日直が変わり、今日は隣の席の石山君が担当をすることになった。
昨日の自分みたいに遅くまで校内に取り残されるのは流石に可哀想だと思ったので、今日の休み時間から2つに増えていた段ボールを片方持ってやる。
白い廊下を染める夕暮れのオレンジ、上履きの床に擦れる音が鳴り響く。
「なぁ青井」
石山君が段ボールを持ったまま視線も向けず、歩きながら話しかける。
「なぁに?石山君」
段ボールの中身が歩く度に大きく揺れる様を見ながら進んでいたから、視線なんて分からなかったけど。
「…俺等、今二人だよな?」
いつの間にか多重に鳴る足音に、どうやら彼も気がついていたようだ。
昨日の情景を思い出す。
「そうだね。二人きりだね」
「それにしては足音多くないか…?」
予想していた通りの質問が耳に飛び込んできた瞬間、後ろで布の擦れる音がしたので、持っていた段ボールをその場に置き後ろに猛ダッシュする。
人間は驚いた時に取る行動には、いくつかのパターンが存在する。
蹴る、殴る、それらは皆反射の類。これらの他には固まる、腰を抜かすなど、動けなくなるような動作類だ。
そして、物陰に隠れ、僕らの後をつけて来ていた犯人は
「あ…」
後者だった。
その場にペタンと座り込む彼は、珍しい髪色をしていた。
…夕焼け色
後ろから走って来た石山君に嘘の事情を説明し、荷物を無事運び終えた後、犯人である夕焼け君とは旧校舎の一室を借りて話をすることになった。
「…どうして後をつけて来たの?」
一年生、まあ新入生ともなれば話は別だが、生憎と、彼の胸には鈍く光る三年生のバッジが付いている。
使い古した形跡の残る胸元のバッジ。鈍く光るそれは、確実に彼自身が3年間使い込んできたものだろう。
偽ったものではないことが、彼の動揺で揺れ動いた綺麗なオレンジ色が光ったことで証明してくれる。
「すいませ、ん」
「別に謝って欲しいわけじゃないんだけど…」
夕暮れの差す教室内。
淡く、霧がかかったような差し込む光に、彼は光と同じ色の瞳を向ける。その瞬間、元々夕暮れ色に染まっていた大きく少しツリ目な瞳を豪快に開ける彼。
「、また明日、ここで話せませんか」
横にかけてあったカバンを手に取ると、僕の返事を律儀に待つ彼。急いで、急いでと足が早急に帰りたいのを我慢している様子で、その姿を見ているのは正直悪い気もしなかった。
しかし、意地悪をしすぎるのが僕の悪い癖だ。
「いいよ。気をつけてね」
返事を聞いた彼は、一目散に教室から姿を消した。
向かい合わせにしていた木造の机をもとに戻し、横に掛かっていたカバンを持つ。
「さて、と…」
俺も帰りますか。
コメント
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レウさんかなぁ......