-scene5- Ren Meguro
翔太くんの復帰初日の仕事は、昔からお世話になっている冠番組に決まった。
件の番組も最近は通常回も減り、特番で長尺になるのが常だったが、翔太くんの負担を考えて、企画が変更され、ロケのVTRをみんなで見る回になった。
収録時間も延びないし、そこまで喋らなくてもいいから確かに負担は少ないと言えた。
「休憩入ります」
ADが声を掛け、スタッフやメンバーが休憩に入る。
予め編集されたVTRの半分の公開とリアクション撮りが終わり、その内容も康二と阿部ちゃんが中学校に行って、『未成年の主張』を撮りに行ったもので面白かった。
見ている翔太くんもほんの少しだけど笑顔があって、それも綺麗に抜かれていて俺は嬉しくなった。
カメラマンが復帰早々の翔太くんに焦点をあてて撮影しているのがよくわかったシーンが多かった。
🖤「疲れてない?」
💙「大丈夫だよ。あんま心配すんな」
🖤「久しぶりだし、一度楽屋に行って休もう」
💙「そうだな」
二人で楽屋に戻る。
しかし、少し歩くうちに、俺は翔太くんの額に汗がたくさん浮いているのに気づいた。
🖤「そんなに汗っかきだったっけ?」
💙「スタジオ、暑いからさ」
そう言って答えた直後に、翔太くんはふらついて、壁にもたれた。
🖤「どうしたの!?翔太くん!翔太くん!」
💙「騒ぐな……目眩がしただけだから……」
俺の声に驚いたメンバーが助けてくれて、一緒に翔太くんを医務室へと運んだ。
「心因性のものでしょう」
ちょうど詰めていた医師が、翔太くんの様子を見てそう言った。
翔太くんのニュースは連日流れまくっていたから、原因がストレスであることは誰もが予想していた。誰もが恐れていたことが、わかっていたことが起きてしまった。
💙「目黒。支えてくれ、戻る」
🖤「何言ってんの、そんな青い顔して」
💙「死んでも戻る。手を貸さないなら自力で行く」
翔太くんは上体をなんとか起こすと、ベッドの縁や壁をつたいながら本当に一人で歩き出そうとした。
医師が止めても聞かない。
なんだか、残り少ない命を燃やしているような、そんなふうにも俺には見えて、俺は思わず肩を貸した。
🖤「俺に捕まって」
💙「…ありがとう。もうほとんど、目眩はしないから」
ふらつく足元がそれを嘘だと言っていた。
それでも俺は翔太くんを抱えて、スタジオに戻った。
カメラの前の翔太くんのものすごい集中力と限界を超えた頑張りで、どうにか収録を終えることができた。
メンバーは、俺と翔太くんを残して帰った。
いつもなら俺のそばを離れないラウールも、今日だけは気を遣って、先に帰った。
💙「今日は暇なのか」
🖤「んー。台本ちょっと覚える以外は、暇だね」
嘘だった。
今まで経験したことのない長い台詞と重要な場面の撮影が明日にはある。
翔太くんのことさえなければ、早く家に帰って一刻も早く練習したかった。
💙「…そうか」
翔太くんの目を見て、俺の嘘が簡単にバレているのがわかった。また俺はこうしてこの人を傷つけてしまっている。
🖤「俺には仕事より、翔太くんが大事なんだ」
💙「めめ」
🖤「ん?」
💙「俺はもうだめかもしれない」
久しぶりにめめ、と呼ばれ反応が少し遅れた。
しかし、翔太くんが珍しく後ろ向きな言葉を口にした。俺はそれを信じたくはなかった。
💙「だから、めめは、ちゃんと仕事に打ち込んで欲しい。ここに来れたのは偶然でも運でもない。お前自身の努力なんだから」
🖤「それは、翔太くんも一緒でしょ」
翔太くんは、泣いた。
啜り泣いて、拳を何度も自分の膝に打ちつけた。
見ていられなくなって、振り上げた手を強く掴んだ。
掴んだ手首が細くて、俺まで泣けて来た。
💙「いたっ……!!」
🖤「ごめん、でも自分を痛めつけるのはやめて。話なら聞くし、俺はずっとそばにいるから」
💙「めめっ」
翔太くんは俺を抱きしめた。
俺も翔太くんを抱きしめた。
そうして、二人でいつまでも泣いた。
コメント
6件
ポエムだポエム。 ポエムが書きたかったんだ、私🤔 一人言です。反応要らないです笑
めめ…しょっぴー…🥹🥹