き詰められた深紅の絨毯。天井まで伸びる黄金の装飾柱。壁に掲げられた王家の紋章。まるで、王宮の玉座の間を、そのまま地下深くへ移し替えたかのようだった。だが、その光景には決定的な違和感があった。玉座の左右に、巨大な培養カプセルが二基設置されていたのだ。内部に人影はない。それでも、カプセルの周囲では青白い表示灯が、脈打つように明滅を繰り返していた。
「何なんだ、あれは……」
カザンが低く呟いた。
画面の奥に、床へ倒れ込んだ複数の人影が映り込んだ。
「陛下だ!」
ラッセルが思わず声を上げた。
床にはイーサム王をはじめ、政策秘書官バルティス、護衛兵、随行員たちが折り重なるように倒れていた。誰一人として、身動きしない。
「陛下!」
スメラの声が震えた。
ノエルはすぐさま監視画面を拡大した。
「室内の環境データを確認します!」
画面右上に、赤い警告表示が次々と浮かび上がった。
【WARNING】
【FR6・生命維持環境異常】
【換気システム停止】
【室内環境悪化の危険】
「換気システムが停止してる!」
ノエルの顔から血の気が引いた。
「このままじゃ、陛下たちが危ない!」
軍医リアナがモニターへ視線を向けた。
「密閉された空間で換気が停止しているのなら、危険です。時間が経てば、酸素不足や二酸化炭素の蓄積によって、生命に関わる事態になりかねません」
「じゃあ、陛下たちは……」
スメラが言いかける。
リアナは険しい表情のまま答えた。
「映像だけでは、生死までは判断できません。ただ、一刻も早く救出する必要があります」
ノエルは慌ただしくキーボードを叩き、FR6の換気システムへ遠隔アクセスを試みた。
「換気設備の制御系統を探す……。あった! 起動指令を送ります!」
画面にコマンドが流れ、起動処理が実行される。
【ERROR】
【この操作には管理者権限が必要です】
「くっそ……」
ノエルは別の制御経路を検索し、再びコマンドを入力した。
【ERROR】
【アクセス権限がありません】
【FR6施設制御システム:最終封鎖モード】
「駄目だ! 監視映像は見られるけど、換気設備の操作権限がない!」
さらに別の操作を試みる。
しかし、結果は変わらなかった。
【ERROR】
【操作要求は拒否されました】
大型モニターには、無情にも赤い警告表示が点滅し続けていた。画面の向こうでは、イーサム王たちが倒れたまま動かない。地下アジトに、重苦しい沈黙が流れた。誰もが最悪の事態を思い浮かべた。
「諦めるな!」
ラッセルの一喝が地下室に響き渡った。
全員の視線が、彼へ集まる。
「陛下は、まだ生きておられるかもしれん! ここで諦めてどうする!」
その鋭い眼差しは、まっすぐモニターの向こうを見据えていた。
「遠隔操作が駄目なら、俺たちが直接向かえばいい。必ず助け出すぞ!」
力強い言葉が、沈みかけていた空気を変えた。
「はい。私も、諦めたくありません」
スメラはベッドに横たわったまま、そう言って頷いた。
カザンも拳を握りしめた。
「ラッセルの言うとおりだ。まだ手はある。俺たちが諦めたら、それこそ終わりだぜ」
ハルベルトは静かに頷くと、大型モニターの前へ進み出た。
「よし。これより、国王陛下の救出作戦に移る」
その声に、室内の空気が引き締まった。
「ラッセル、ヴァルド、リアナ。君たち三名で王研のFR6へ向かってくれ」
三人は力強く頷いた。
「承知しました」
ラッセルが短く答える。ハルベルトは続けた。
「カーンはこのアジトの警備。スメラは回復後、救援体制を維持し、不測の事態に備えるように」
「はい。承知しました」
カーンが頷いた。そして、スメラも簡易ベッドの上から静かに答えた。
「はい。私も、ここでできる限りのことをします」
「ノエル、カザン、オルドリッジ。引き続き情報収集と分析を頼む。どんな些細な情報でも構わん。判明したことは逐次、ラッセルたちへ伝えてくれ」
ハルベルトは大型モニターへ視線を向けた。
「まずは王研への進入経路の確保だ。ノエル、地上の警備状況を調べてくれ」
「承知しました、ハルベルト様!」
