テラーノベル
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こさめの熱が完全に下がったのは、
それから二日後だった。
「もう平気」
そう言って、
リビングに戻ってきた
こさめは、
前より少しだけ、
――距離が近かった。
「いるま」
ソファに座っていた
いるまの隣に、
当たり前みたいに座る。
ぴたり、と。
肩が触れる距離。
「……」
いるまの体が、
わずかに固まる。
「なに見てるの?」
こさめが、
画面を覗き込む。
顔が、
近い。
息が、
かかりそうな距離。
「……ゲーム」
「ふーん」
さらに近づく。
肩が、
完全に触れた。
「……っ」
心臓が、
うるさい。
(……なんで)
前は、
こんなことなかった。
触れられるだけで、
怖かったのに。
今は違う。
怖くない。
でも――
別の意味で、
落ち着かない。
「ねえ、いるま」
「……なに」
「今日さ」
こさめが、
自然に、
いるまの腕に触れた。
軽く。
甘えるみたいに。
「一緒に買い物行かない?」
「……」
腕に触れている、
その手。
細い指。
離れない。
「……別にいいけど」
答えながら、
視線は、
その手に向いていた。
こさめは、
嬉しそうに笑う。
「ほんと?」
さらに、
少しだけ、
近づいた。
「……うん」
その様子を、
キッチンから
なつが見ていた。
「……」
無言で、
隣を見る。
同じく見ていた
らんと、
目が合う。
「……なあ」
なつが、
小さく言う。
「……あれ」
らんが、
笑いをこらえながら答える。
「……もうさ」
「……うん」
「……時間の問題じゃね?」
二人とも、
笑った。
「……なに笑ってんの」
いるまが、
少し不機嫌そうに言う。
「いやー?」
らんが、
ニヤニヤする。
「別にー?」
「……」
なつも、
なにも言わない。
でも、
目が笑ってる。
「……なんだよ」
居心地が悪い。
その時。
こさめが、
いるまの袖を引いた。
「いるま」
「……なに」
「行こ」
当たり前みたいに、
言う。
一緒に行くのが、
当然みたいに。
「……」
断る理由なんて、
なかった。
「……ああ」
立ち上がる。
その瞬間。
こさめが、
自然に、
隣に並ぶ。
距離、
ゼロ。
外へ向かう、
その背中を見ながら、
らんが呟いた。
「……完全にさ」
なつが、
続ける。
「……こさめの隣だな」
いるまの居場所は、
もう決まっていた。
外。
空気は、
少し冷たい。
こさめが、
歩きながら言う。
「ねえ」
「……なに」
「なんかさ」
笑いながら、
言った。
「最近、いるま優しいよね」
「……は?」
思わず、
足が止まる。
「……別に」
「優しいよ」
こさめは、
まっすぐ言う。
「前より、いっぱい隣にいてくれる」
「……」
胸が、
ざわつく。
「……嫌?」
こさめが、
少し不安そうに聞く。
その顔を見た瞬間。
いるまは、
反射的に言った。
「……嫌じゃない」
「……!」
こさめの目が、
少し大きくなる。
「……むしろ」
言葉が、
勝手に出る。
「……他のやつの隣にいんな」
「……え」
言ってから、
自分で驚いた。
(……俺)
今、
なんて言った?
それって、
まるで――
独占したいみたいな。
「……いるま」
こさめが、
小さく笑う。
嬉しそうに。
「……なに」
「うん」
それ以上は、
なにも言わなかった。
でも、
手が、
少しだけ、
触れた。
そして、
今度は――
離れなかった。
いるまは、
初めて気づき始めていた。
守りたい、だけじゃない。
隣にいてほしい、だけじゃない。
誰にも渡したくない。
この気持ちの名前に。
コメント
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イイネッッッッッッッッッッッ