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ちょっと待って帝辛殿下ピュアすぎない!?😭💕 帳簿一瞬で読んで問題解決して、泣き止ませるために父上からもらった独楽まであげちゃうとか…有能で優しすぎるでしょ!! でも縫季が「あの笑顔は脆い」って思うところ、めっちゃ刺さった…殿下の内面が気になりすぎて次が待ちきれないよ〜!🌸
だが帝辛はそれを気にする様子もなく、帳を受け取る。
帝辛はそれを受け取ると、指先で項目を追い始めた。
その動作は速い。だが雑ではない。
帝辛の目は帳の数を一瞬で読み取り、問題の箇所を特定していく。
「……ここだな」
帝辛は帳の一行を指差した。
「柳渓への配給は、三日前に倉を出ている。だが、途中の渡し場で滞っている」
「渡し場……?」
農夫が目を丸くする。
「川が増水したのだろう。渡し守が渡航を止めている。無理はない」
帝辛は帳を閉じ、書吏に返した。
「配給は明日、別経路で届けさせる。川が落ち着くまで、北の街道を使え」
「はっ」
書吏が頭を下げる。
縫季は帝辛の手元を見ながら、その『香』を探った。
(……揺れてない)
普通、民の前に立てば香は跳ねる。緊張でも、苛立ちでも、虚勢でも。
だが帝辛の香は、落ち着いている。
整いすぎている。
帝辛は農夫に向き直り、静かに微笑んだ。
「心配するな。種は届く。植える時期には、間に合わせる」
農夫の顔が、ぱっと明るくなった。
「殿下……! ありがとうございます!」
「礼はいらん。そなたたちが安心して畑を耕せるよう整えるのが、私の仕事だ」
帝辛の笑顔は柔らかい。しかし、その目は真剣だった。
農夫は深く頭を下げ、列を離れていく。その背中は、先ほどよりも軽く見えた。
次の民が前に出る。職人だった。手には、木彫りの小さな人形を持っている。
「殿下、これを……」
「ああ、見せてくれ」
帝辛は人形を受け取り、手の中で丁寧に眺めた。
子供が喜びそうな、愛らしい動物の形だ。
「よくできている。この細工、どこで学んだ?」
「は、はい……祖父から、受け継ぎました」
「そうか」
帝辛は人形を返し、微笑んだ。
「技を絶やすな。そなたの手は、子供たちの笑顔を作る」
職人の目が潤む。男は何度も頭を下げ、列を離れた。
(……有能だな)
縫季は帝辛の様子をじっと観察していた。
渡し場の遅れも、職人の細工も、迷いなく捌いていく。
問題の本質を一瞬で見抜き、それでいて民を見下す気配がどこにもない。
(完成度が高い……いや、高すぎるのか?)
だが、そのあまりに澄んだものを、縫季はただ喜べなかった。
そんなことを考えながら観察を続けていた、その時だった。
「う、うわぁぁぁん!」
配給の列の傍らで、一人の小さな少年が泣きじゃくっていた。
母親が慌ててなだめるが、一度火がついた泣き声は止まらない。
帝辛はその声に気づくと、迷わず歩みを向けた。
「殿下、お手を煩わせるまでも――」
母親が恐縮して頭を下げようとするのを、帝辛は制した。
そして、流れるような所作で、その場に片膝をついた。
豪華な衣の裾が土に汚れるのも厭わず、彼は子供と同じ目線の高さまで腰を落とす。
「どうした? 転んだのか、それともお腹が空いたか?」
帝辛の声は、驚くほど優しかった。
泣きじゃくっていた少年が、涙に濡れた睫毛を震わせて顔を上げる。
帝辛は、まるで宝物を扱うような手つきで、懐から小さな木彫りの独楽を取り出した。
「これを見ろ。父上が、私がまだ小さかったころに作ってくれたものだ。
……今でも、時々こうして回して見せると喜ばれる」
指先で独楽を回してみせると、少年はピタリと泣き止み、その動きを凝視した。
帝辛の顔に、飾りのない、純粋な笑みが浮かぶ。
縫季はそこで、ほんの一瞬だけ呼吸を忘れた。
――無防備すぎる。
その感情が、驚きより先に胸を刺した。
ここは配給の場だ。役人もいる。視線はいくらでも集まる。
王太子が、そんな顔を晒していい場所じゃない。
何に腹が立っているのか、縫季自身が分からない。
分からないまま、苛立ちだけが熱を持つ。
あの笑みは、守るためのものなのに。守られる側みたいに、脆い。
「……あげるよ。お前が泣き止んだお祝いだ」
独楽を少年の小さな掌に乗せ、帝辛はその柔らかな髪を一度だけ撫でて立ち上がった。
少年は、今度は満面の笑みを浮かべて、母親の袖を引いた。
その光景を、縫季は息を呑んで見つめていた。
(ああ、この人は……本当に、民を愛してるんだな)
父から受け取った独楽を大切に持ち歩き、それを子供に分け与える。
単なる政治的な義務感ではない。
――と、そこへ。
「殿下ー!」
明るい声が響いた。
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