ノエルは大型モニターに王都の警備配置図を呼び出した。主要道路には警備ロボットの巡回区域が赤く表示され、王研へ続く幹線道路にも厳重な警備網が敷かれていた。
「……やっぱり厳しいね。王研へ向かう道路は、どこも警備が集中しているよ」
ノエルの声が沈んだ。
ラッセルは画面を見据えた。
「統括システムを掌握できない以上、警備ロボットを一斉に停止させることは難しい。地上から接近すれば、我々の動きを察知される危険がある」
週刊レガリアの元編集長オルドリッジが腕を組み考え込んだ。
「待てよ。地上が駄目なら、地下から近づく方法はないのか?」
ラッセルが振り返った。
「地下から?」
「ああ。以前、お前たちがギル・グラギラス実験体と交戦した地下迷宮があっただろう。あそこを利用できないのか?」
ラッセルは地図へ視線を向けた。
「なるほど。地下迷宮か。確かに、地上の警備網を避けることはできるだろう」
ハルベルトが頷いた。
「よし。ノエル、地下迷宮の経路を確認してくれ」
「了解です!」
ノエルは端末を操作し、大型モニターに地下迷宮の立体地図を映し出した。複雑に入り組んだ地下通路が、幾重にも重なって浮かび上がる。
「地上から地下迷宮へ入るなら、封印が破壊された通路を通り地底湖を迂回するルートが最短だね。ここから王研方面へ進めるはずだよ」
ラッセルは地図の一点を指し示した。
「ただし、その経路には問題がある。地底湖を迂回する陸路は崩落している。別の道を見つけなければ、王研へはたどり着けん」
すると、簡易ベッドに横たわるスメラが口を開いた。
「ええ。地底湖を迂回する通路が崩落していることは、私も確認しています。あの道が使えない以上、別の経路を探すしかありません」
「えっ……崩落してるの?」
ノエルが驚いたように顔を上げた。
「ああ。しかも、ほかの入口も使える状況ではない」
ラッセルは地図上の別の地点を指した。
「旧庁舎にも地下迷宮への入口があったが、爆発事故で瓦礫の山となっている。おまけに、同じ敷地内には官邸がある。今の警備体制では近づくことさえ難しい」
ノエルは地図を縮小し、王都の郊外へ視点を移した。
「じゃあ、グリムスラム山脈の坑道はどうかな? ここからも地下迷宮へ入れるみたいだけど」
「そこも駄目だ。坑道は封印されているうえ、周辺には警備ロボットが配置されている。強行突破すれば、こちらの動きを悟られかねん」
ノエルは小さく息を吐いた。
「そっか……。どこも簡単には通れないんだね」
ノエルは再び地底湖周辺の地図を拡大した。
「この辺りは、まだ調査が行き届いていない場所が多いんだ。もしかすると、王研につながる別の地下経路が残っているかもしれないね」
だが、いくら地図を調べても、確かな手がかりは見つからなかった。
誰もが大型モニターを見つめたまま、言葉を失っていた。静まり返った地下室には、モニターの電子音と、空調設備やサーバーの低い駆動音だけが響いている。刻一刻と過ぎていく時間が、重苦しい沈黙をいっそう際立たせていた。
そのときだった。
「あっ……!」
簡易ベッドに横たわるスメラが、何かを思い出したように顔を上げた。
「アクアゲートを使えば、王研へ行けるかもしれないわ!」
全員の視線が、一斉にスメラへ集まった。
「私たちが戦ったギル・グラギラス実験体……。あの実験体は、アクアゲートを通って地下迷宮へ現れたでしょう?」
カーンが勢いよく身を乗り出した。
「ナイスアイデア! その手があったか!」
興奮を抑えきれない様子で、地下迷宮の地図を指差した。
「アクアゲートを経由する経路が、今も王研につながっている可能性がある!」
ラッセルは腕を組み地図に視線を戻した。
「だが、問題は地底湖から先だ。以前の戦闘で周辺は大きく崩落し、湖岸をつないでいた陸路は寸断されている。湖面付近も崩れた岩盤に塞がれているんだ……。潜水で対岸に行くしかないな……」
リアナが眉をひそめた。
「水中を通るしかないということですか? でも、水深も流速も分からない場所へ潜るのは危険すぎます。空気の確保も必要ですし、遭難する恐れもあります」
