テラーノベル
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深夜0時。街の南門前は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
漆黒の月光が不吉に照らす石畳の上を、腐敗臭を放つ百体を超えるゾンビが波のように押し寄せる。彼らの濁った眼球は、唯一残った獲物、ユージンに向けられていた。ピーターがいないので、門が閉まらないのだ。
「俺がピーターを川に落としたせいで」
自分の行いに自嘲しながらも、右手を高く掲げた。
「闇よ、我が声に応えよ!」
彼の掌を中心に青紫色の魔法陣が浮かび上がる。その周囲を渦巻く黒い霧の中から無数の影が現れた。それは闇の触手、邪悪な力を凝縮した呪縛の糸だ。
「捕われし者どもよ、冥府へ還れ!」
ユージンの叫びとともに、十本以上の触手が蛇のようにゾンビ群に襲いかかる。腐敗した肉を貫き、骨を砕き、粘土細工のように捻じ曲げていく。しかし数が多すぎた。次々と後ろから湧き出る新たな死体が、仲間の残骸を踏み越えてくる。
「クソッ、これじゃキリがない!」
ユージンは素早く身を翻す。足元の石畳を踏み鳴らしながら背後に二つの魔法陣を展開させた。
「爆ぜよ炎の息吹!」
紅蓮の業火が双璧となって立ち上がる。前方のゾンビ群を飲み込む灼熱の壁だ。皮膚が溶け、筋肉が焼け、悲鳴も上げられない死者たちが炭となる。だが同時に煙が視界を奪った。
「見えねえ……!」
咳き込みながら左腕を構えた瞬間、耳元を冷たい風が掠める。
鋭い矢音とともに、ゾンビの額に三本の矢が突き刺さった。さらに二体、三体と正確な射撃が続く。
「ユージンさん、こっちよ!」
振り向くと、橋の上に立つのは弓を構えたリリアンだった。その後ろには鍬や槍を持った村人達が控えている。二十人ほどの老若男女が武器を握りしめ、震えながらも勇敢に橋を渡って前に進んできたのだ。
「遅かったじゃないか、リリー」
ユージンは口元を歪めて笑う。
「馬鹿言うんじゃないわよ、アンタ一人じゃ危険だって私のおじさんが」
リリアンの言葉半ばで、右側から新手のゾンビ十五体が飛び出してきた。ユージンは即座に左掌を広げ、緑色の光球を発生させる。
「眠れ、死に至る安らぎを!」
球が破裂すると、翡翠色の粉塵が広がる。触れただけでゾンビの動きが鈍くなり、数秒後には完全に硬直した。ただし効果は短時間、三十秒程度しか持続しない。
「今だ、皆行くぞ!」
壮年の男・ダニエルが先頭に立って叫ぶ。村人たちが一斉に石橋を渡り始めた。
「全員下を見ろ! 階段まで走れ!」
ユージンは指示を出しつつ、後方の敵を牽制するため、空中に十二個もの小さな火球を浮かべる。それは導火線を引いた花火玉のように、順番に地面に落下し、着弾のたびに衝撃波を生み出した。倒れたゾンビが障害物となり、後続の進行を妨げる。
リリアンは弓を肩に担ぎ、人々を守るように横列を組む。老婆マーサを若いロブが支え、泣き出す子供に母ヨハンナが優しく話しかけていた。
「急げ、奴らもうすぐ動けるようになる!」
ユージンが叫ぶ。
まさにその時、硬直していたゾンビの一体がカクンと首を振り、再起動するように腕を上げ始めた。ユージンは左手を高く掲げる。
「闇よ、滅せよ!」
黒い稲妻のような閃光が走り、甦ろうとするゾンビを粉微塵に打ち砕いた。だがそれが始まりだ。他でも同様に動きを取り戻し始める者が出始める。
「このままじゃ食われるぞ!」
ユージンは右手を前方に突き出し、赤い円環を描く。三重の炎のサークルだ。そこを通る者に自動的に炎の矢が降り注ぐ仕掛けである。
「地下に逃げるぞ! 階段まであと五十歩だ!」
リリアンが矢筒を背負い直し、「あなたなら大丈夫ね」と微笑んだ。その信頼が何よりも心強く感じられる。
村人達の最後尾にいる少年エドガーが転びそうになった時、ユージンは迷わず転移魔法を発動させる。一瞬にして二人は位置を入れ替わり、エドガーはリリアンの背中に収まった。
「お兄ちゃん凄い!」
「褒めてる場合じゃねぇ、二人とも走れ!」
少年を叱咤する声とは裏腹に、その目は優しい。しかし、少年の背後にゾンビが襲ってきそうになった。
