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🫧第12話「泡の図書室、ふたりで読む午後」
放課後、図書室は静かだった。
校舎の一番奥。本の重みで空気がゆっくり沈むような場所。
聖名(みな)は泡日記を抱えて、律の隣の机に座った。
ふたりは図書室に来たけれど、
声を出すかわりにページをめくる音だけで会話していた。
ページの隅に、小さなメモが挟まれている。
律がこっそり書いてくれたらしい。
「泡って、読まれることで名前になるんだね。
君の言葉が泡じゃなくて紙になる瞬間、少しだけ息が止まった。」
聖名(みな)は指先でページを撫でながら、静かに考えた。
わたしは“あなた”って呼ぶことで夢の中の律に触れたけど、
今の律にはもう、“あなた”って呼ばなくても届く気がする。
彼女はペンを取って、日記の新しいページに書き始めた。
📓泡日記:図書室編(聖名→律)
_律へ
静かな場所では、泡の音も呼吸になる。
わたしが名前で呼ぶ前に、
君はずっと気配でそばにいてくれてた。
図書室っていいね。
背中も、言葉も、本の間に漂ってて、
ちゃんと読まれるまで静かに待ってくれる。_
律はその日記を読んで、小さく笑った。
指先で泡の粒を描くように、本の端に音の線を書き加える。
ふたりの関係は、ページと泡の間で、
名前を越えて少しずつ進んでいった。