「ああ……。だが、湖底まで完全に塞がれたとは限らん。水中に通路が残っていれば、反対側へ抜けられる可能性はある」
再び、地下アジトを重苦しい沈黙が包んだ。大型モニターには、複雑に入り組んだ地下迷宮の立体地図が映し出されていた。誰もが打開策を見いだせずにいるなか、カザンがふと口を開いた。
「思い出した……。水道局が保有している水中探査機を利用するのはどうだ?」
ラッセルが顔を上げた。
「水中探査機だと?」
「ああ。王都が築かれた地形を思い出してくれ」
カザンは立体地図に歩み寄り、エルシェ湖の位置を指し示した。
「王都は、エルフ山脈に囲まれたカルデラ周辺の高原地帯に築かれている。かつてドラン家の聖域だったこの土地は、今では王国の中心地だ」
カザンは地図の表示を切り替え、王都周辺の地形を拡大した。
「険しい山々と高低差は、かつて帝国軍の侵攻を阻む天然の要塞にもなった。それに、この一帯はエルフ鉱石の豊富な産地でもある」
「それが、どうした?」
ラッセルが問い返した。
「ラッセル。エルシェ湖だよ。このカルデラ湖の湖底から、地下へと水が流れ込む水脈があるんじゃないか?」
カザンは湖底の地形図を指し示した。
「もし、その水脈が地底湖までつながっているなら、探査機を送り込んで地下水路を調べられるはずだ」
その言葉に、ノエルが身を乗り出した。
「なるほど……! 水道局の水中探査機なら、カメラやソナーを搭載しているはずだね」
ノエルは端末を操作し、大型モニターに水道局の探査機を映し出した。
「ソナーで水路の形状や障害物を調べて、光学カメラで内部を確認する。これなら、潜水できそうな経路を事前に絞り込めるかもしれないよ」
ノエルは画面を切り替え、地下迷宮と地底湖の位置関係を表示させた。
「作戦はこうだね。まず、エルシェ湖から探査機を送り込み、地底湖と、その先にある地下水路を調査する。アクアゲートの位置と、崩落地点を通過できる経路がないかを探すんだ」
ノエルは地図上に経路を示した。
「通れる場所が見つかったら、ラッセルたちは地下迷宮を陸路で進み、地底湖の湖岸から潜水する。崩落地点を突破して反対側の湖岸へ上がり、そこから残された陸路を使ってアクアゲートを目指す。どうかな?」
ラッセルは地図を見つめ、静かに頷いた。
「そうだな。それなら、無闇に水中へ飛び込まずに済む。地形が分かれば、迅速に陛下を救出できる」
「ただし、探査機が通過できても、人間が安全に通れるとは限らないよ」
ノエルが付け加えた。
「ああ。それは承知している」
ラッセルは大型モニターに映る地底湖へ視線を向けた。
「だが、陛下を救い出すためには、危険を冒してでも進まねば……」
ラッセルは大型モニターに映る地底湖を見つめた。
その言葉を受け、ノエルが端末へ向き直った。
「よし! それじゃあ、水道局の探査機が使えるか調べてみるね」
ノエルは画面に水道局の設備情報を呼び出した。
「エルシェ湖の水中設備を管理しているなら、探査機も複数配備されているかもしれない。何機か同時に動かせれば、手分けして地下水脈を調べられるよ!」
ベッドで横になっていたスメラが顔を上げた。
「それなら、広い範囲を一度に調べられるわね」
先ほどまで険しかった彼女の表情に、希望の色が浮かんだ。
ハルベルトがノエルのそばへ歩み寄った。
「よし、ノエル。探査機の配備状況と、遠隔操作が可能かどうかを至急確認してくれ!」
「承知しました!」
ノエルは素早くキーボードを叩き、水道局の設備管理ネットワークへの接続を試みた。
「あった! エルシェ湖に水中探査機が三機配備されている。しかも、全機が待機状態だよ!」
大型モニターに、三機の機体情報が並んで表示された。
「次は遠隔操作だね。接続経路を確認して……認証を試してみるよ」
ノエルの指が、再びキーボードの上を走った。
【同期完了】
「よしっ! 三機とも接続できた!」
ノエルは机の引き出しから、ゲーム用のコントローラーを三つ取り出した。
「操作系統もこいつに割り当てたよ。カザン、編集長、手伝ってもらえる?」
