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それから一年の月日が過ぎた。

この日は雪子のカフェの1周年記念のパーティーだった。


小さな店には沢山の人が集まっていた。

優子夫妻、自由ヶ丘のカフェの真田夫妻、俊の仕事仲間の加藤夫妻、そして店のケーキお願いしている美智子、コーヒースクールの滝田と萌香、そして隣人の飯村夫人に大工の良、和真と和真の恋人の菜々、そしてなぜかデパートの板倉まで来ていた。

なぜ板倉がいるかというと店のオープン時に遊びに来てくれた板倉がケーキを届けに来た美智子に一目惚れをしたからだ。

だから雪子は板倉も招待した。

板倉はその熱い思いをまだ美智子には伝えてはいない。だから今後の進展が楽しみだ。


そこで俊が声を張り上げた。


「では、『cafeかぼちゃの馬車』の1周年を記念して、カンパーイ!」

「「「かんぱーい! おめでとーう!」」」


パチパチパチパチ………..


皆はワインやビールで乾杯してから拍手をした。


「では店長の雪子からご挨拶があります」


皆の前に立った雪子は挨拶を始めた。


「えー店づくりの段階からお手伝いをしてくれた皆様、そして店をオープンしてから足繁く通って下さる皆様には心から感謝をしております。いつも本当にありがとうございます。無事に1周年を迎えられたのも皆様のお支えがあったからこそ。感謝してもしきれません。本当にありがとうございました」


「いよっ! 女店長!」

「雪子頑張ったねー!」


そこで掛け声が響く。


「これからは更に居心地の良いカフェになるように努力していきたいと思っています。まだまだ至らない点が多々ありますが今後ともこの『cafeかぼちゃの馬車』をどうぞよろしくお願いいたしまーす」


「雪子ファイト!」

「雪子ちゃん期待してるよー!」

「俺達のたまり場としてこれからもよろしくねー!」


皆からの励ましの言葉と共にしばらく盛大な拍手が鳴り響いた。


雪子が深々と頭を下げて一歩後ろへ下がると今度はまた俊が中央に出てきた。


「えー皆様にここでもう一つご報告があります。本日私と雪子は正式な夫婦になりましたのでご報告いたします。 今朝二人で役所へ行き婚姻届を提出しました。今後とも私達夫婦をどうかあたたかい目で見守っていただければと思います」


「キャーッ! おめでとーう!!!」

「俊、おめでとう!」

「これでお前もまた既婚者の仲間入りかー!」

「雪子ちゃん良かったねー!」


皆の声援に笑顔で応えながら雪子は頬を染めて俊と見つめ合う。二人の幸せそうな姿を見た友人達はいつまでも拍手を送り続けた。


漸く声援と拍手が収まると、いきなり滝田が勢いよく立ち上がった。そして萌香の方を向いて真面目な顔で話し始める。


「この場をお借りして言わせて下さい。皆様の前で誓います。僕は萌香を愛しています。僕もこれから残りの人生を萌香と共に歩んでいきたいと思っています。萌香、どうか僕と結婚して下さい」


滝田はそう言って跪くとポケットからリングケースを取り出して蓋を開けた。そこには見事なダイヤモンドの指輪が美しく光り輝いていた。

萌香は椅子に座ったまま両手を口にあててびっくりしている。


その場にいた全員が息を呑んで見守った。言葉を発する者は誰もいない。


すると萌香の瞳からはみるみる涙が溢れてくる。その表情は漸く手に入れた幸せを前にして感動のあまり打ち震えていた。


「萌香?」

「よろしくお願いします」


萌香はそう返事をするとペコリとお辞儀をしてから指輪を受け取った。その瞬間ピューピューという指笛や拍手が一斉に鳴り響く。

滝田はホッとすると萌香の手を取り自分と向かい合うように立たせる。そしてリングケースから指輪を取り出すと萌香の左手の薬指にはめた。その瞬間更に盛大な拍手が響き渡った。



二人の様子を見ていた雪子は感極まって泣いていた。それに気付いた俊が肩を抱き寄せる。


「良かったな。君があの二人の恋のキューピッドをしたんだよ」

「うん、凄く嬉しい。ここで、この店でこんな幸せな場面が見られるなんて幸せ過ぎてどうにかなりそう。これからもこの店で沢山の幸せが紡がれるといいな」


雪子は俊の顔を見上げてニッコリと微笑んだ。



翌朝、俊と雪子は浜辺を散歩していた。

二人は手を繋いでゆっくりと波打ち際を歩いている。


その時突然雪子が俊の手を離してしゃがんだ。雪子は海からの漂流物の中に何かを見つけたようだ。


「桜貝でも見つけた?」

「ううん違うの。コレ!」


雪子は手のひらに乗った物を俊へ見せる。

すると雪子の手のひらの上にはガラスで出来た小さな靴が乗っていた。

それはまるでおとぎ話に出て来るような透明の透き通ったガラスの靴だった。


「シンデレラか」


俊が呟くと雪子は満面の笑みでうんと頷いた。

雪子はその愛らしいガラスの靴を店に持って帰る事にした。


二人は歩きながらこのガラスの靴を店のどこへ飾ろうかと話し始める。

時に楽し気な笑い声をあげながら二人は手を繋いでゆっくりと波打ち際を歩いて行った。


__________________


「ねぇおばあちゃん、シンデレラはそれからずっと幸せに暮らしたの?」

「ええそうよ、それからずっとずっと幸せに暮らしたの」

「じゃあ雪子もシンデレラみたいに幸せになれるかなぁ?」

「なれるわ。いつかきっと素敵な王子様が迎えに来てくれるから…」


__________________

<了>

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