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海辺の近くの町だった。

車も滅多に通らないような、時代に取り残されたような町。すべてがセピア色に見える無人駅を降りて、俺は阿部先輩を探した。

待ち合わせは駅前のロータリー。

そこは、ロータリーというにはあまりにもこじんまりとした空間だった。タクシーも見たところ一台しか停まっていない。何よりうだるような暑さで、駅の前にもまったく人影がなかった。

周囲を見回していると、ちりんちりん、と自転車の音がした。

乗っていたのは、麦わら帽子を被った、スタイルのいい男性。


🤍「阿部せんぱーい!!!」


俺は大きく手を振った。


💚「村上、よく来たね」


片道5時間以上かけて、俺は阿部先輩の故郷へとやって来ていた。


久しぶりに見た阿部先輩は、少し日焼けをしていた。それでもTシャツやズボンの裾から出ている手足がひょろひょろなのは変わらなくて、デニムのオーバーオールが可愛く似合っていた。

俺は3週間ぶりに阿部先輩に会えたことが嬉しくて、ぎゅうっと音が出るほど抱きしめた。


🤍「会いたかったです!」

💚「苦しいって」

🤍「へへへ」


今日は眼鏡をかけてないんだ。

いつもは人と境界線を引いているそのアイテムがないだけで、なんだかすごく可愛らしく見える。それに。


🤍「何その前髪、可愛い」

💚「言うなよ。こっちの理髪店で切ってもらったら切りすぎた」


かなり短めの前髪を手で隠す仕草がとっても可愛らしかった。


💚「でもどうした?いきなり。急用?」

🤍「いいえ。阿部先輩にどうしても会いたくなっちゃって」


俺の言葉に阿部先輩は不思議そうにする。自転車を引き取り、海沿いの道を潮風を受けながら阿部先輩の実家を目指して一緒に歩いて行く。


🤍「すいません、泊めてもらうなんて」

💚「いいよ。俺も勉強に飽きてたところだし。うち、ばあちゃんしかいないしさ」


阿部先輩は、幼いころにご両親が離婚されて、おばあさんに預けられて育ったらしい。事情はよくわからないが、大学に入るまではこの漁師町で育ったと聞いたことがある。


💚「でも広くはないし、昔の家だよ」

🤍「全然。泊めてもらえるだけでありがたいです」

💚「店の方は平気?」

🤍「俺がいない方が、人件費も浮いていいんじゃないすか。開店休業みたいなもんですもん」


そう言うと、阿部先輩は笑った。きっと宮舘さんの呑気な顔でも思い出したんだろう。


🤍「それに、なんか宮舘さんの友だちみたいな人が入り浸ってて、手伝ってます」

💚「あ。それはね、友だちじゃなくて恋人だね。学校の教師やってる。渡辺さん」

🤍「あ、そうそう」

💚「長期の休みになると、よく手伝ってるんだよ。宮舘さん、その人の前じゃ頭上がらないでしょ」

🤍「そうです。どっちが店長なのかわからないくらい威張ってました」


不在の間の、店の話などをし。サークルの話をし。俺たちが世間話をしているうちに、海の真ん前に着いた。


💚「少し、海見ていく?」

🤍「はい!」



阿部先輩の育った漁師町は、いわゆる遊泳ができる観光用のビーチとは違っていた。

岩場が多くて、浜が狭い。

2人でコンクリートで固められた岬に向かった。テトラポットに打ちつける波が、飛沫を上げて、いかにも涼しげだった。太陽も大分西に傾いている。潮の香りを乗せた気持ちのいい風が吹いていた。


💚「そろそろ日が沈むね」

🤍「明日、釣りとかします?」

💚「ああ、俺、あんまりやったことないけど。村上がやりたいなら、道具借りて来るよ」

🤍「なんだ。俺も初心者だから無理そう」

💚「ここにいた時はとにかく勉強ばかりしてたからね」

🤍「今と変わらないじゃないですか」

💚「かもね」


遠くを見つめる阿部先輩の横顔が美しくて見惚れる。


……なんだかやっぱり少し痩せた気がする。普段からあまり食べる人じゃないから心配に思った。


そして、俺は宮舘さんに聞いた話を思い出していた。それこそが俺がここに来た理由だ。


🤍「阿部先輩」

💚「ん?」

🤍「俺と付き合ってくれませんか」

【企画】あなたを幸せにする【パラレル】

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コメント

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わーーーーーー!!!!!先輩の生まれ育った海で告白ーーーー🥺🥺🥺

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