「任せてくれ」
カザンがコントローラーを受け取ると、隣にいたオルドリッジも腕まくりをした。
「こう見えても、私とカザンはeスポーツでは負けられないライバル同士だからな」
「編集長、今日は勝負じゃありませんよ」
「分かっている。陛下の命が懸かっているんだ。失敗はできん」
二人は互いに顔を見合わせ、小さく頷いた。
「始めるぞ」
カザンがコントローラーのスティックを倒した。
――エルシェ湖。
湖底の設備管理区域に待機していた三機の水中探査機が一斉に起動し、暗い水中に探査灯が灯った。低いモーター音とともにプロペラが回転し、三機は湖底すれすれを滑るように進み始めた。その映像が、地下アジトの大型モニターへリアルタイムで転送された。
「一号機、カザン艇。湖底南側を捜索する」
「二号機、オルドリッジ艇。東側を担当する」
「三号機、ノエル艇。俺は西側の深部を探るよ」
三人はそれぞれコントローラーを握り、探査機を操作した。三筋の探査灯が湖底の闇を切り裂き、機体は扇状に散開していく。静まり返った地下アジトには、コントローラーの操作音と、探査機から送られてくる電子音だけが響いていた。しばらくして。
「あっ!」
カザンが声を上げた。
「どうしたの?」
「湖底に妙なものがある」
大型モニターの一角に、黒々とした岩壁が映し出された。その根元には、周囲の岩肌とは明らかに異なる、大きな裂け目が口を開けていた。
「洞窟か?」 カザンが呟いた。
オルドリッジは二号機の速度を落とし湖底に停止させた。そして隣で操作するカザンのディスプレイへ視線を移した。
「カザン……ただの洞窟ではないかもしれんな」
カザンは操作レバーをわずかに戻し、探査機を減速させた。機体がゆっくりと裂け目へ近づく。探査灯が岩壁の奥を照らし出すと、水中に漂う微細な浮遊物が、暗い裂け目の内部へ吸い込まれるように流れていた。
「水が流れ込んでいるのか?」
カザンは機体をその場で静止させようとした。その様子に気づいたノエルが、自分の担当する三号機を安全な位置で停止させ、カザンの操作画面を覗き込んだ。
「カザン、まだ中には入らないで。まずは水流を調べてみるよ」
「了解!」
カザンは探査機を裂け目の手前で停止させた。ノエルは端末を操作し、一号機の測定データを呼び出した。
【水流解析中】
【流向:湖底開口部より地下方向】
【流速:測定中】
【水中洞窟の存在を確認】
「やっぱり……! 湖の水が地下へ流れ込んでいるんだ!」
「ということは……」
オルドリッジが目を見開いた。
「ノエル。地下迷宮につながっている可能性があるってことか?」
「そうだね。まだ断定はできないけど、地底湖へ続く地下水脈かもしれない」
ノエルはさらに探査機の超音波測定装置を起動した。機体の前方から放射された超音波が、岩壁の形状を捉えていく。大型モニターに、水中洞窟の立体映像が浮かび上がった。狭い入口の先には、岩盤を縫うように続く水路が伸びていた。
「思ったより奥行きがあるな……」
カザンがつぶやく。
「しかも、途中で何度も曲がっている」
「ここから先は慎重に進もう。流れに巻き込まれたら、機体を失うかもしれない」
ノエルの声に、カザンは頷いた。
「一号機、これより水中洞窟へ進入する!」
カザンがスティックをゆっくりと倒した。探査機は機首を下げ、湖底の裂け目へと滑り込んでいく。岩壁が左右から迫り、探査灯の光が狭い水路を照らし出した。水中を漂う砂や細かな泥が、機体の前を流れていく。
「視界が悪いな……」
「無理に速度を上げないで。岩壁との距離を確認しながら進んで」
「分かっている」
カザンは操作レバーを慎重に傾けた。
探査機は狭い岩の隙間を抜け、やや広い水路へと進み出た。
「よし、抜けた!」
その直後だった。
「ゴゴゴゴゴッ――!」
突如として、水流が激しさを増した。
「なっ……!?」
カザンが操作レバーを戻したものの、機体は流れに逆らえず、急速に前方へ押し流されていく。
「カザン! 前方の水路が急激に落ち込んでいる!」
ノエルの警告が飛んだ。
「くそっ! 制御が利かない!」
