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先に彼に座ってもらって、グルッと店内を見回してみたけれど、客はまばらで、どうやら存在を気づかれるようなことはなさそうだった。
店員が注文を取りに来て、「コーヒー2つ、ホットで」と頼んだ後で、
「…いいよね?」
と、確認をすると、
彼は、「ああ…」とだけ、短く答えた。
「……ごめんね、その、無理に付き合わせちゃって……」
やや申し訳なくも思いつつ、彼の顔を上目にうかがうと、心底機嫌が悪そうな顔つきで、
「迷惑なんだよ…本当に」
そうボソッと口に出した。
「うん…わかってる……。だけど…たまには、あなたとじっくり話がしてみたいなと思って……」
言葉を選んで言ったつもりだったのに、
「俺には、あんたと話すことなんて、何もない」
あまりにもストレートな否定のされように、心が折れそうにもなった。
「……そんなこと言わないで…。ホントちょっとでいいから、話してよ…ね?」
「……話したいことなんか、ないだろうが、俺に……」
テーブルに片手で頬づえをつき、面白くなさそうに言う彼に、
「ううん! あるある! あなたに話したいこととか、たくさんあるんだってば!!」
ここぞとばかりに力んで、拳を握りしめて話すと、
「ふっ…くく」
と、意外にもカイが笑みを見せた。
「あっ…笑った…」
不意の笑い顔に、あ然としていると、
「…なんだよ」
という呟きとともに、すぐに笑いは引っ込められて、再び眉間にしわを寄せた不機嫌なものへと戻ってしまった。