そこへいなくなったはずのピーターがゾンビを倒す。ピーターは怪我をしている様子がなかった。どうやら川に流されて陸へ上がったらしい。やがて、ここまで帰ってきたようだ。
門の扉はすでに閉めており、これ以上ゾンビは入ってこない。ユージンは少しホッとしたら、背後の気配に気がつく。
「しまった!」
ユージンが振り返ると、すでに五体のゾンビが十メートル以内に接近していた。それぞれの顔からは酸性の体液が垂れている。接触すれば装備ごと肉体を溶かされるだろう。
「間に合わねぇ……!」
彼が覚悟を決めて防御姿勢に入る。ユージンが覚悟を決めてたくさんの人々を一斉に掴み、地下に続く階段の中へ投げ捨てた。自分自身は瞬間移動を使い、地下の空洞へ入る。
地下へ行くとユージンが物色したものが置いてあった。村人たちは穴を塞ぐために近くにあった岩を持ち上げ、入れて抑える。
「ここにあるものは誰のなんだ?」
穴を塞いでいない村人が聞いているようだ。彼は勇気を持って正直に話す。ゾンビ化してはたくさんのものを盗み、人の家からお金を奪っていたことを話す。すると皆は岩を塞ぎにいき、汚い言葉をユージンに浴びせた。
「反省してるから……」
そうポツリと呟いても誰も聞く耳を持たない。それなのにゾンビたちは迫りきており、岩だけでは限界のようだ。
近くに水出し場があり、それを知っている人々は蛇口をひねることにした。一人では全くびくともしないほど硬い。そこへたくさんの村人たちが上へ登り、栓を回す。だがゾンビたちが入ってきてしまう。
ユージンは残りの一つであるゾンビ化の薬を手にした。もう金のリンゴもないので、戻ることはできない。ゾンビになって誘き出せば、時間を稼げるかもしれない。そう考えたが、彼はゾンビ化できる薬を捨てて上へ登る。
そんなことをすれば、村人たちと話せなくなるしもうあの街に住むことができない。この街は快適で、優しい人たちばかりだから手放したくはない。
ゾンビに襲われそうになってしまい、登る前に水が排水口から出てきてしまう。そのまま川へ流されていく。息ができず溺れそうになるが、そのままゾンビと共に進んでいく。進むと先は滝になっていた。このままでは溺れてしまう。
危機一髪の中、滝へ向かうときに誰かの手が触れた。リリアンの手だ。彼らは掴んだことを確認すると、そのままユージンを回収。ゾンビたちは湖に沈んでいく。
「これで終わりじゃないぞ。ゾンビのボスを倒さないと」
ピーターがそう言うと、ユージンは頷き家の屋上にいる鎧を身に纏うゾンビと対峙する。もう少しで朝になりそうだが、この場で決着をつけることにした。村人たちを守るために。
ユージンは真っ赤な手を挙げて、爆発魔法を使いゾンビの軍勢を全部倒す。
「グハァッ!」
鎧を身にまとったゾンビの口から血が吹き出す。彼の胴体部分に穴があき、奥まで見透かせるくらい大きな穴が空いている。
「俺の勝利だ!!」
ユージンはそう言って、朝日が差し込んでいるのを確認。ゾンビたちは朝日の光を浴びて燃えていく。太陽が昇り始める頃、ゾンビたちは次々と灰になっていなくなっていく。これで平和な街が戻った。
ボディーガードたちも戦うのをやめていた。
ユージンは英雄的な扱いをされ、王様になることができた。もはや悪事を働かせることはせず、彼は村人たちのために復興し、そして国を豊かにするために色々な思考を巡らせては街づくりに励んだ。
コメント
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うわあ、第3話すごかった…! ゾンビの大群との戦闘シーンがめっちゃ迫力あって、ユージンの魔法描写が綺麗だった。特に炎の壁と闇の触手、映像で見たいレベル。リリアンや村人たちが助けに来たところはちょっと胸熱になったけど、後半でユージンの過去の悪事がバレて村人から責められるの、辛かったなあ…。しかも自分を犠牲にしようとしたのに伝わらなくて。最後は英雄になって王様になるけど、それまでの葛藤や孤独みたいなものをもう少し見たかった気もする。でも全体的にめっちゃ引き込まれた!次も読むね🖤