次の瞬間、探査機は岩壁の切れ目から勢いよく飛び出した。そこには、地下水が轟音を立てて流れ落ちる巨大な滝だった。
「滝!?」
機体は激流に呑まれ、そのまま暗闇の底へと落下していった。大型モニターの映像が激しく乱れる。
「ゴボボボボッ――!」
やがて、探査機は滝壺の深い水中へ突入した。一瞬、映像が途切れた。
「ノエル! 機体の状態は!?」
カザンが叫んだ。
ノエルはすぐさま一号機の状態を示すデータを呼び出した。
「ちょっと待って! 今、確認しているよ!」
数秒後、大型モニターに映像が戻った。
探査灯が暗い水中を照らし出す。機体の周囲には、どこまでも続く広大な水域が広がっていた。
「よかった。機体に損傷はないみたいだ。推進装置も正常に動いているよ!」
その報告に、カザンは大きく息を吐いた。
「助かったぜ!」
ノエルは続けてソナーの測定結果を確認した。大型モニターに、新たな水中地形が次々と描き出されていく。
「カザン。ここは滝壺ではなさそうだぞ。この広さは……!」
ノエルは既存の地下迷宮の地図と照合した。
「間違いない! ここが地底湖だよ!」
ラッセルは大型モニターを凝視した。
「地底湖か……」
かつて、ギル・グラギラスの実験体と死闘を繰り広げた場所。あのときの光景が、脳裏によみがえった。
(原種のギル・グラギラスは、今もこの地下迷宮のどこかにいるのだろうか……)
ラッセルはしばらく画面を見つめていた。その眼差しには、どこか懐かしむような色が浮かんでいた。
カザンは操作レバーを握り直した。
「よし。まずは地底湖を調べる。水深や水流、それに崩落の状況も確認しておこう」
操作レバーをゆっくりと傾ける。一号機は探査灯で進行方向を照らしながら、地底湖の寸断された崩落した場所に向けて静かに進み始めた。その間、ノエルは一号機から送られてきた水中地形データを確認していた。
「カザンの一号機だけじゃ、調べられる範囲に限界があるね。二号機と三号機も地底湖へ合流させよう」
オルドリッジは自分の操作画面へ視線を戻した。
「了解した。二号機を進ませよう」
「ただし、さっきの滝には気をつけて。水流と落差を確認しながら進もう」
ノエルは三号機の操作を再開した。二号機と三号機は、先ほど一号機が通過した地下水路を慎重に進んでいく。やがて、二機の探査灯が水路の先に広がる地下空洞を捉えた。
「まずいな。水流が速くなってきた。機体の制御が難しいぞ!」
オルドリッジは操作レバーを握り直し、二号機の姿勢を慎重に調整した。
「できるだけ水流の中央を維持する。だが、このままでは流れに引き込まれそうだ」
ノエルはソナーの測定値と流速データを確認した。
「流れは強いけど、滝壺には十分な水深がある。姿勢制御装置も正常だよ。無理に流れに逆らわず、機体を安定させながら、一機ずつ通過しよう!」
「了解した」
オルドリッジは二号機の進路を慎重に調整した。やがて、機体が滝の落ち口へ差しかかった瞬間。
激しい水流が二号機を呑み込んだ。
「くっ!」
オルドリッジが操作レバーを握り締める。機体は激流に揺さぶられながら落下したが、姿勢制御装置が作動し、大きく横転することなく滝壺へ突入した。水中カメラの映像が、激しく揺れた。
「二号機、異常なし。無事に通過したぞ」
続いて、ノエルが三号機を進ませた。機体は滝の流れに乗って落下し、深い水中へと沈み込んだ。数秒後、探査灯が再び暗い水域を照らし出した。
「よし! 三号機も無事だよ!」
こうして、三機の水中探査機が地底湖に集結した。大型モニターには、それぞれの機体から送られる映像と測定データが並んで表示された。
「これで広い範囲を調べられるね。まずは地底湖の地形を詳しく確認しよう!」
ノエルは三機の測定データを統合し、立体地図の作成を開始した。
【3D MAPPING】
【地下水脈地形解析中】
大型モニターに表示された立体地図へ、未知の水中地形が少しずつ描き加えられていった。湖底の起伏、複雑に入り組んだ岩壁、そして水中に口を開けた洞窟の入口。ノエルは三号機を地底湖の安全な位置に待機させ、三機から収集されたソナーデータの解析に集中した。
