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石田さんは、とても怖い顔をしていて、白ヤギのおじいさまではなくなっていた。わたしは悲しかったから、なるべく石田さんの顔は見ないようにした。周りの人々は落胆した様子で、泣き崩れるお姉さんや、ぶつぶつ言いながらうろちょろと歩き回る男の人、ただお空を眺めているだけのおばあさまと、まるでブリキのおもちゃみたいに、決まったリズムで身体を動かしていた。

お母さまは、何かを言いたげな富士子さんをそっと制していた。

富士子さんはきっと、


「そら見たことか!」


と、思っているに違いない。

わたしにでもわかる。

照明弾が小屋の背後から上がって、夜空がパッと明るくなると、丘の上の戦車や人影がわたしたちの目に飛び込んできた。

続けざまに、銃声が辺りに轟いて、ヒュンヒュンという音と、地面の土や石ころが空中に跳ね上がって、トラックの幌に穴を開けた。

独りごとを言いながら歩いていた男の人が、わたしの前でパタリと倒れた。

その途端に、ものすごい力でわたしの身体は後ろへ引っ張られると、お母さまと石田さんの顔が見えた。

富士子さんの姿もあった。

トラックを盾にしながら、石田さんがボソリと言った。


「私はどうやら、お人好しだったみたいだ…申し訳ない…」


鳴り止まない銃声がうるさくて…。

迫る異国の言葉も耳障りだ…。

白ヤギのおじいさま、どうかそんなに自分を責めないでください!



ハイウエスト・ラヴァードールズ 満州国から脱出せよ

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