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元貴side
部屋に入ると、思っていたより静かだった。
「ここ座っていいよ」
涼ちゃんに言われて、
ベッドの端に腰を下ろす。
視線を落とした先、
棚の上に小さな写真立てがあった。
何気なく手に取る。
家族写真だった。
少し昔のものらしくて、
全員が今より若い。
「……これ、涼ちゃん?」
写真の中の真ん中にいる子を指さす。
「そう」
短く、そう答える。
「お父さんとお母さん?」
「うん」
一拍置いて、
涼ちゃんは続けた。
「お母さんは、今は長野にいるけど」
「へえ……」
それだけでも少し驚いたが、
次の言葉で、元貴の動きが止まった。
「お父さんは……今どこにいるか、分かんない」
「え?」
思わず声が出る。
(分かんない、ってどういうことだ……?)
家出?
単身赴任?
それとも――
一瞬でいろんな可能性が頭をよぎる。
元貴は、
これ以上踏み込んでいいのか分からず、
言葉を探した。
「……連絡、とかは?」
涼ちゃんは、
写真から目を逸らしたまま首を横に振る。
「もう、だいぶ前から」
それ以上は、言わない。
元貴は、
写真立てをそっと元の場所に戻した。
(軽く聞くつもりだったのに)
空気が、少しだけ重くなる。
でも、
涼ちゃんの表情はどこか慣れていて、
「触れられないこと」に慣れすぎている顔だった。
「……」
元貴は、
無理に明るくしようとするのをやめた。
ただ、
横に座ったまま、
涼ちゃんの方を見る。
「教えてくれて、ありがと」
それだけ言うと、
涼ちゃんは小さく頷いた