「あった!」
ノエルが声を上げた。
「見て! 地底湖の北側と南側、それぞれの湖底に、水中洞窟の入口が見つかったよ!」
カザンが大型モニターを覗き込んだ。
「この先にも地下水脈が続いているのか?」
「うん。どちらも地下水路につながっている可能性が高いね。ただ、アクアゲートがどちらにあるのかは、まだ分からないんだ」
ノエルは立体地図に表示された二つの入口を指し示した。
「カザンは北側、編集長は南側を調べてくれる?」
「了解! 一号機は北側だな」
カザンは操作レバーを傾け、一号機を北側の水中洞窟へ向かわせた。
「では、二号機は南側を担当しよう」
オルドリッジも二号機の進路を調整した。
二機がそれぞれの水路へ向かって動き始めると、ノエルは三号機の操作画面へ視線を戻した。
「僕は三号機で、地底湖の崩落地点を調べるよ。反対側の湖岸へ抜けられる経路が残っていないか、確認するんだ」
ラッセルが頷いた。
「頼む。そこを突破できなければ、たとえアクアゲートが見つかっても、俺たちはたどり着けない」
「任せて!」
ノエルは三号機をゆっくりと前進させた。探査灯が照らし出したのは、水中に折り重なる巨大な岩盤だった。崩落した岩石が幾重にも積み重なり、かつて湖岸をつないでいた通路を塞いでいた。
「思った以上に崩れているね」
ノエルはソナーを作動させ、岩盤の隙間を慎重に調べ始めた。しばらくして、立体地図の一角に、細長い空間が浮かび上がった。
「……あれ?」
ノエルは測定範囲を絞り、再びソナーを照射した。
「ラッセル、見て! 崩れた岩盤の下に、水が通っている空間がある!」
ラッセルが画面へ歩み寄った。
「反対側へ抜けられるのか?」
「まだ分からない。岩盤が複雑に重なっていて、奥まで確認できないんだ。でも、水の流れは続いているみたい」
ラッセルは腕を組み、険しい表情で立体地図を見つめた。
「完全に塞がれているわけではない、ということか」
「うん。ただし、人が通れるほどの広さがあるかどうかは、もっと詳しく調べないと分からないよ」
ノエルは三号機を慎重に岩盤へ近づけた。
一方、北側と南側の地下水路では、一号機と二号機がそれぞれ探索を続けていた。オルドリッジは操作レバーを慎重に傾け、二号機を南側の水中洞窟の奥へと進ませた。探査灯が複雑に入り組んだ岩壁を照らし出す。しばらく進むと、巨大な岩壁が行く手を塞いでいた。
「行き止まりか?」
オルドリッジは二号機を停止させ、周囲を確認した。すると、ソナーが岩壁の上方に空間を捉えた。
「上に空洞があるようだな」
オルドリッジは二号機を慎重に浮上させた。やがて、機体が水面に達する。カメラが水面から姿を現すと、探査灯が広い地下空洞を照らし出した。
「なるほど。水路はまだ続いているのか」
水面の先には、岩壁に沿って流れる地下水路が延びていた。オルドリッジは二号機の進路を調整し、上流へ向かって前進させた。水路は緩やかに上りながら、地下空洞のさらに奥へと続いていた。
「水深が浅くなってきたな……」
オルドリッジは二号機の速度を落とした。やがて水路の幅が広がり、頭上に水面が現れた。
「どうやら、この先は水面が開けているようだ」
オルドリッジは二号機を慎重に浮上させた。やがて、カメラが水面から姿を現す。探査灯が照らし出したのは、岩壁に囲まれた地下の沢だった。水中には崩落した岩石がところどころに沈み、両岸には大小の岩が折り重なっていた。その片側には、沢に沿って奥へと続く岩場があった。足場は悪いものの、人が伝って進めそうな幅はある。
「なるほど。沢沿いに進めそうな場所があるな」
オルドリッジは二号機を水面に浮かべたまま、ゆっくりと上流へ進ませた。ノエルは三号機をその場で待機させ、二号機から送られてくる映像を確認した。
「本当だ! 足場は悪そうだけど、ここなら人も進めるかもしれないね」
オルドリッジは岩場の様子を確かめながら、さらに二号機を前進させた。やがて、水路は大きな地下空洞へと開けた。その奥で、淡い黄色の光が静かに揺らめいていた。
