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第2話:初めての血
焼ける陽炎の中、遠藤 蓮は喉の渇きに耐えながら仲間を集めていた。
茶色のショートボブの相原 凛は、砂に膝をつきながらも必死に傷口を押さえ、介抱に徹している。
筋肉質で日焼けした高城 翔は、Tシャツの袖をまくり、鋭い目つきで周囲を警戒していた。
丸眼鏡の真田 玲央はパーカーの裾を掴み、頭の中で情報を組み立てている。
そして、ショートカットに黒のスポーツウェアをまとった森下 瑠衣は汗をぬぐい、砂漠での身のこなしを確かめるように軽く跳んでいた。
「協力しよう。このままじゃ全員バラバラに殺される」
蓮の言葉に、数人が頷く。だが恐怖はすでに広がっていた。
遠くで怒声が響く。
堂島 龍一――金髪リーゼントの巨体が、革ジャンの背をひるがえしながら暴れている。
その目は血走り、唇から唾を飛ばし、狂犬のような息遣いを放つ。
標的にされたのは、痩せた青年・杉浦 光。縁眼鏡の下、汗に濡れており、顔色も悪かった。
「やめろっ、俺は……ただのエンジニアだ!」
堂島の拳が振り下ろされる。乾いた音が砂漠に響いた。
鼻骨が砕け、血が飛沫のように舞い、砂に斑点を描く。杉浦は呻き声を上げ、仰向けに倒れる。
高城 翔が走り出す。
「この野郎!」
筋肉の張った腕が唸りを上げ、堂島の顎に直撃する。
砂埃が舞い、二人はもつれるように転がった。
至近距離の肉弾戦。拳が頬骨にめり込み、肘が脇腹を抉る。
汗と血と砂が混じり合い、骨がきしむ鈍音が続く。
「翔ッ、下がって!」
凛の叫びに振り返った一瞬、堂島の膝蹴りが翔の腹を抉った。肺から空気が吐き出され、翔は砂に膝をつく。
玲央が必死に分析する声を張り上げる。
「堂島は真正面からの打撃には強い! 背後を取るんだ!」
森下 瑠衣が身体を低くして走り込む。砂を蹴る音が鋭く響き、背後に回った瞬間、堂島の後頭部に渾身の蹴りを叩き込んだ。
巨体がよろめき、砂煙を上げて倒れる。
だが――堂島は笑っていた。
血に濡れた歯をむき出し、低く嗤う。
「ははっ……いいな。まだまだ殺れる」
その異常さに、砂漠全体が凍りついた。
初めての血は止まらない。次は誰が標的になるのか――誰もが震えながら、堂島の影を見ていた。