「ん? あれは何だ……?」
オルドリッジは二号機の探査灯を、光の方へ向けた。
「何か光っているな……」
オルドリッジは二号機をゆっくりと浮上させた。
カメラが水面から姿を現すと、探査灯が地下空洞の奥を照らし出した。岩壁の一角には、幾何学模様を描く巨大な魔法陣が、黄色い光を放っていた。
「アクアゲートか!」
ラッセルが大型モニターへ歩み寄った。
「間違いないよ!」
ノエルは二号機の映像を拡大すると、すぐさま端末を操作し、ゲートの制御システムへの接続を試みた。やがて、大型モニターに解析結果が表示された。
【アクアゲートシステム 接続】
【転送先:王立科学アカデミー研究所・特別研究区/育成室】
【ゲート状態:正常】
「やった! 王研の育成室につながっているよ!」
ラッセルの表情が引き締まった。
「あの実験体が送り込まれてきた場所か」
そのとき、オルドリッジが二号機の探査灯を岸辺へ向けた。
「あそこに何かあるぞ」
アクアゲートの手前には小さな岩場があり、複数のキャスター付きのBOXが無造作に転がっていた。
「あれは、転送用のBOXだな」
ラッセルがつぶやいた。
ベッドから映像を見守っていたスメラも頷いた。
「ええ。私が粛清されたときも、あのようなBOXに入れられて転送されたわ」
「俺も以前、スメラに救援物資を送るために使ったことがある」
ラッセルはノエルを振り返った。
「ノエル。BOXを、ここから遠隔操作できるか?」
「ちょっと待ってね。接続してみるよ!」
ノエルは端末を操作し、BOXの制御システムに接続を試みた。ほどなくして、新たな情報が大型モニターに表示された。
【搬送BOXシステム】
【装置状態:正常】
【遠隔操作:可能】
「やった! BOXも遠隔操作できるよ!」
ラッセルが身を乗り出した。
「つまり、俺たちがBOXに乗り込めば、ここから王研へ転送できるんだな?」
「はい! 僕が地下アジトからゲートを起動して、BOXを転送できるよ!」
ラッセルは再び大型モニターへ視線を戻した。
黄色い光を放つアクアゲート。その手前には、王研へ通じる転送用BOXが転がっている。
「ようやく、陛下のもとへ向かう道が見えてきたな」
張り詰めていた緊張がわずかに和らぎ、ラッセルの声に安堵の色がにじんだ。その言葉を聞いたハルベルトが、ゆっくりと立ち上がった。
「よし。ラッセル、ヴァルド、リアナ!」
三人が一斉にハルベルトへ向き直った。
「直ちに出発の準備に入ってくれ!」
「承知いたしました!」
三人の声が重なった。
「カーン。潜水装備、通信機材、救命装備を三人のバイクに積み込んでくれ」
「任せてください!」
カーンが装備の保管場所へ向かおうとした、そのときだった。
「私も手伝うわ」
スメラがベッドからゆっくりと立ち上がった。
「スメラ、大丈夫なのか?」
ラッセルが心配そうに声をかけた。
「ええ。まだ少し身体が重いけれど、物資の準備くらいならできるわ」
スメラは穏やかに微笑んだ。
「陛下を救うためだもの。私にも、できることをさせて」
ラッセルは一瞬ためらったが、静かに頷いた。
「……分かった。ただし、無理はするなよ」
「ありがとう」
スメラはカーンとともに装備の保管場所へ向かい、救援物資の準備に取りかかった。
ハルベルトは再び大型モニターへ目を向けた。画面には、王研へ通じるアクアゲートが、今も静かに黄色い光を放っていた。国王救出への道が、ついに開かれようとしていた。
コメント
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おおー、今回は水中探査機を使った地底湖の調査、めちゃくちゃワクワクしました! アクアゲートに繋がる水路を見つけたときは思わず「よし!」って声が出ましたね。ノエルたちのハッキングシーンも手に汗握るし、何よりチーム一丸となって少しずつ道を切り開いていく感じがたまらないです。ラッセルが「諦めるな!」と一喝するところ、胸が熱くなりました。陛下の無事を祈りつつ、次は潜水からの救出劇、楽しみにしてますね!